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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットエッジュケイションー〜教え教えられ編
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授業風景

「はーい、ここまでで分からないことある人〜?」


ベルズからの特訓から4日目のこと。補修した事によって見た目より広くなった孤児院の1室で、テーブルと椅子をマジカルファームから変換して教室っぽく改装して学校の授業のように勉強を教えているランダウ。


「ラン兄ちゃん!文字なんか読めなくても計算出来なくても強ければ冒険者なれるって!」


声を上げたのはアレンという少年。ランダウの五指炎連弾に1番感動した子供でもある。

勉強の有り難みを知っている者もいれば当然異世界であろうと勉強が嫌いな人は一定数いるし、小細工をひっくり返すような強さが目の前にあれば飛び付くのが当たり前だ。

それが強さに憧れる少年なら尚更。


家庭教師のバイトをしている友達の話を思い出しながらマニュアルをこっそり作って挑んだこの授業。

どうせなら塾講師だったらなと今は会うことの出来ない友達に思いを馳せながら、ランダウなりにこの手の言葉は予想していたので困ってはいない。

だが意外な所から助け舟が出た。


「それは違うかな。僕はダウに会う前から見て強くなったけど、ドロシーやバーバラがいないと何も出来ない自信があるかな!」


「胸張って言える事じゃないわよそれ……」


3人で手分けして行った依頼の中に報酬を誤魔化されて依頼人やメンバーと揉めたことや、明らかに無理な依頼内容に気が付かずに達成出来ず違反金を2人に払わせてしまったことを子供達に聞かせるロザリンド。


「ロザリーが昔のこと覚えているのよぉ!」


(そこ驚くポイントなんだ……)


「うちは一期生で弟子入り制度の被害者」


「何それ?」


「貴方達は知らないのも当然ね。子供に本当は聞かせられる内容じゃないから……」


子供達と一緒に座って聞いていたレンゲが話しだした。レーヴィーは子供に話せる内容でお願いとやんわり伝える。

本来ベテランが若手を育てる制度である弟子入り制度。

それは改革の1年目と言うこともあり不備はそれなりにあった。

その中でも一際問題になったのが孤児や家族に疎まれいる子供を弟子入りさせ、文字もろくに読めないのを良いことに、奴隷とも言える契約を魔法で結ばされる事件が横行し発覚までに半年、解決まで2年を費やすこととなった。


レンゲが所属していたグループは全員その被害者達で構成されている。

現在は弟子入り制度は厳しくなり、契約する場合はギルド立ち入りの元行わなければいけない決まり。


「うちと両親と違う髪色で捨てられ、リーダーは幼馴染の男子と言い争いをした勢いで。うちは師匠となった人を雇った貴族に反撃して一時期指名手配までされた。リーダーは師匠の奥さんの嫉妬を買って、服の下の至る所に火傷や切り傷付けられた。リーダー笑ってたよ、顔と未成熟な身体しか価値の無い身体のお前に大金払ったのが馬鹿らしいって言われたって。皆うちがどうだったか少し知ってるよね?ああなりたい?ビーグみたいな素敵な人もういないよ?」


2人の過去に静まり返る部屋。その沈黙を破ったのは勉強したくないと言っていたアレンであった。


「いやだけど……、勉強つまんないし……」


「なんで勉強つまんないか分かるかいアレン?」


「頭悪いから」


ランダウはその言葉に首を横に振って否定する。多趣味である彼は正直何年もやっているのにセンスのいい友達に1週間で抜かされる趣味もある。

悔しい想いはあるがそれでも好きな気持ちは揺るがない。苦手と嫌いは別物なのを知っているからだ。


「それは違うよアレン。つまらないのは本気でやってないからだ」


「だって!分かんないのに本気なんて!!」


「そう!やってないことは分かんないし、今だって何処が分かんないかも分かんないよね?でも僕が分からない事を聞いたらアレンはそれを教えてくれなかった」


分からないがゲシュタルト崩壊してるのよ〜。と、こちらはランダウから教わったことを着実にモノにしているバーバラ。


「全力で取り組まないと自分の良さも物事の良さも分かんないよ」


「それで聞いても全力でやっても出来なかったらどうすんだよ!」


「そんときは……、諦めよ?」


ガクッと力が抜ける子供達。それじゃあアレンと何が違うのかと不満の声が上がる。


「一所懸命やって出来なかった。だから得意なのを伸ばして仲間をサポートする。これって冒険者に限らず普通じゃない?」


「そうね、ロザリーは私達を振り回すことも多いけどいつだって本気だわ。本気で何も考えて無い時もあるし」


「出来ないなりに頑張るのと、やりたくないからやらないは全然違うモノのよ〜」


「逆にアレンはやりたい事しかやらない人と友達になりたい?」


「いやだ……」


「最近農作業してるけど、力が弱い年下の子達が苦労してたらどうする?」


「そりゃ手伝うよ!」


「そういうこと。でもその子達が私達力仕事嫌だからアレン君だけやってればって言ったら?」


そんな事言わないと他の子達に大ブーイングされて良い子達だなと謝るランダウ。

得意だけど嫌い、苦手だけど好き。そんな事があるのを教えるために、彼は歌が好きなのに下手なのを自覚して人前で歌うのが苦手と言った。


「分かったラン兄ちゃん。でも本気でやる代わりに勉強出来なかったら得意なのを伸ばすの手伝ってくれよ!」


「あったりまえじゃないか!!アレン君だけじゃないぞ!みんなもだからな!」


出来なくても最低限のことは覚えようね?そう宣言して締めくくり、アレンの分からない所を説明しながら他の子にも対応していく。

手が回らない時はバーバラも補助していたのだが今は機能していない。

ギュッと手を強く握りしめ何かに耐えている。


「やばいのよぉ……。ロザリーがああなった理由が分かるのよぉ……」


小声で呟く彼女の異変に気が付いたのはロザリンドとレンゲである。

うちが面倒見るから大丈夫とロザリンドと遅れて気が付いたドロシーとランダウとレーヴィーを制止した。


アレン達に心配されるが、安心させようと笑って対応して部屋を出た。

実際に何も危険は無いのだがランダウは突然の体調不良で心配している。


暫くしてバーバラ達が帰って来た時には授業も一段落していて子供達は心配して駆け寄った。


「大丈夫かな、だってふぁーふぁふ」「だから余計なこと言わないの!」


「おっ、元気に勉強やってるか?」


「母さんが料理作ったから皆で食べようってさ」


バーバラ達に続いて部屋に入ってきたのはリャーギンとビーグである。

子供達が手伝ってくれるので人手は正直足りているが、折角ヤマナからの紹介された仕事でもあるし、勉強して子供達の将来の幅が増えるのは喜ばしい事だと総合ギルドに依頼して一緒に農作業をして今終えたところである。


「ありがとうねランダウ君。またお願いするわね」


「はい!ご飯食べたら4人でキンテのダンジョンについて話したいんですけど大丈夫ですか?」


「ええ、勿論よ」


「うちランダウがダンジョンについてどう考えてるか興味ある」


「のよ〜。レンゲさんの意見も聞いてみたいのよ〜。あと今ダウの話だけ聞いてたら多分無理なのよぉ」


昼食後にミスリルの誓いとレンゲが集まり、モキンの街でどうしてスライム1匹現れなかったかを推測するレンゲ。

その内容はやはり魔力が関わっていると。


「獣人はモンスターとして人間に狩られた過去があるらしい。うちが両親に酷い事されてる時に近所のオバサンが言ってた」


昔は見た目で迫害されてきたのに今自分達が見た目で娘を迫害するなんて。そんな内容である。

ヒト族は獣人だろうとエルフだろうと子供が作れるが、基本的に同種族で子を成すのが当たり前とされてきた。


それに当てはまらないのは人間である。メンデルの法則なんて知らなくとも、髪色や瞳の色が両親祖父母のいずれにも当てはまらない色が出る事を経験的に知っている。

運悪くアルビノの様に色素が薄く銀色の髪になってしまったレンゲは両親から気味が悪がれ、兄弟とも上手く馴染めなかった。


「その言葉を聞いてうちなりにモンスターの事調べた。獣人とモンスターの違いを。そうしてたらたまたまスライムが生まれる瞬間を目にした」


「やっぱりオスとメスのスライムがいるのかな?」


「魔力がグネグネ集まってポンって出てきた」


「そんな話聞いたことないのよ〜」


「まぁでもそうしたら強いモンスターが魔核があるのも、身体の一部が変色するのもある程度説明がつきますね」


「……。」


『ダーリンを何睨んでやがりますか!この!初めてダーリン以外に触れたいって思いやがりましたよ!!』


「つまり光にも色があって虹が見えるように、魔力にも実は色があって、その影響で変色するのが強いモンスターなのよ?」


「うちがそれに行き着くまで何年もかかったのに……。そして気が付いた事に浮かれてたら数日後に騙されて……」



急に話が重くなったのでドロシーがそれとモキンにモンスターがいないのとダンジョンにどう関わるのかを急いで聞いてみる。


「毒の木やそれに影響された植物、そしてフローレンスの両親が作った木がモキンの魔力を吸い取って成長していたとしたら?」


「危険動物のモンスターはそもそも塀で入れないし、いたとしても毒で死んで、スライムのようなのは生まれるには魔力が足りない」


「ディコスさんが見回っていたのにネスカタットで強いモンスターが出たのも、どっかに魔力溜まりみたいなのがあってウルフの番が影響されたのよ?」


「へぇ、じゃあディコスさんが魔法を使いながら見回りしていたらあの強さにならなかったかもしれないのね」


「ちょっと待って!それとダンジョンが関係あるの?」


(日本でダンジョンが出る作品は漫画ゲーム限らずいっぱいある。遺跡とか洞穴にモンスターが住み着いた。神が造った。その世界の理だからとか、そもそもなんであるのかを触れない作品も多数ある。けどつまりこの世界は……)


「やっぱりダンジョンは魔力で出来た生物でモンスターで、壁で作った物に魔力を通せるのは魔核そのものなのか準ずる物だから」


「うちはそう思ってる。やっぱりってことは気が付いてたの?」


「キンテの事をベルズさんに聞いたあとに人がいなくなる条件や、他の生き物や海水が水溜りのようになってる条件、そしてダンジョンの壁が魔力を通す武具になること、そういうのを照らし合わせたらそうかなって……」


実は魔核をマジカルファームで作る際に、魔力結晶と金属が必要と分かり、魔核は魔力と何かが合わさって出来た物ではないかと予想をしていたのだ。

スライムは水と魔力、ゴーレムは鉱物と魔力で出来たモンスターとして仮定した。


そしてダンジョンは異物を吸収する性質を利用したゴミ捨てがあること。

壁は魔力を通せる武具になることを合わせて考えたら、ダンジョンとは食虫植物とゴーレムの合わせたようなモンスターの可能性が浮かんだのだ。

勿論日本での記憶でダンジョンは生き物説の作品が多数有ったのも後押しだが、マジカルファームの事含めてそれは言えない。


「それって証明出来たら大事件じゃないかな?!」


話が難しくて黙っていたロザリンドが叫んだ。

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