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貸出の檻  作者: メタル
第八章 ざわつきの前夜
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第三節 一日体験と”もう一人のミサキ”

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// 第三節 一日体験と”もう一人のミサキ”

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 俺は間違いなく誰よりも美咲を愛している。

けれど、どこか満たされないと感じることが無かったわけではない。

そんな時だった。


たまたま入ったパチンコ店で、俺は珍しく大当たりを引いた。


普段なら景品を現金にして酒でも買う。

だが今回は違った。

その日の景品棚の中に、気になるものを見つけてしまった。


フェミナ一日体験クーポン。


フェミナの利用費用は高価だ。

一日だけでも、自分の金で遊びたいとは思わない額だ。

だがタダなら――という軽い気持ちもあった。


美咲に後ろめたさを感じながら、どこかウキウキしてしまう自分がいた。


 その夜、俺は端末からフェミナのサイトに接続し女を物色する。

女の一覧には色々なスペックの女が並ぶが、クーポンで選べる女は多くはない。

基本的に金に困った女が利用する制度なので、長期貸出で儲けたい女が多いからだ。

このクーポンは1日利用なので選択肢は限られていたが。それなりに多様なジャンルは揃っている。

美咲を買ったあの店には美咲以外の選択肢が無かったし、一目惚れだったので他の選択肢を検討することはなかったが、今回はかなり迷った。

自由に女を選べるとなるとそれはそれで困るものなのだ。

男とは実にバカな生き物なのである。


結局、選択できる中では比較的若く、俺好みの女を注文した。

たまのお遊びくらいは――美咲も許してくれるだろう。


そして注文当日。


 女は時間通りにやってきた。注文通りの女だ。

美咲はある意味本当の人形なのでデカい箱に入ってやってきたが、フェミナの女は自分で歩いてやってくる。

記憶を書き換えられた人形ではあるのだが、専用のキャラクタとして選んだ性格が反映された状態である。

中々初めての男の家に上がり込むのは敷居が高そうに感じるが、書き込まれた記憶の効果かなのか躊躇なくドアを開けて入ってくる。


 女は大袈裟に女ぶった挨拶のあと平然と部屋へ入ってきたのだが、床に座らせていた美咲を見てギョッとしたようだ。

六畳一間の安アパートに成人女性がいれば誰だって気づくだろう。

最初は美咲を収納に隠すことも考えたが、後ろめたさからどうしてもそれは出来なかった。

色々言われるのが嫌で部屋の点検などで他人が訪れる際は隠すこともあったが女を呼ぶために隠すというのは何故か罪悪感が優ってしまった。

それに、フェミナは秘密厳守なので顧客の内情を詳細に誰かに話すということはないので、まぁいいだろうと思いそのまま部屋に座らせていた。


「ねぇ、あんた。部屋に女いるのに私を呼んだわけ?」

これからすることを考えると部屋に別の女がいる状態というは異常だろう。

疑問に思うのは当然だ。

 

「ああ、それは人形だ。気にするな。」

気にするなと行っても気になるものは気になるだろう。我ながら間抜けなことを言っているのは承知だが仕方がない。

まぁ美咲にしてみれば腹立たしいだろうが、今日は我慢してもらう。

 

俺は咄嗟にそう返したが、女は妙なことを口にした。


「あなた、大人のお人形遊びが好きなのね…… でやっぱり本物も欲しくなったって口ね。」

「ねぇ、このオバサンの人形って流行ってんの?この前行ったオジの家にも同じのがいたよ。

あっちは喋ってたけどね。片言で気持ち悪かったけど。」


(……同じモデル?)


「名前なんて言ったかな……あ、そうそう、ミサキ。

人形に名前つけて、“俺の嫁” とか言ってたからオジのオリジナルかと思ってたけど、量産クローン人形だったんだw」


別の美咲が存在する?俺はこの後ずっとこの話題が頭から離れなかった。


美咲はクローンではない。本物の女性の身体だ。

万が一にも同一モデルなんて物は存在しないだろう。


売り切り契約で身体を交換した金持ちの残渣。

若返りや美容のために高額で契約するんだ。同じ年齢、顔で乗り換えるなんてありえない。

まして“量産”される理由もない。

向こうの美咲が喋っていたということは本人の可能性がなくは無いが、片言で不自然というのも変な話だ。


一番不可解なのは――


その“同一モデル”の名前が 美咲ミサキ だったこと。


俺が美咲にミサキと名付けたのは、ただの思いつきだ。

有名人でも知人の名前でもない。

偶然にしては、出来すぎている。


フェミナの守秘義務上、詳細を聞き出すことはできない。

(そもそもそういう情報を話せないよう、徹底されている。)


だが、フェミナは基本近隣エリアで回す。

遠方の支部へ派遣されることは稀だ。


つまり――


俺のすぐ近くに、“もう一人のミサキ”がいる。

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