死んで欲しい。違う、殺させて。
劉遷。名前を変えていたから気付かなかった。結婚を祝福しにやって来た呉の王の隣にいたのは、姉、劉白に違いない。くっきりとした顔立ち、少し低い声、穏やかな笑顔。全てが、姿を消した姉のものだった。
宰相となった姉は、呉王の隣に立ち、何食わぬ顔で私に微笑んだ。私は、その時驚いて、何も言えなかった。それでも、すぐに燃えるような何かが湧いてきた。それから、私は、ただ姉の方を睨みつけていたが、姉は呉王の隣に立ち、老いた私の夫に深々と頭を下げていた。
本当は、宰相として祝福に来た姉が、老王と結婚させられ、惨めな気持ちでここにいるはずだった。私が、他人事のような、僅かな同情を含めて、見せかけの祝福をするはずだった。しかし、実際、そうはならなかった。
私が逃げ出したために、私が王と結婚しなくてはいけなくなった。たとえ、どんなに物に恵まれていたとしても、誰が好きで、老いた王と結婚するのか。私には好きな人がいたのに、ずっと一緒になれると信じていた人がいたのに、それはあまりにも呆気なく崩された。
姉と違って、私は自由に恋愛ができると言われてきた。でも、姉は逃げた。死んだと思っていた。死んでいたら許せたのに、姉は男として自由に生き、宰相という地位を手に入れ、幸せに暮らしていたのだ。だから、ああやって微笑むんだ。所詮他人事だから。許せない。姉の所為で、私の人生はめちゃくちゃにされた。
私は王に言った。呉を攻めてください、と。王は快く承諾した。
敗北した国の重臣の姉を殺してやろう。宰相となるために、民を騙していたことを叫んでやろう。炎は賢い。生きたまま捕えて、私の元へ連れてきてくれるだろう。私の手で殺されないと、意味が無い。
姉をどうやって殺してやろう。私は表面だけの優しい微笑を浮かべながら、惨めな姿になった姉を想像した。晴れやかになる気持ちに、心を躍らせながら。