表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
荒天の座標  作者: 藍澤榊
3/12

愛より憎しみを取る勇気を下さい。

 昭妃は、何故、遷に恨みがあるのだろう。昭妃と遷に、接触は無いはずだ。

 しかし、よくよく考えてみれば、私は、遷が師匠、韓羽先生の弟子になるまでのことをほとんど知らない。韓羽先生は、遷について何も話さなかったし、私も何も聞かなかった。先生に遷を紹介された時も、遷は名前を言っただけだった。

 韓羽先生の弟子になるまで、遷は何をしていたのだろう。ただ、その疑問だけが、静かな部屋に漂う。昭妃は話してくれるだろうか。話してはくれないだろう。それ以前に、それを知ったからといって、私に何の得も無い。

 厚い布が、頭の中を駆け抜ける。その所為だろうか。酷く心が息苦しい。

「死んで欲しくは無いんだ」

 自分の話を聞いてあげるかのように呟く。遷には、死んで欲しい。私はそう思っているはずだ。でも、それは死んで欲しいほどの恨みではないのかもしれない。ただ、遷という存在に縛られている自分を解放するために、遷を殺したいと思っているのかもしれない。

 私は、遷に対して思い入れはあるのだろう。一日中一緒にいたわけだから、当然である。しかし、そうだとしたら、私は身動きが取れない。遷から解放されることはありえない。

 このまま私が職務をこなせば、遷は死ぬ。もし、遷への思い入れが私に無かったとしたら、それ以上に幸せなことは無いだろう。

 今は何もしたくない。頭の中には何か違うものが詰まっている。しかし、戦争前だ。すぐに王に呼ばれることになるだろう。

 私は筆を取り、地図を睨みつけようとした。しかし、墨一色の地図から、何かが浮かぶ気がしない。ただ、静かな部屋に、ざわめきが聞こえるような気がした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ