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貸出の檻  作者: メタル
第六章 もうひとりの美咲
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第一節 返却ブースの異常

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// 第一節 返却ブースの異常

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再配置カプセルの赤ランプが、無機質に点滅を繰り返していた。

耳を劈くアラーム音が室内を震わせ、返却ブースにいた係員たちが一斉に端末へ駆け寄る。


「……脳書き込み用のプローブが、過電流サージでオーバーロードしました!」

係員の声が震える。次の瞬間、別の端末から更なる報告が飛ぶ。


「フィードバックパルスが中間バッファに逆流――焼損! 冷却ラインも反応せず……完全に復旧不能です!」


モニタには赤い警告が雪崩のように流れ続ける。

意識データのストリームは途切れ、無数の断片が警告音と共に消えていく。


「人格領域に広範囲な破損を確認。……意識の連続性が、完全に崩壊しました」


報告の言葉は、処刑宣告のように重く響いた。


報告の声は次第に悲鳴へと変わり、場の空気は一瞬で凍りついた。

その緊迫を裂くように、統括オペレーターが叫ぶ。


「バックアップに切り替えろ! 早く!」


しかし返ってきたのは、さらに冷酷な現実だった。


「……バックアップサーバ、現在メンテナンス中で稼働停止です」


誰もが息を呑んだ。

コンソールに映し出された赤いエラーコードの羅列が、まるで無数の裂け目のようにモニタを覆う。

静まり返った空間で、統括の拳が机を叩きつけられる。


「馬鹿な……!、まるごと失ったというのか……!?」


返却カプセルの覗き窓の向こうで、美咲の体は微動だにしない。

ただ首筋のあたりに、淡い焼き焦げの痕が浮かび上がっていた。

それは、記憶領域への書き込みに失敗したことを雄弁に物語っていた。


赤いランプの点滅だけが、誰も答えられない現実を無情に照らし続けていた――。


係員たちは次々と端末に向かい、震える指でログを追いかけた。

アラーム音の合間に、断片的な報告が飛び交う。


「書き込みプローブ三番、完全にショート。熱暴走で焼け落ちています!」

「データストリームの断片、ほとんどが破損。回収できたのは……一パーセント未満」

「残存領域は断片化が酷すぎます。連続性は――維持不可能です」


モニタには、人格データを示す青いラインが途切れ途切れに表示され、やがて完全なフラットラインへと変わる。


「つまり……人格の核を喪失した。もう“彼女”を戻すことは……」

誰かの声が、そこで途切れた。


別の係員が恐る恐る付け加える。

「……身体自体は生存状態を維持しています。心拍、血流、筋反応も正常。

ただ――空っぽです。肉体の器だけが残されている状態です。」

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