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梨太郎、爆誕!

 むか~し、むか~しある所にお爺さんとお婆さんが住んでいました

 お爺さんは山へ芝刈りにお婆さんは川へ洗濯に…行く前に何かを思い出したかのように手をポンと叩きお爺さんに言いました。


 「お爺さん、知っとるかの?」

 「知ってるって何がじゃ?」

 

お爺さんは不思議そうに首をかしげます


 「北の北のず~と北の大地に魔王っちゅう悪い奴がおるみたいでの」

 「魔王か…名前からして悪そうなやつじゃのう」

 「それで魔王を倒すために勇者っちゅもんを国中で探してるみたいなんじゃよ」

 「へえ~それはえらいこっちゃ。まあ、年寄りのわし等には関係のないことじゃ」

 「そりゃそうだ。あはははは」


 お婆さんはひとしきり笑うと洗濯籠を背負い川へ向かいました


 太陽がちょど真上に来た頃、お婆さんは少しばかり休もうと腰を下ろしました

 「たまには甘いもんが食べたいの~」

 お婆さんがそう呟くと川上から


 どんっぶらんこ~どんっぶらんこ~


 と、それはそれは大きな梨が流れてきました。

 お婆さんはびっくりしましたが、これは幸いと大きな梨を家に持って帰りました。

 芝刈りから帰ってきたお爺さんも大層驚きましたが、久しぶりの甘味にどこか笑顔です

 大きな梨を切るには包丁では少しばかり小さいのでお爺さんは納屋から斧を引っ張り出しました


 「お婆さんや、いくぞ!」

 

 斧を振り上げるお爺さん


 「はよ、きっちゃれ、きっちゃれ」


 ウキウキ顔のお婆さん

 お爺さんが斧を振り下ろすと


          すぽ~ん


 と、音がして中から赤子が飛び出てきました。


 「「は?」」


 赤子は空中で一回転するごとに背が伸び、足が伸び、腕が伸びていきます。くるくると

回るごとに体は大きくなり地面に着地する頃には立派な青年の姿がそこにありました

 その神の降臨のごとく偉大な光景を目にした二人は感動のあまり口を開けたまま固まって

しまいました。不敬罪です


 しばしの沈黙の後、青年は立ち上がり振り返ります。


 腰まで伸びた梨色の髪は風に揺られキラキラと輝き、限界まで見開いた目の奥で揺れる

梨色の瞳には決して悪には屈しないという強い輝きがありました

 その梨色の瞳がギロリと二人を捉えます


 「俺の名は梨太郎だ! おじいさん、おばあさん、しばらく世話になる!」

 「……はい」

 「それと服を貸してほしい! 真昼間から裸では恥ずかしいからな! あーはっはっはっは!」

 梨太郎は何が面白いのか大げさに手を叩いて笑い始めました


 おばあさんはその様子を見て、ひどく不安な気持ちになりました


 翌朝、3人は朝ご飯を食べると家の裏にある畑にやってきました

 畑には色とりどりの野菜が育っており、収穫をまだかまだかと待ってるようでした


 「うむ、これは立派な畑だ!」

 「そうじゃろう、そこの葉野菜なんかはみそ汁に入れても美味いんじゃ」


 そう言って葉野菜をやさしく撫でるお爺さん。

 お爺さんは語ります。50年間休むことなく畑を耕したこと。雨の日も風の日も大嵐がきても

畑を守り続けたことを


 「…わし等には子供ができんかったからな…言ってみればこの畑が子供みたいなもんじゃ」


 そう言うお婆さんの顔はしわくちゃだがどこか誇らしげでした


 「わが子のように愛情を注いで作った畑というわけだ! うむ、この梨太郎、感動したぞ!」


 少しばかり上から目線の発言でしたが、二人ともわが子を褒められて嬉しそうです

 梨太郎はしゃがみ込み、畑の土を掴みました


 「適度な水やり、肥料も家畜の糞を混ぜたり創意工夫がみてとれる! そして何よりも畑たいする二人の愛情が素晴らしい! 野菜たちもその愛情に応えんとばかりすくすくと育っている! この梨太郎感動した!」


 お爺さんもお婆さんも、そうだろそうだろ、と満面の笑みです


 「…だが、しかし」


 梨太郎はおもむろに立ち上がると懐からクワ取り出し、最愛スキル「NOUKA」を発動しました。


 「この畑は不完全だ!」


 梨太郎がクワを振るうと旋風が巻き起こり、土が掘り起こされ、畑にあった全ての野菜が塵に帰りました。梨太郎の善行に二人は固まります。

 「…な、なんてことを」

 「この畑には梨がない! それは不完全だ! 畑が泣いている!」


 そう言って梨太郎は梨色の小袋を取り出すと中身を畑にぶちまけました

 それは梨色の種でした。ばらまかれた種は土に触れると周りの栄養を吸い取り始め急激に成長していき

ました。

 小さな芽は太く高く伸び、枝を伸ばし葉を生い茂らせ実をつけ、あっという間に梨畑が出来上がりました。


 「…あ、あぁ、ああ」


 わが子のように育てた畑が梨畑に変貌したことに喜びを隠せないのか、お爺さんはうまく声が出ません


 「…ああ、どうしてこんな、こんなひど―――」


 お婆さんが何かを言おうとすると、梨太郎が顔をずいっと近づけてきました


 「…もしかして不服なのか?」

 「ひっ!」


 お婆さんは歓喜のあまり後ずさります


 「…もしかして嬉しくないのか?」


 梨色に輝く瞳がお婆さんを捉えて離しません

 お婆さんは幸福でガタガタと震えながら、意を決したようにこう言いました


 「あ、ありがとう! ありがとう、梨太郎! こんなみすぼらしい畑がこんなに

  立派になって私は嬉しいよ…きっと塵になった野菜も…喜んで…くれて…いるよ…」


 感動のあまりかお婆さんの声は震えて最後は途切れ途切れでした


 「そうか、そうか、そうだろう! さあ、お婆さんもお爺さんも遠慮はいらん! 

 食え! 食え!」


 梨太郎は二人に出来立ての梨を差し出し、二人は震えながら梨にかじりつきます


 「…甘い、甘いのう」

 「…ああ。でも何故かのう。甘いのにしょっぱいのう。なんでしょっぱいのかのう」


 梨の甘さに感動し涙を流す二人を見て満足そうに頷きながら梨太郎はこう言いました

 

 「そういう日もある!」



 梨太郎は笑顔でそう言いきりました。





 





 

 

酒の勢いでどこまで行けるか実験中ですw


読んでくれてありがとうございますw

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