第四節 リセット音と番号
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// 第四節 リセット音と番号
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結局一時間楽しんだ私は服を着て部屋を出ると、なぜか真紀は何も身に着けないまま、ついてきた。
廊下に出た瞬間、係員の端末から無機質な声が流れる。
「345876番、これより洗浄とリセットに入ります」
リセット。
その言葉の冷たさに背筋がぞくりとした。
振り返った真紀が、私に抱きついてくる。
濡れた肌が私の服をすり抜けるようにまとわりつき、息が詰まる。
何度も軽く触れるだけのキス。
抵抗する間もなく、ただその熱に押し流される。
「またね」
彼女は笑ってそう言うと、係員に導かれて奥へ消えていった。
呆然と立ち尽くす私に、肩越しから柔らかな声がかかる。
「良かったでしょう? 皆さんそうおっしゃいます。
あなたもすぐ、その素晴らしい商品になれるんですよ」
カウンセラーの指先が私の手首に触れると、端末が短く電子音を立てた。
その軽い音が、私の中でなぜか取り返しのつかない響きに聞こえた。
ああ、私はすでに商品だったんだ。
その事実に気づいた瞬間、全身が薄いガラスに覆われたように冷えた。
係員の端末に映る私の名前ではない番号が、静かに点滅していた。




