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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットエッジュケイションー〜教え教えられ編
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試し売り

今回得た実験の成果だけで国に売ったら十分な報酬を貰える情報があるとバーバラは熱弁する。

水の適性がランダウより低い2人が、軽く魔力を込めただけで自分の魔力以上の出力を即発動したこと。

これは魔道具作りをしている人にとって悲願と言ってもいい。何しろそういった物はダンジョンからしか見つかっていないのだから。


「ねえ、いくらダウとバーバラが前もって実験の手順を考えてたからってたった10日で発見したことを、何十年、下手したらそれ以上研究してる偉い人は気が付かなかったの?」


「うーん、魔道具には詳しくないからなんとも言えないなぁ。何個か考えられるのは、研究者がダンジョンのやつを参考にし過ぎて迷走しているか、バーバラは俺の出す醸しタルとかを目指して科学の勉強していたから辿り着いたとか……。あとは派閥があって足を引っ張ってるとかかなぁ」


「僕的には時間差ある魔道具を冒険者が使うなんて信じられないかな!」


「そこには秘密があるのよ〜」


魔核には魔力を貯めて取り出す緊急回復用としての役割もある。

モンスターが死んだ時点で魔力は失われ、再び注がなければいけない。


「作る時に魔核に魔力をいっぱいにしておけばもっと少ない魔力で使えるし、時間差なんてないのよ〜」


「それをバーバラが作らないって事は欠点があるんだ?」


「魔力を使い切ったらまたいっぱいにしないと使えないのと、それを何度も繰り返すと壊れるのよ〜」


(これってもしかしてタイマー付家電製品の噂とか、あえて壊れやすく作るみたいな感じかな?)


『確かにわざとの可能性がたけーでやがります』


「市場に出回ってるのはそうしとけば儲かるから出してないのかも……」


「ど、どういう事かな?」


大発見だと思ったことが、実は既に国が隠しているだけかもしれないと落ち込みながらも、ロザリンドに研究にはお金が必要であり、便利だけど壊れるならその度に買い直す必要がある方が儲かる仕組みを教え始めた。

そして3時間が過ぎた頃には……。


「だからこっちの方が作った人にお金が入るのよ〜」

「つまりバーバラはお金が欲しくて」

「欲しいけどそれは今関係ないのよぉ……」

「えっと、普通に売ってる弓と俺があげた魔力で矢が出る弓だとどっちが便利?」

「当然ダウのかな!」

「それは矢を買うのにお金がかかるでしょ?」

「つまり僕が弓を使うたびにお金が減ってるのかな!」


堂々巡りならまだマシ。そう思いたくなるほど話が行方不明になりそうになる。

違和感に気が付いたのはドロシーであった。

難しい話はバーバラに任せたりすることが多い彼女が随分とこの話題に食いついてきていると。


「ねえ?ダウに構って欲しくてわざとやってない?」


「なななにゃ、なんのことかな??べちゅに最近ビャーバリャがダウ一人占めズルいとか思ってないかな!」


(うっわ、どうしよう……。すげぇ可愛い)


『どうもこうも別に好きにしやがればいいでやがります……』


ロザリンドの悪巧みもバレたところで、バーバラが今回の発見を使ったとある魔道具を作ってみたいかをドロシーに絵を描いてもらいながら説明した。


「実際に色んな所を巡ってる時に思ったのは、私達用の乗り物が欲しかったのよ〜。そうしたら活動範囲も時間も良いことばかりなのよ。でも動くのはどうにかできても止まる仕組みが難しくて……。でも闇属性が遮る力があるって分かって大前進なのよぉ」


(これって魔法で動く馬車。案には蒸気を利用したものや電気でモーターを動かしたりって、もうこれ蒸気自動車というか馬車型EV車だ……)


ブレーキやエンジン等の仕組みを知らないバーバラの設計図はまだ未完成ながらも実現可能レベルまできている。

当然クリアしなければいけないのは動作だけではなく、それだけの出力が可能な魔力に魔核を揃えなければならないし、作りが複雑になる分素材に気を使わなければ壊れやすく、いい素材を使えば高価になってしまう。


「ところでダウは私達と違うのを作ってたけど、今度はどんな凄いのが出来たの?」


期待の眼差しを向けるドロシーに手を横に振りながら3つの魔道具を取り出した。

1つは電気分解をやりやすくする為の魔道具。

2つ目は魔核を複数使って、弾丸精製と弾を空気の力で飛ばすライフル銃。こちらは皆の分含めて色んな種類を作っている。

そして最後のはというと。


「バーバラのムラが出ない方法の逆なんだけど、それを利用して冷たい水からお湯までを自在に出す魔道具で水量調整も可能なんだ」


シャワーヘッドの部分を模した魔道具を手に持ち実演してみせる。

勿論たれ流しや直流だけでなく、シャワーやミストにも変更可能だ。

切り替えは魔法ではなくノズルを捻る仕組みである。


「これさ、どうにか同じのを8個作ったからマルケンさんのお店に置いてもらえないかなって」


家庭だけでなく、冒険者や商人といった街から離れる仕事をしている人にとって、わざわざ川などを探さずとも身体を洗える道具ならば需要があるのではないかとランダウは考えた。


実際にランダウは10日で作ったのではなく、皆が寝静まってからマジカルファーム内に移動し製作や修行をこっそり行っていた。

向こうではおよそ30倍の早さで時間が流れるので、地球では年代を超えた人気のある漫画の部屋を疑似体験しつつ、髪の伸び具合で身体の成長を調べる心積もりもあった。


結果として髪はそんなに伸びず身体の成長は現実世界に準拠しているが、何度もマジカルファーム内で反復した行動は身に付くとが分かってからは毎日皆が起きるギリギリまで向こうで過ごしていた。


「こんな複雑そうなのをよく並行してできたわね」


「それはまた今度ね」


説明が難しく、またタエコから自分と二人っきりになれる時間と空間がある事を言ったら争いが起こる上に、3人とも二人っきりになった時にロザリンドに迫られたら抵抗出来るかと問われ内緒にすることにした。


家を出る前に毛布を被ったレンゲと宥めているビーグがいたので話を聞いてみると、どうやらレンゲが所属していたメンバーは未だにラムドにいるらしく、顔を合わせたくないので引きこもっているそうだ。


「別にレンゲさんは気にしなくてもいいんじゃないかな?」


「そうなのよ〜。何かあったらビーグさんだけじゃなくて私達も力を貸すのよ?」


分かったけどもう少しだけこうしてたいと、毛布の中にビーグを取り込んだので急いで退散する。


「んもう!せめて自分の家でやってほしいわ!」


「それはちょっと同感……」


〜〜〜


(その未成熟な身体しか取り柄が無いのに傷を付けた挙げ句勝手に成長なんかしよって)


「リーダー!最近ぼ〜っとしてますけど大丈夫ですか?」


「ん?ああ。昔のことを思い出してな」


「そう言えばリーダーって、昔は捨てたとか言って名前教えてくれないですけどぉ。そろそろ言ってくださいよ」


そう言われてまた昔のことをまた思い出す彼女。


「やー、アカネちゃん助けてー!」


「おい!お前いい加減女子の胸揉むの止めろ!」


「幼馴染が最近胸を揉ましてくれないのが悪いんスよ」


「揉ましてやったことなんかねー!いっつも後ろから急にしてくるんだろ!あと俺はお前なんかと幼馴染になった覚えねーぞ!ただ家が隣で昔から一緒だっただけだからな!」


「それはどう考えても幼馴染だよアカネちゃん……」


「うっさい!どっちの味方だ!?」


「ま、胸を揉んでその平らな胸が大きくなるように祈ったっスから俺に感謝するっスよ?いつかそれに喜ぶ日が来るっスから」


「そんなわけねーだろバーカ!」


祈りの効果などがある筈はないと分かっていながらも、あの男の慰み者にならず済んだ、足元が見れなくなるほど成長した胸を一瞬見つめ、ため息を1つ付いて俯いて彼女は言葉を振り絞った。


「言いたくない……」


〜〜〜


「おー、助かるよランダウ君。で、おいくらなんだい?」


ランダウは彼の言葉に固まった。

電気分解とシャワーの魔道具をマルケンにも実演して見せ、売れるか聞いたら2つ返事で買い取りたいと言ってきたのだが、作りたいものを作っただけで原価や利益等頭になかったのだ。


(えーと、シャワーヘッドはリサイクルボックスから出来たプラスチックやらを鍛冶と細工で作って、金属はルンシバで売られていたくず鉄からステンレスやらをだし、居酒屋は3割利益で……)


『私は記憶と計算力はネトゲとエロゲしかしてねーダーリンの持ってたゲーミングパソコンよりずっと上でやがります。だから数字を言ってどうしたいかで私が出しやがります』


アレコレ考えながらマルケンのにこやかな笑顔や、仲間達のダウは凄いのにこういう所抜けてるよねと言うヒソヒソ声が焦りを産む。


「えーと、シャワーは大事に使えばかなり長持ち出来るはずですので20万ガロ。電気分解のは……、1つ100万ガロで」


途中から訳が分からなくなり、ランダウなりに強気の値段設定をしたつもりであった。

ちなみに20万ガロとは、総合ギルドで働いている子供達が1ヶ月どうにか過ごしていける金額である。

この世界の大人達はまだ稼いでいるが、本来未知の道具にその額を一括で払うとなるとかなり勇気がいるだろうとランダウは考えた。

ちなみに100万ガロの方は自棄糞で決めた額だ。


「よし買った!後悔しないね?」


「どどど、どういうことかな?」


マルケンの念を押す言葉に何故か1番動揺するロザリンド。

他のミスリルの誓いも意図はわからないでいる。


「いやさ、こんな量の水を少ない魔力で出せるってだけでその3倍でも売れる。しかも水の出る形が変わる上に温度変更可能とか、売る先を選べばそこから更に0が2つ足りない位だね」


「えっ!そんなに高く売れるんですか!?」


「そりゃそうだよ。そもそも安定した魔道具ってだけで価値が高い。西部諸国では見かけないけど、水の供給を魔法で依存している街なんかにこれを持って行ったら戦争が起きるかもね」


シャワーヘッドに込められたランダウの魔力は魔法の熟練度が関係しており、破格の性能となっている。


「うへぇ。もっと高くても良かったのかぁ……」


「ハハッ。これも勉強さ!そういった事を学びたいならうちの店にいつでも働きにおいで」


その後に、シャワーヘッドの追加注文をする可能性があるので準備をしておいて欲しいと頼まれるが、作り過ぎないように釘を刺された。


「数量限定で希少価値を高めるんですね?」


『そういうのには頭が回るでやがりますね』


(タエコだって値付けのこと気が付かなかったじゃん……)


帰り際にこちらでもライフル銃を撃ちたくて仕方ないので、日も落ちかけているが街の外へ行こうと提案しようとしたその時であった。


「テメーこら何処に目ぇ付けてんだ!」


ミスリルの誓いのみならず、その場にいた全員が怒声の方へと目をやると、尻もちをついている女性を見下ろす形で体格のいい男が文句を言っていた。

負けじと女性も言い返すが男性は一切引かない。


「そっちからぶつかって来たんじゃないか!誰が好き好んで男なんかに」

「んだとこのブス!」

「はいそこまでー」


このままだと暴力へと発展しそうになったので止めに入ろうと思った矢先に見知らぬ細身の男性が間に入る。

手には食べかけの焼き鳥を持って。


「お互い気を付けてればぶつからなかった。そしてぶつかって倒れたのは女性。傍から見て僕は悪人はアンタに見えるけど?」


怒りの矛先が止めに入った男性へと向き胸ぐらを掴んだが平然と焼き鳥を食べ終わり、その串で手を刺した。

体格のいい男性は痛がり手を離した瞬間を見計らって女性の手を取り逃げ出した。


「何見てんだコノヤロー!」


バツが悪くなったのか残った男性は周りを威嚇しながら路地裏へと逃げ込む。


「ねね、女の人にブスとか言うあの人どうにかできないかな!」


そう言って弓矢を取りだし追いかけるロザリンドを止めようとしたがすでに遅く、仕方なく後に続いた。

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