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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットエッジュケイションー〜教え教えられ編
49/54

条件

男を追いかけたミスリルの誓いはどうにか見つける事に成功したが、すぐにまた人混みへと紛れてしまい完全に見失ってしまった。

ロザリンドが悔しそうであったが、持ち前の性格なのかすぐに切り替えて、次に見つけたらタダじゃおかないと息巻いている。


『ダーリン。あの男が街中に逃げる前、お金を渡していた奴がいました。そして、それは恐らくヤマナでやがります』


「嘘でしょ?なんでヤマナさんがそんな事を?」


ランダウはタエコから聞いた情報を皆に教える事にした。

隠しておこうかと考えたが、思わず出したヤマナの名前をしらばっくれるのは不可能との判断。


「そう言えばあの女の人おっぱい小さかったかな。それに言われてみればヤマナさんっポイ感じがあったかな……」


「もしそうならじっくりとお話しないとね」


ギュッと拳を握りしめたドロシーにやり過ぎないでねと釘を指しておく。


「ほら、なんか理由があるんだよ。たまたま取引する前にトラブルが起きてああなったとかさ!いくらヤマナさんでも胸が小さいからって……」


「からって?」×3


悪い人ではないはず。どうにか良い所を伝えようと思い出されるヤマナとの思い出。


(パイオツなーめーなーめー……、じゃなくて……。おっぱい道……、でもなくて。胸だけじゃなくてお尻も全部好きで)


「多分ヤマナさんは女性全員好きそうだからそんなことしないよ!」


自分で言っておいて、もう少しなんかなかったのかと自己嫌悪。

そんなランダウとは裏腹に納得するタエコ含めた4人。

大柄の男性を追いかける前にやろうとしていた、プレチャージ式空気銃の試射を行うために久々にピオラ平原へと向かった。

これは弾は魔道具で生成しているが、手動で空気を取り込む作業が必要であるタイプの銃だ。


「うーん、飛び道具なら僕には弓があるかな」


「私も遠くを狙うなら魔法で十分なのよ〜」


「私はこういうの多分苦手な気がするわ……」


使う前から散々な評価である。3人に渡した空気銃はマジカルファームで殆どの工程を終わらせたとはいえ、素材はロウフリアからの持ち込みで行われ、

そうすることで発見はされていないが再現可能かつ、便利だが何かのバランスを崩さない程度の武器を作り出した。

シュタイン皇子達は当然の顔をして火薬式の銃を開発しており軍にはそれ用の部隊もあるが今のランダウ達は知る由もない。


日も落ちてきたので家へと戻ろうかという雰囲気に。


「うーん。駆け出しの冒険者には悪くないかな。弓の半分以下の距離だし」


「そうかしら?こんなに当たらないのは武器として致命的じゃない?」


すまし顔で評価をするドロシーだが、4人の中で的中率が低いのは彼女であった。料理を担当していたり絵が得意など手先の器用さは悪くないが、なまじ筋力がある分力だけで銃を支えがちなのだ。


スコープ代わりに単眼鏡をセットしていると言っても、ロザリンドがゴブリンやスモールウルフに対してこの銃の殺傷能力圏内83mで突風が吹かない、気付かれないの条件下なら百発百中に対してドロシーは7mで2割程度ある。


「……、……。」


バーバラが難しい顔をしながら顎に手をやって何やらブツブツと言っている。それから数分後。


「わかったのよ!!」


突然の大声にビクッと身体を震わせたロザリンドが銃口を逸してしまい獲物を外した。

バーバラは何故今の所武器で困っている訳でもなく、むしろこれからダンジョンの壁を素材にした装備を作ろうかという時に新たな物を作ったのかに気が付いた。


「これは対人戦用なのよ。もっと言うなら野盗とかへの非殺傷武器なのよ」


「仮に僕がこれで撃たれたら、この防具なかったら普通に死ぬかな!」


「でも足を狙ったら死なない上に接近を防げるのよ」


まさにドヤ顔に相応しい表情で解説をするバーバラ。

知識欲が高く考えるのが好きな彼女は、言葉足らずなランダウの行動を解説するポジションとなっている。

バーバラの考えは間違っていない。事の発端は確かにそれであった。


『敢えて空気銃にしたのは前世の叔父が使っていたのに憧れてなのと、マジカルファームのスキルに頼り切るのは卑怯だからと向こうにも無い武器を作りたかったが正しいでやがります』


3人には聞こえない突っ込み兼補足をしつつ、銃を作っている時のランダウを思い出すタエコ。


「空気銃には火薬にはないデメリットがいっぱいあってね。飛距離は短いし、威力だって精々鳥とかの小動物を仕留める位。鹿すら一発でなんて無理で、熊なんて夢のまた夢。しかも連射性が劣ってて、エアコキって一発ずつ手動で動かさないといけない。弾道だってちょっと距離が離れると山なりになるし」


『それって武器として致命的な欠陥でねーですか?』


「まあね。地球ならそうだよね。でもこっちならどうかな?火薬を作るには時間も材料も必要。雨の日や水魔法使われたらとかもある。そもそも取り扱いが難しいし病気の危険もあるけど、空気なんてどこにでもありふれてる。それに黒色火薬をただ作るだけならまだしも、銃に込める分量とか、連射するための雷管やらなんやらの知識は俺にない!」


『それで銃身を作ったら火薬には目もくれず弾を産み出す魔道具に勤しんでやがったんですね。手作りしたら手に持ったり眺めたり絵に書き始めたり、しまいには口に含んだ時は焦ったでやがります』


「魔道具で均一化した物を作るにはそうした方がいいかなって」


『目が紅くならなくてもダーリンはカッコいいでやがります。そして本命のアクセサリーで底上げした魔力によって圧縮した空気を撃ち出すのはどうするでやがりますか?』


「こっちは流石に人目についたらヤバいからダンジョン内で使って、威力次第だとシュタイン皇子に連絡してからの方がいいかな」


(『明らかにやべぇ威力と飛距離なのは理解してやがりますか』)


帰りがてらランダウが作った魔道具で、水の温度と量の調整に考えが及ばなかった事を悔しがるバーバラに対して謝るが、首を横に振って気にしなくても良いとギラギラした目で言われる。


『この世界は弱肉強食でやがりますし、早いもん勝ちでやがります』


(いや、そんな殺伐としたのパーティとしても恋人としてもイヤだよ!!)


「ダウがそうだからこそ私もやる気がでるのよ〜。いつか皆を驚かせるのを急にだすのよ〜」


そんなこんなで家に帰ると、孤児院の少年3人に囲まれるミスリルの誓い。

アレンの他には身体の大きいベルクマンと肌の色が黒いグロージャーだ。


「ねね、ラン兄達そろそろダンジ」「ダメだよ」


「そんなぁ。最後まで聞いてくれたっていいじゃんかよぉ」


「ダンジョンに連れてって欲しいんでしょ?でもそれは無理だよ」


「ちょっとダウ。僕には弟いるから分かるけど、そんな言い方したらもっと反発するかな」


ヒソヒソと話すロザリンドの言葉を聞いてちょっと頭ごなしだったかと反省する。

尚も食い下がる3人に折衷案を提示することに。


「うーん、ダンジョンには連れて行けないけど、3人がかりでも良いから俺から一本取ったら近くのモンスターが出る所ならいいぞ」


「ホントかラン兄!」

「よし!それならやってやるぜ!」

「アレンと僕はラン兄さんの1つ下ですからねぇ。これは意外とあっさりといけるかもぉ」


早速やりたいと息を巻く3人に使いたい武器を聞いて木製の物を渡す。

小柄なアレンには短剣と盾、グロージャーには槍、大柄なベルクマンには大剣だ。

魔空庫からすぐに取り出せたのには理由がある。

ランダウは実績の為に作れるアイテムを順番に各品質でせっせと作ってはコレクションしていたのだ。

ちなみに超高品質でマジカル品質まであと少し。

木製の物はスキル補正で沢山在庫があったのでそれを変換するだけだけの作業であった。


「うりゃ!」


武器を渡された瞬間にアレンは先手必勝とばかりに斬りかかってきた。

それを難なく躱してバックステップをして距離を取る。

不意打ちに等しい攻撃に対して非難する者はいない。

モンスターだって草陰から急に飛び出したりと気を抜けないのだ。もし今の攻撃を食らっていたらランダウが悪いとタエコを含むミスリルの誓いは考える。


ランダウは腕を伸ばして掌をクイクイと手招きをして挑発する。

武器を持つ3人に対してランダウは素手であり、流石にカチンときたのか一斉に攻撃を仕掛けてきた。

それを丁寧に避けながらも直さなきゃいけない箇所は指摘する。


「ほら、体勢も崩れていない俺にそんな大振りしたって当らないよ」


「くっ!この!」


「ベルクマン!まずは俺がラン兄の足を止める!」


意地になって大剣を振り回すベルクマンにアレンが作戦を伝えた。

しかしそれはフェイクであり、本当の狙いはグロージャーが後ろにこっそり回り込み一撃を加えようとしていた。


「甘い甘い!ベルクマンを目眩ましに使ったのは上手いけど足音消さないと意味ないよ」


そうして指導をしながら組手を続けていると、他の子供達やレーヴィーが集まり3人を応援している。


「も、もう無理ぃ」


「こっちが、一撃、当てるどころか、ラン、兄さんは魔法すら使わないとか」


人一倍動いていたアレンは息を整えるのに精一杯だ。

ランダウの強さを侮っていた訳ではない。ベルズとの試合を見て強いことは分かっていた。

それでも3人で臨めばもう少しどうにかなると自信があったのが粉々に打ち砕かれる。


「それじゃあお食事にしようかしら」


レーヴィーの言葉に応援していた子供達がお腹空いたと口にしながら家に入る。

疲労と悔しさで動けないでいるアレン達にミスリルの誓いは何も言わず肩を叩く。

慰めの言葉は逆効果だと判断した。


「これじゃあ再来年が不安だな」


「えっ?俺の一個下なら来年じゃないの?」


「孤児院の子供は1年遅いんだってさ。理由は知らない」


これは孤児院出身者が栄養の関係で育ちが遅いのが関係しており、必死に稼ぐために冒険者になろうと死亡するケースが多すぎたのだ。

10歳で個人事業主扱いとなった西武諸国と言えど、冒険者ギルドの以外は今の子供達がやっているのは丁稚奉公とさほど変わらないのだが、一攫千金を夢見る若者が多い。

それはシュタイン皇子のプロパガンダによるものでもあった。


「あーあ。冒険者になって一杯稼いで皆を楽させてやりたかったのになぁ」


「えっ!?たった1回失敗したら諦めるのかな?」


「それじゃあどの道冒険者としては無理ね」


アレンの呟きに驚くロザリンドに冷たく突き放すドロシー。


「えっ?何回も挑んでいいんですかぁ?」


「ダウは授業でやりたいことがあったら協力するって言ってたのよぉ」


「俺達も仕事あるから毎日は無理だけどね。訓練を手伝ったりも出来るし、成長したなって思ったらまた挑んできなよ」


(アスレチック的な遊具とかのトレーニング道具作ってあげよっかな……。いや、その前に戦闘の課題点が先かな。俺も課題点が見つかったし)


ようやく回復した3人とこれからの事を話しながら家の中へと入っていった。

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