ドキドキ
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突然だが、俺はあるクエストを遂行している。そのクエストとは王様を信用させるためのものだ。
あの三人と一緒に行動するようになってから、会話もせずにただひたすらに王様の城へと向かった。ゲームなら王様から最終目標のクエストを受けるのが当然だからだ。
と思っていた時期もありました。実際のところ、門番兵に信用できるかどうかを判断するためのクエストを受けさせられた。え?それだけで判断しちゃうの?といった矛盾点や突っ込みはゲーム内のデフォだ。
それと緊急事態なんだが、今は俺とおにゃのこがいる。あ、心のなかでも噛んでしまった。いや、家だと画面に対してそういってるかもな。
クエストは三つなのだが、委員長が効率的に進めていくために全員の職業とスキルをチェックして一番良い組み合わせでそれぞれのクエストを受け持つ事になった。
委員長ともう一人の女子は森で薬草拾い、男供二人は東の荒野に住んでいるすこし手ごわいモンスター。そして俺は西の草原に住むスライムの集団の討伐。
「言われた生き物見つからないね」
「あ、そうだね」
急に話しかけないで欲しいな。寿命が一年ぐらい縮むから。
「どこにいるかとか分からない?」
「……分からない」
「そっか。それじゃあ手当たりしだいに探すしかないね」
「あ、うん」
「そういや、聞きそびれてたんだけどさ、なんでここのことしってたの?」
「たまたま、だよ」
「へーそうなんだ。ズムくんが前もここに来たときがあるって思ってたんだよねー、残念ハズレだったか」
「あ、うん」
イエスかノーとしか言ってないのによくそんなに話題を振ってこれるな。さてはお前人間ではないな。冗談は置いておこう。
「ズムくんとこうやって話すの久しぶりだからさー、趣味とか全然分からないんだよね。ごめんね」
「いや……大丈夫。え?」
「どうかしたの?」
「ま、前も話した?」
「まさか忘れてるとはね……。少し悲しいな」
「え、あ、いや」
「大丈夫。結構前だし、忘れてる方が当たり前の出会いだったしね」
「う、ごめん」
初耳。これはフラグがたてれるかもしれないぞ!前も出会った時があるけど、覚えてないって、よくあるシチュエーションだ。
「私もあのときの事は忘れたいんだけど」
あ、だめだこりゃ。現実のシリアスシーンなんて俺には踏み越えられねぇ。シリアスになんて突入したらすぐさま踵を返して、日常シーンにユーターンする。
「おやおや、初々しいですねお二人とも。少しばかり時間を割いて、わたしの話を聞いてくださいませんか」
突然表れたその男の声は奇妙で、寒気が走った。