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荒天の座標  作者: 藍澤榊
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飲んだ言葉を吐き出して欲しいのに。

 炎は許された。進言をしたのは自分だが、正直、驚いた。若き呉王は生き残った他の者たちにも、寛大な措置をとった。

 郭の国を治める。そのためには、亡き郭王以上の政治を執り行わなければいけない。そのことを、陛下は十分に理解していた。若いながらも、素晴らしい王だと思う。

「そういうわけで、私の補佐をやって頂きます」

 目の前に座る兄弟子に言うと、驚いたのだろうか。普段は細い目を丸くした。

 炎は、呉の国に着いてから、騒ぐことも無く、宙に浮かんでいるかのようだった。溜息を吐いたり、意味も無く歩き回ったりすることは無い。天を仰ぎながら、何かを考えているかのようだった。

 そんな炎の、生きた表情が見ることができて、私は満足だった。

「郭の能力ある重臣は、領土拡大に当たっての異動もありましたので、適当なところへ入れさせて頂きました」

 勿論、固まらないように上手く分けた。一応、敵国の重臣だった者である。謀反を企てぬよう、十分な注意を払ったつもりだ。そして、炎を近くに置いたのは紛れも無く、近くにいて欲しかったから。心配なのだ。

 炎は、何か考えているのか、僅かに俯きつつ、黙り込んでいる。しかし、すぐに、ふと顔を上げた。何かを言おうとしたのだろうか。

「どうして……」

 ぼそりと呟かれる低い言葉を聞き返そうとすると、炎は慌てた様子で言った。

「すみません。お取り計らい、ありがとうございました」

 何を訊きたかったのだろうか。尋ねてみても、ただ炎は礼を言うだけだった。私は諦めた。

 もう、春は盛りだ。ふらりと外に出ると、一羽の小鳥が、木の枝にとまっているのが見えた。ふわりともう一羽が、すぐ隣にとまる。すると、最初からいた一羽は、首を傾けながら、きょろきょろと周囲を見渡し始めた。

 二羽の小鳥の周囲には、多くの木の枝がせめぎ合っていた。


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