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逃げろ逃げろ

挿絵(By みてみん)

描いたのは作者

生徒ナンバー:9

所属:生徒会グループ

あだ名:委員長

概要:クラスのまとめやく。運動部から絶大な支持を受けている生徒会の一人。

ドラゴンが殺され、ぼっちグループの女子が消えたあと、半ば放心状態で歩いていると、スライムに出会った。さっきまでドラゴンを目の前で見てたから、無表情で笛を刺して倒していく。


ある程度狩り、目標をクリアしてから、集合場所の宿屋に戻った。


全員疲労困憊していたので、明日王様に会うことになった。



∇▲∇▲∇



「まずは、誰が王様に向かうか決めましょう」


委員長が木製の長机に両手を乗せながら言った。


「やっぱり全員がいいんじゃないかな?」


すかさず、俺と昔に出会ったという奇跡を教えてくれた彼女が意見をだす。


「それはだめ。もしものことを考えて王様に謁見する人と、ここで待機する人数を半分にしとくべきだと私は思う」


やはり冷静で知的な委員長だ。誰も反対はしない。というか、最初からこうすると決めていたのだろう。


「決まりね。それでは昨日分けた二人ずつのグループから一人選出して。目標達成の確認を兵士に見せるから」


その言葉で、ふと一緒に行動した彼女と視線が合う。


「どうしよっか?」

「えーと……」

「なんなら、私がいくよ?」

「あ、はい」

「ズム君と私のチームからは、私が選抜されました」


可愛らしく敬礼をしながら委員長に言うと、「ふむ」と満足そうな声を出した。


本日の会話しゅうりょーう!もうちょっと会話したいよ!まぁ、会話のキャッチボールはできないけどな……。


それから各々話し合いで、謁見組は委員長、パズ、あの彼女になった。……いまだ彼女の名前を知らない…………。まぁ、俺を助けてくれた『女神』にしとくか。


んで、待機組が俺とジュウとこれまでの見た感じだと、委員長と一緒に行動したおっとりマイペースな女子だ。


謁見組は素早く身支度を始めるが、パズは手元が震えて用意が遅くなっている。委員長に指摘されると、涙眼になった。


しばらくして謁見組は王様のもとへと向かった。


「あのさ、ズムくん。僕は少し戦いに慣れときたいから出掛けてくるね。それにここの宿泊料も高めだったし」


謁見組と共に装備を整えていたジュウはそそくさと、宿屋から出ていった。


つまり、この部屋にいるのは俺と女子の二人。そしてジュウは逃げやがったのだと、俺は結論に至った。


「自分の部屋にもどひゅ」


噛んだ。しかしここで見も知らぬ女子に、大きな恥をかくよりはましだ。もともと宿屋は男と女の部屋の二つを借りている。


「ずっと見てた……」


確かにその子はそう言った。


「どうすればいいですかね……?」


主語が分からない。


「実はわたし、好きなんです……。彼のことが」

「だれのこと……?」


社交辞令みたいな感じで一応聞き返してみる。


「ジュウ様のことが……」


確かにこの子は好きな異性の名前を言ったが、脳が確認するためにコンマ数秒を要した。


そして、理解した。ジュウをぶっ殺す。なにリア充してんじゃ、ボケ野郎が。


「様」については、聞かなかったことにしよう。


「あの……手伝ってくださいませんか?」

「い、いいけど……」


リア充を崩壊させるのを手伝ってやろう。


「……ありがとです!」


まるで花が咲いたようにパァと表情を明るくしながら、俺の手を掴んで、胸まで持ってくる。少し心がいたい。


「ほほ、かの二人はどうなの?」

「協力を頼みましたが、自分で頑張れとしか言われなかったのです」


委員長の性格からは分かるけど、女神がそう言うとはな……。まぁ女神の性格やらは遠目で見たものしか、判断材料がないから俺に分かるはずが無い。


「ええっと……おれからも……同じことしか言えないような」


恋の経験なんてゼロだ。本当になにもない。


「わたしとジュウ様が二人に、なるようにだけでいいんです!」

「……で、でも、前にジュウは女のことが嫌いって言ってた……」

「あぅ……そうですよね。前に無視されたときありましたから……」


さっきは協力するとか適当なことを言って笑顔にさせたのに、今は肩を落として下を向きながら今にも泣きそうだ。


眼を擦りながら鼻水を啜る音すら聞こえる。


ちょっと待て、こんなところで泣かせたら明らかに周りに誤解される。たしか隣に住んでいる人はものすごく怖い容姿だったと、宿屋の主から聞いた。そいつからも壁ドンを通り越して壁を壊して来るかもしれない。


「え、え、えっと……そうだ。『オープン』『勇気の行進』」


手元に笛を呼び出し、口に当てる。その瞬間、勇気の行進というタイトルが書かれた楽譜が前方に出現する。


楽譜に沿って吹いていく。長年吹いてるかのように指は自然に動き、綺麗な音色が笛から吹き出す。力強い音が印象に残る『勇気の行進』は、二十秒ほどで終わってしまう。


「……こ、これさ、せつめいでは、勇気が出るやつなんだよ……ま、まぁ、ただSTRが上がるだけで実際には勇気なんて出ないけど……」


後半は独り言のようにぶつぶつ小さな声で呟いていた。


「とても綺麗な音でした。なんか、勇気と元気が沸いてきました。ありがとです」


良かった、笑顔になってくれた。ここで泣かれて委員長やら女神に冷たい眼を向けられたら、後悔と恥ずかしさで死ぬかもしれないしな。


安堵の溜め息を漏らしたその時、扉が勢いよく開けられた。


「おい、ズム!逃げるぞ!」


汗が滝のように流れ、肩を上下に大きく動かして息をしてるパズが入ってきた。


「……なに言ってんの?」

「話はあとだ!早く!」


連れ去られるようにして俺は部屋をでていき、おっとり少女はついてきた。


外に出ると同じく汗だくの委員長と女神がいた。


「おい、ジュウはどこにいんだよ!」


パズが叫びながら、また宿屋に入ろうとしたので、すぐさまジュウのことについて話した。


「……わかった。ひとまず逃げるぞ!」


周りが走り出したので、思わず一緒に走り出す。


「なんで逃げてるのか説明してくれ!」


パズに向かって問いかけると、俺を睨んできた。


「お前のせいだよ!お前が最強種族のドラゴンを呼び出して、城に向かって攻めこんでくるっていう情報が流れてんだよ!」


なんだそれ。まったく身に覚えがない話だ。


「私はちゃんと話したけど、まったく相手にされなくって……」


うつむきながら女神が言った。


「さて、第二試験です」そんな声がどこからか聞こえたような気がした。

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