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貸出の檻  作者: メタル
第一章 幸福と呼ぶべきもの
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第四節 返却ブース

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//  第四節 返却ブース

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今日のノルマはどうにか消化した。

社員カードをカードリーダーにタッチし、安堵の息を吐く。

──だが帰り道は必ず“返却ブース”の前を通らされる。


半透明の培養槽に、「返却待ちおばさん」たちがぷかぷかと浮かんでいる。

何度見ても、背筋が寒くなる光景だ。


中には、膨らんだ腹を抱えたままの者もいれば、酷使によって損傷し、修復待ちの者の姿も見えた。

人形に孕ませて満足する奴らの気が知れない。だが、こうして妊娠した状態で“返却”される光景は珍しくない。


身体に損傷があってもクローン技術で朝には新品。

内部の損傷も、修復プログラムが淡々と“正常値”へ戻す。


ある槽では、膨張した腹と腿を漂わせる「130%返却おばさん」が眠っていた。


レンタル中のドールは、普通に飯を食う。

中には、過食させて太らせるのを趣味にしている連中もいる。


返却時にクローン技術を応用して元の体型に戻すことも可能だが、その費用は高額だ。

だから、女が特約にサインしていれば──「そのまま」で返却。

迷惑料の名目で、お小遣いが増える仕組みだ。


「30パーセント超過、罰金加算」

無機質なモニターが冷たく告げる。


──脂肪が増えるほど、女の財布も膨れる。


俺は足を止めず、横目でその光景をなぞった。

“もとに戻す”とは、こういうことだ。


修復が終われば、欠損した臓器も、裂けた肉も、すべて新品にすり替えられる。

記憶は精密に「書き戻され」、彼女たちは何事もなかったかのように元の暮らしへ返される。


──だが、その帰還先は“幸福な家庭”なんかじゃない。

待っているのは、食うにも困る貧困生活と、疲れ果てた家族の視線だ。


嫁の身体を売って得た金で、しばしの満足を覚えていたあの家族のもとに。

再び戻されることが、果たして救いになるのか。


五年貸し出されていたおばさんは、実際に五年を失っている。

空白の年月を埋めることなど、誰にもできはしない。


中には、この“レンタル”を繰り返す女もいる。

五年を三度──計十五年をまるごと空白にすれば、その間の貧困と絶望は確かに避けられる。


十五年の苦しみを知らずに済むなら、それは幸福と呼べるのだろうか。

それとも、人生の大事な時間を“売り飛ばした”という絶望に他ならないのか。


──まぁ、俺には関係のない話だ。考えたくもない。


多少の遺伝子配列の違いと、そこから生まれる身体的特徴だけで暮らしが成り立つなら──

それはそれで、十分「……それを幸運と呼ぶべきなのだろう。」


そう呟き、返却ブースを後にした。


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