東京在住のAと先輩Hの怪談シリーズ「廃村の怪」
はじめまして英U-1(はなぶさゆういち)と申します。
SSシリーズ小説初挑戦の作品になります。
東京都在住のAとH先輩の体験談
皆様に楽しんで頂けますと幸いです
どうぞよろしくお願いいたします。
アジャスターズレディオの
松尾さん、そしてスタッフの皆様、こんばんは
初投稿読まれたら初採用です
東京在住のAと申します。
本日のトークテーマが「最近あった不思議な出来事」ということで
いても至ってもいられずメールさせて頂きました。
まずこの話をするためには昔あった体験談をお話しないといけません。
これは僕が大学生時代にあった出来事です。
当時運転免許をとりたてだった僕はバカ大学生で
所属していたオカルトサークルの先輩と夜な夜なドライブにでかけていました。
出かけていた先はいわゆる心霊スポットと呼ばれる廃墟やトンネルなど不気味な場所ばかりでした
その日も僕がバイト代を必死にためて買った20万円の中古のアルト(1995年モデルしかもMT)で
先輩のHさんと二人で埼玉県の山奥まで車を走らせていました。
車のスピーカーからはソケットに指したFMトランスミッターに繋いだiPodで
気分を盛り上げるためにデスメタルを流していました。
H先輩はいわゆる見える人で助手席に座ってブラックの缶コーヒーを飲みながら足を組んでおり、
渋い顔をしながら心霊スポットへの地図を眺めていました。
「苦いなら無理してブラックコーヒーなんて飲まなきゃいいのに」
と茶化しますと
「やかましい、良いから前向いて運転しろ」
とぶっきらぼうに返してくるような女性でした。
先輩は綺麗な黒髪のスレンダーボディで160㎝を越える高身長な女性で
真夏にもかかわらず真っ黒の長袖シャツに
黒のパンツとスニーカーというカッコいい系のファッションをしていました。
腰まで伸ばしたストレートの黒髪が全体のシルエットをさらに際立いるいわゆる美人さんでした。
バストは控えめで男性からは常にモテそうな佇まいなのですが
実はとてつもなくつっけんどんな性格をしていらっしゃいまして
同じオカルトサークルに所属する我々はその性質に慣れておりますが
それを知らずに告白して撃沈した男性がどれだけ多いことか…
そんな性格をしている先輩が会長として鎮座しているオカルトサークルは
万年会員不足で苦労しておりました。
さて、埼玉県の山道を車で上っておりますと
「よし、このあたりだ」
とH先輩から車通りの少ない街道沿いにポツンと建っている
コンビニに車を停めるよう指示されました。
その建物はまるで絶海の孤島のように暗闇の中に光だけが浮かんでいるような印象をうけました。
時刻は夜の9時を回り、
コンビニのレジでは駐車場に停まっているトラックの運転手らしき人が
店員と雑談をしているのが見えます。
私たち2人は懐中電灯をそれぞれ持つと
コンビニの裏手にある獣道のような路地を徒歩で上っていくことになりました。
しばらく行くと口の中に小さな虫が飛び込んできます
「ぶえっ、ぺっぺっ!」
やぶ蚊やダニ除けに虫よけスプレーはしていますが
懐中電灯の光に引き寄せられて大きな蛾や羽虫が大量に寄ってきます。
オカルトサークルに入って2年ほどがたち、
夜中に山や海に出かける事には抵抗はなくなりつつありましたが
虫だけは慣れることがありませんでした。
その日目指した場所は
某テレビゲームやアニメーションの舞台となったとされる廃集落で
40年ほど前に住んでいた最後の住人が亡くなって以降、
だれにも手入れをされず、ただ朽ちていくだけになった村だとのことでした。
先輩は「異世界や異次元につながっているという噂があるんだ」
と評していました
曰く
「普通の場所と比べると村の中では時間の流れが違い
村から帰ってくると時計がくるってしまっている」
とか
「村で起こった殺人事件で亡くなった人々の魂がいまだに村をさ迷っていて
村の中で今まで通りの生活を送っている」
とか
まあ、ありきたり…といいますか
よく聞く類の物ではありました。
僕自身、プレイしたことのあるゲームの舞台となったとされるスポットに
行けるとなれば出かけてみたくなるというミーハーさは兼ね備えておりましたので
つっけんどんな性格の先輩を愛車に乗せて来たというわけです。
先輩は虫に悪戦苦闘している僕を見て
「ふふん」
と笑っているようすでした。
幽霊が見えても平気だし虫も平気となると
この先輩は一体何が苦手なのだろう?と思った事を覚えています。
20分ほど山道を登りましたでしょうか?
急に藪がひらけると見るからに長いこと人が住んでいないであろう
木造の住宅が建っているのがみえてきました。
建物の外壁は崩れかけ、柱の色も劣化して真っ黒でボロボロ
屋根の瓦も苔が生えて崩れかかり、窓ガラスの大半は割れていました。
村の入り口についたようです。
僕たちに驚いたのか
『キャー‼』
という鳴き声とともに
鳥らしき動物がバサバサと飛び立っていきます。
僕はお恥ずかしい話ですが、とてつもなく怖がりのためビクッ!っと驚いていましたが
先輩は相変わらず微動だにしていません。
どうやら集落は山逢に段々の土地を開墾し
建物を建てていった様子でした。
僕と先輩は月の光が差し込む元集落の雑木林を歩いて回りました。
崩れそうな建物が多いため建物の中には入らず
入り口から懐中電灯で建物の中を照らして観察していきます。
建物の中にはほんの少し前まで人が生活していたような調度品の残っている物があったり
内装もほとんど崩れてしまい草でボーボーとなり自然に帰っていくだけの建物があったりと
某ゲームやアニメーションの描写のままといった様子でした。
先輩はいわゆる見える人であり
僕は見えない人です。
先輩は肝試しをしている最中は「特にヤバくて手に負えない」
という場合でない限り僕を引き留めたり
その場を離れるように誘導したりすることもないため
その廃村はどうやら「得体の知れないヤバい何かがいる」
というわけではなさそうでした。
確かに僕も村の中を散策していく中で
「ここは不気味で行きたくない」というような「感じ」すら覚えず、むしろ
「懐かしさすら感じる心地よさがある」と思っていたほどです。
村を奥まで進んでいくと
そこには鳥居と拝殿だけの小さな神社がありました。
どうやらこの村の人々の集会所だったらしく
落ち葉もなく綺麗にされていました。
「おい、A止まれ…お前気づいたか?」
と鳥居をくぐろうとする先輩が僕を引き留めます。
説明するのが難しいのですが
その神社は一見廃神社のようではありませんでした。
住民のいない廃村の奥地にある
管理人がすでに居ないであろう神社は
建物の木材は変色したり鳥居の塗装も剥げ古ぼけてはいるものの
綺麗に整理されていたのです。
神社の鈴は綺麗に磨かれ、鳥居のしめ縄はおそらく昨年末に交換されたものであろう
というような新しさでした。
「ここだけ綺麗にされてますね。だれか管理しているんでしょうか?」
と先輩に感想を伝えると
先輩はしかめっ面を僕に見せます。
「うーむ、やっぱりそう思う?」
「違うんですか?」
「いや、多分その通りなんだけどさ」
というや否や
シー!
と僕に黙るようジェスチャーをすると僕の口に手を当てました。
「ッ!?」
すると突如
[くぁwせdrftgyふじこlp]
とどこからともなく
人の話し声のような、ノイズとも音楽とも聞こえる音が聞こえてきました。
まるで地震が起きたように足元がおぼつかなくなり
僕と先輩は頭痛と吐き気に襲われます。
まるで船にでも酔ったような感覚です。
先輩も苦しいのか僕の口から手を放し両手で頭を抱えています。
ズキズキした痛みと吐き気にに襲われながら周りを見ると周りが霧に囲まれてしまいました。
僕ならまだしも先輩が行動不能になるなんて
[くぁwせdrftgyふじこlp]
まだあの音は続いていており時折人の話声のような音にも聞こえます。
まるで隣の家で流しているテレビ番組の音が自分の家まで届いているかのような感覚でした。
僕の心臓はバクバクと鼓動を激しく打ちます。
何が起きているかさっぱりわからないがここにいたら何かがヤバい!
そう思い、僕は頭を抱えてうずくまっている先輩に肩を貸すと
夜霧の中ですよ、普通に考えれば見えるはずが無いのですが
2人の影が僕たちを見ていました。
見えていないんです。でも確実にそこにいてこちらの様子をうかがっている影。
まるで現実でいて現実でないような不思議な気持ちです。
いままでの心霊スポット探索では一切経験をしたことが無いまさに怪異でした。
僕と先輩は必死にその場から離れました。
遭難しないよう目印と決めた村の廃屋をゆっくりと、しかし確実に来た道へと進み
夜霧に包まれた廃村を後にしました。
山道を下っていくと先ほど車を停めたコンビニにたどりつきました。
コンビニの照明は変わらず煌々と光っており、
先ほどはレジ打ちをしていた店員さんが表でゴミ箱の清掃をしていました。
僕は先輩を駐車場の縁石に座らせると
コンビニで缶コーヒーを2つ買い、一つを先輩に手渡しました。
その頃には先輩も落ち着いたようで
「ありがとう」と受け取ると
僕と先輩は二人でコーヒーを飲みました。
いわゆる見える人である先輩がいうには
あの村は幽霊の類の物は一切感じられなかったそうです。
普通の場所「一般的な心霊スポットと言われるところ」は
人の営みであったり人の思いや精神が、
カメラのフィルムのネガのように土地に焼き付いているものでそれが一切感じられないうえに
いわゆる浮遊霊や地縛霊と呼ばれる類の霊体が
人が生活を営んでいた場所に寄ってこないなんてことは普通ではありえない、
そんな異常な場所だったとのこと
これは先輩の憶測なのですが
あの村はどうやら異質というか多分異次元のようなものに繋がっているようで
あの2人分の影は何だかわからないが多分知らない方がいい、
この世の物とは別の法則の物だろうという所までしかわからなかったようでした。
そして噂通り、僕と先輩の時計はお互いに2分間のずれが発生し
ピッタリ合わせたはずのコンビニの時計とも合っていませんでした。
これが当時、僕が経験した数ある中でも特殊な話なんですが、
ここからが本題に当たる事件が起こりました。
つい先週末にその先輩と10年ぶりにその廃村に行ってみる事にしたんです。
今回は肝試し…。というわけでは無く、たまたま別件で移動中に
その村の入り口にあたるコンビニの近くまで立ち寄ったのでついでに探検してみる事にしました。
コンビニはすでに潰れ、シャッターが下りた空き物件となっていました。
前と同じ駐車スペースに車を停めると時間はお昼時。
秋も終わりに差し掛かり紅葉で綺麗に染まった山道を二人で登っていきます。
「この村の事はずっと気がかりだったんだよね」
と先輩は僕に言いました。
そんな事をH先輩が僕に言うなんて珍しい。
大学を卒業した後、僕たちの間柄は進展し夫婦となりましたが
大学を卒業してからは心霊スポット巡りなどの危険な遊びはしなくなっていました。
先輩から心霊スポットに関する話題が出るのは何年ぶりだろう、というレベルです。
時間は昼を過ぎた頃。
前は藪の中の小道を進んだ悪路も
落ち葉色に染まった心地の良い散歩道に思えます。
以前は真っ暗で不気味だった廃村も
美しい紅葉と山鳥の鳴き声で全く違った印象を僕たちに与えました。
しばらく進むとあの時の神社があの頃のまま
村の奥にひっそりと佇んでいました。
僕と先輩は神社の敷地に入り拝殿で神様を拝みます。
神社の敷地の中は変わらず落ち葉一つ無く手入れが行き届いており
鳥居のしめ縄も痛むことなく風に揺れています。
まるであの時から時が止まったかのようでした。
神社から出ようと神殿から鳥居の方へ振り向いた瞬間、
「あぁ、やっとわかった」
と先輩がため息とともに僕と手をつなぐと
[くぁwせdrftgyふじこlp]
あの聞き覚えのある謎の音が付近に響き渡ります。
すると神社の周りが急激に濃い霧に包まれ
僕と先輩は軽い立ち眩みと頭痛に襲われました。
以前と比べると痛みや吐き気は少ないもののまるで10年前の再現です。
すると霧の向こうに黒っぽい2人組の影が表れました。
どうやらこの神社を観察しているようでしたが
向こうも体調を崩したのか頭を抱えて地面に膝をついています。
しばらくすると二人のうちの一人が一方に肩を貸すと、来た道を戻っていきました。
「気づいた?」
と先輩は僕にいたずらっ子のように微笑みかけます。
「あの二人ってもしかして…」
「さぁね、知らない方がいいこともあるし用事もあるから今日はもう帰ろう」
といつの間にやら霧が晴れた廃村から家に帰ることにしました。
これが最近体験した不思議な話です。
家に帰ってからも先輩はあの神社で何が起こったのかは教えてくれませんでしたので
これはあくまで僕の考察なのですが
先日僕と先輩が見た、霧の先の影というのは大学生の頃の僕と先輩なのではないでしょうか
そしてあの時に夜の神社で見た2人の影というのは
大人になった現在の僕と先輩だったのではないでしょうか。
あの場所は一体なんなのでしょうね?
まるであの神社はあの場所で時空を旅しているように思えて仕方ありません。
松尾さんはどう思いますか?
これが僕が最近体験した不思議な話です。
長文乱文失礼いたしました。
他の視聴者さんのお話も楽しみにしております。
ステッカーください(笑)
如何でしたでしょうか?
宜しければ感想や評価など頂けると嬉しいです。
描きためておらず空いた時間に少しづつ書いています。
また更新できましたらなにとぞよろしくお願いいたします。