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貸出の檻  作者: メタル
第二章 座布団一枚
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第二節 仮想の女とフェミナ

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// 第二節 仮想の女とフェミナ

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飯を食い終わり、安っぽいニュース番組を眺めながらビールを飲む。

画面では、終戦から一年が経った今なお、戦後処理に関する報道が繰り返されていた。


《国連は依然として日本に対する核使用への非難決議を継続──》

画面下を流れるテロップを、俺はただの飾り文字のように眺めていた。


──あの戦争は、日本と台湾の連合が、中国とロシアを相手取って戦った大規模な衝突だった。

数で圧倒されるはずの日本は、極秘裏に開発していたクローン兵を投入し、戦局をひっくり返した。

だが勝利を決定づけたのは、最後に放たれた核兵器だった。


中国の首都は焼かれ、中華人民共和国は崩壊。

瓦礫の上に、台湾を中心とした中華民国が再建された。

ロシアも同じだ。首都攻撃で国家機能が吹き飛び、代わってウクライナが主導する新政府が成立した。


結果、日本は“勝者”となった。

だが同時に、世界から「核を使った国」として非難され、制裁と監視に縛られる存在にもなった。


……俺にとっては、そんなことどうでもいい。

明日を生きるのに精一杯の暮らしに、国際問題だの戦後処理だのは、ただの雑音だ。



リモコンを手に取り、女性の出演が多い有料チャンネルに切り替える。

だが、仕事で女の身体を毎日のように見ている俺には、どれも上辺だけで物足りない。


俺はテーブル脇のケースからVRゴーグルを取り出す。

安物の指先センサーと触覚グローブを接続し、AI対話アプリを起動する。

画面の中で人工知能の女が笑いかける──それが、今の俺の遊びだ。


仮想世界には、何人も“俺の女”がいる。

美人で俺を立ててくれる女。

年下で甘えてくる女。

課金さえすれば、いくらでも設定を切り替えられる。


しかも今では、そのデータをそのままクローン体に書き込んでレンタルできる。

VRと現実の融合──夢のような世界だ。


戦前は、実際の女を呼ぶサービスがあったらしい。

だが今や、リスクの高い人間の女は不要になった。

皮肉なことに、そのせいで行き場を失い、貧困にあえぐ女が増えた。


クローン女の体はどれも傷ひとつない完璧品だ。

けれど、不思議なもので──人間は完璧さに飽きる。

養殖の肉より、地鶏のようなワイルドさを旨いと感じるように。


クローン女は、規則さえ守ればどんな行為にも従う。

拒まず、恥じらわず、ただプログラム通りに笑顔を見せる。

だから安価で普及したが──富裕層には物足りない。


彼らが求めるのは、もっと人間らしい女だ。

抵抗し、恥じらい、時に涙を浮かべる“本物の反応”。

それを再現できる高額ブランドが「フェミナ」だった。

富裕層は巨額を払い、従わせる快感ではなく、感情をねじ伏せる優越感を買っている。


フェミナは、クローン女とはまったく仕組みが違う。

政府の説明によれば、貸出し体の人格は“本人の脳から抜き出された記憶”をベースに生成される。

そこに仮想人格をカスタムし、本人の痕跡を残す肉体へと書き込む。


だから完全な創作物ではなく、どこか人間臭さを帯びるのだ。

骨格の歪みや年齢による変化までもが“個性”として表れ、人格の揺らぎに影響を与える。


同じ設定を入力したとしても──

地味な中年をベースにすれば落ち着いた娼婦となり、

派手な若い女ならギャルっぽい娼婦になる。


その“揺らぎ”こそが、フェミナの価値だった。

均一で従順なクローンに飽きた富裕層が、高額を払ってまで求める理由だ。


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