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貸出の檻  作者: メタル
第二章 座布団一枚
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第三節 女の正体

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// 第三節 女の正体

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──女を抱いたのは、いつ以来だろう。

最後に肌の感触を覚えたのは、人間じゃない。


あれは、街の呼び込みに騙されて入った安っぽい店だった。

「良い女がいる」と耳打ちされ、期待して扉を開けた。


だが出てきたのは、家事用の女性型アンドロイドに、クローン工場から流れた廃棄品の人体パーツを張り付けただけの──

女もどきの玩具だった。


抱きしめても鼓動はなく、返ってくるのはぎこちないプログラムの声。

メカと人体の接合部は雑で、肌には段差が残り、関節はぎこちなかった。


最初は呼び込みの男に怒りが込み上げた。

だが財布を思えば、それも妥当だと分かる。

結果的に、“本当に良い女がいる店”よりは安いのだから。


結局そこは、まともな娼館ではなく──

人形と遊ぶのを売りにした、奇妙な店だったのだ。


それでも、冷たい人工皮膚を腕に感じた瞬間、

ひと晩だけでも人肌の幻を取り戻せた気がした。

不完全で歪な女もどきが、かえって孤独を突きつけてきたのだ。


思い返せば、返却されたおばさんの中には不思議なケースもある。

普通なら疲れ切った顔で、使い潰された身体と共に戻されるはずだ。

だが、時折“整えられて”返ってくる女がいるのだ。


爪は美しく磨かれ、艶やかに色がのせられている。

髪も梳かれ、わざわざ香油まで使った痕跡がある。

まるで、誰かに愛されていた証のように。


契約上、どうせ切り落とされ、部品として処分される運命なのに。


ベッドの布団から覗く手を、俺はそっと握った。

指先には、艶やかなネイルが施されている。

「……お前がいるのに、VR女といちゃついて悪かったな」

酔った声でそう呟きながら、そのまま腕を布団から引きずり出す。


白く細い腕を胸に抱きしめる。

この腕は、先日、廃棄品入れから拾ってきたものだ。

二の腕の途中で断ち切られ、切断面には金属製のキャップがねじ込まれている。

簡易的な維持装置で、内部に保存液を循環させる仕組みだ。


この腕は──俺が作業した女のものだ。

返却時に交換され、廃棄処分に回された部品を、俺が拾ってきた。

ほくろの位置が特徴的で、すぐに思い出した。


貸し出したときは地味で何の飾り気もない手だった。

それが返却される頃には、丁寧にネイルが施され、爪の形も整えられていた。

誰かに大事にされていた証だろう。


だから俺も、こうして大切に抱いてやる。


この腕は本来なら、切り離された時点で一日もせずに腐ってしまうはずだった。

だが、戦時中に開発された保存技術が流用されているおかげで、

腕だけの状態でも簡単には腐らない。

定期的に保存液を補充して、血流の代わりを補ってやれば、長期の保存が可能になる。


保存液の効果で細胞には最低限の栄養が供給され、

まるでまだ“生きている”かのように温かみを保っている。

冷たい死体ではなく、握れば確かに“女の手”を抱いているような感触が返ってくるのだ


俺は、この腕と暮らしている。

もちろん、まともな関係じゃない。

だが、酒に酔えば、この手に自分を握らせて慰めを受けることもある。

食卓に置けば、まるで一緒に食事をしている気がする。

夜は布団に引き寄せ、眠りにつくまで握りしめる。


……こんな生活でも、誰もいないよりはずっとましだ。

俺にとっては、この腕こそが“彼女”なのだから。

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