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貸出の檻  作者: メタル
第八章 ざわつきの前夜
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第ニ節 ドールと別れるということ

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// 第ニ節 ドールと別れるということ

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 フェミナ人形はそもそもやめたくなっても簡単に処分は出来ない。

この人形は手間をかけ続けるしかないのだ。

それはもう宿命とか呪いの類とそう変わらない物なのだ。

物理的に手軽に廃棄できる小型の人形とは違い、等身大ドールのオーナは昔から苦労をしている。

戦前のシリコンドールであれば山中に不法投棄しても、死体騒ぎぐらいでなんとかなるが、フェミナ品は冗談抜きで死体遺棄になってしまう。

正規品のAIクローン人形なら管理タグが埋め込まれていて、生産情報などが管理されているが、こいつはある意味横流しされた生きた死体なので不法投棄などをしたら非常に面倒な事になる。

 

 実はこのような等身大ドールオーナに向けて葬儀という名目で回収廃棄を代行している業者がある。

有名な業者は戦前から続く本物の葬儀社で、元々は一般の寺で受け付けてもらえない等身大の人形の供養をしていたようだが、最近ではクローンの供養と廃棄(火葬し証明書が発行される)まで請け負っている。

たかが人形を捨てるだけなのに大袈裟といわれるが、古来から人形には魂が宿ると言われるし、長年連れ添った女(人形)との別れは辛いと感じるオーナは少なくない。

悪質な回収業者は処分費用を取りながら、中古品として横流しをする事も多い。

だからこそ信頼できる葬儀社の需要は高い。


 そもそも金持ちの道楽で所有しているパターンは別として、純粋なドールオーナがドールを手放すのにはそれなりの理由がある事が多い。

人間のパートナーが出来たり、仕事の都合で泣く泣く手放す......といった具合だ。

そして意外と多い理由が引退である。

高価な趣味であるためオーナーの年齢層は高く、日々の世話に体力的な限界を感じて引退する。

また病気による体力の低下なども引退の原因となる人も少なくない。

そんなオーナは時に自分の元を離れても元気にしていて欲しいと考え、別のオーナに思いを託すことがある。

移籍といわれるオーナ間での譲渡で、信頼する仲間に女を託すのだ。

ドールが高価であるのに複数のドールを所有する事が若いオーナーがいるのはそのためである。


 そしてあまり考えたくはないがオーナーが死んだ後にドールをどうするかを考えておかないといけない。

アンドロイドであれば家族が廃棄処分すれば済むことだがフェミナ品は処分に困ることになるだろう。まだフェミナ品が出回り始めてから日が浅いのでオーナが引退するまでには時間があるが確実にその時は来る。

そもそも年齢が固定されているアンドロイドや遺伝子操作であまり歳をとらないクローンとは違い、美咲は普通の人間と同じように歳をとる。

俺と美咲は大体同じぐらいの年齢なので、俺がジジイになった時には美咲もババァになっているわけだ。

若い女の人形なら貰い手もあるだろうが……

後期高齢者人形を欲しがる奴なんかいないだろう。

それに俺もその年まで美咲の面倒を見ることは体力的に不可能だろう。

ドールの介護事業者なんていうのも登場するかもしれない。

 

 そうやってオーナーに愛されるドール、どんなオーナーも自分好みのドールに夢中になる。


だが、一定期間が過ぎると――

普通の夫婦と同じように倦怠期が来るのだ。

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