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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットフェスティバル〜お祭り騒ぎ編
41/54

ランダウキレかける

2日目の祭り。今日はタエコとのデートである。

傍目からはお一人様であるが、2人にとっては楽しいデートだ。


(タエコは何か欲しいのとか着けたい小物とかある?)


『ダーリンが私に似合うと思ったのでいーでやがります。好きな人の好きな格好してーですから。強くなってカッコいいと褒められたらダーリンだってやる気出やがりますよね?』


(そうだね。強くなってる気がしないけど……。魔法なんてバーバラの1割以下じゃないかな)


『なってるに決まってやがります。私の憶測で良いならレベルアップの効果も言いやがりますよ?』


路地裏に入り声を出して会話するランダウ。たまにこうして話したいとお願いされたのだ。

最初にタエコが話したのは魔力と魔力量である。冒険する前は初めての魔空庫の作りに例えて90リットル程だと仮定した。


魔力は全力で使って15分保たない位。ちなみに蛇口全開で一分で21リットルほどであるので全開の1/4より少し上程度。

それから度重なる魔法の使用を重ねて、初めてのレベルアップ前には約200リットル。

大きめのポリバケツから一般家庭の浴槽程に成長していたらしい。それでも魔力はこの時点では変わらず。


『で、修行時や踊りの練習しやがってた人達の話から推測するに、魔法量は得意属性の魔力の強さに大体比例しやがります。そして魔力の強さでやがりますが、HマイナスからDまでは……、水に例えるなら1回に出せるのが1リットル増えたら次のランクでねーかと思います。ただCマイナスはDから1.5倍、Cはそっから2.25倍と増えていきやがります』


オールCのバーバラとは倍以上の差があったのは薄々感づいていた。

勉強を教えている際に本気で魔法を使ったことがないと言っていたのに威力が段違いであったのだ。


「って事はDプラスからは範囲が広くなっていくんだ」


「そーでやがります。ダーリンが魔核破壊やレベルアップ前はDプラス上位位の強さでやがりますね。ヒデ達が連れてきた踊り子の話から逆算しやがるとですけど」


「へえー。なんか特典でもあったのかな?」


ただ燃えろとかではなく、魔力をどんな風にしてこうしたいか決まっているため無駄がない魔法になっていることには気がついていない。


『それでレベルアップでやがりますけど、他の3人は預かり知らねーですが、ダーリンの身体能力は1レベル毎に1%の補正が掛かってやがりますね』


「待って俺の今の魔力と量は?」


『待ちやがってください。この1%はダーリンの最新の状態に補正がかかるので、3人にこっそりバレねーようにしてる筋トレとかランニングをサボって基礎能力が落ちたら下がりもはえーです』


「握力でいうと、剣を振ってるから保持力は上がってもクラッシュ力やピンチ力は上がんないってこと?」


『流石ダーリンでやがります。いくらレベル上げようともしないことは上がりようねーです。で、魔力と魔力量なんですけど、初のレベルアップ時点で魔力は20リットルと、魔力量は2tからどのくらい増えたと思いやがります?魔力はギリCマイナスで魔力量はCの上でやがります』


「魔力は正直あまり上がってる気がしないけど、せめて25リットルと、量は倍の4t位はあってほしい!」


これはちょっと少なめの自己申告。少なくとも魔力量は倍以上になってると思いつつ保身をかけている。


『魔力は悪くねーですけど魔力量は大分ちげーます。魔力は大体出会った頃のバーバラよりチョイ下、つまりオールCマイナス程度でやがります』


「思ったより悪くない……。バーバラが強すぎるだけか」


『魔力量は、あんま焦らすとあれでやがるのでサクッといいやがります。支笏湖の水量程度でやがります』


「嘘!そんなに?!」


『嘘でやがります。サロマ湖より一回り小さい程度でやがります』


「おー、凄すぎてわけ分かんないや!摩周湖で例えてよ♪でもそれじゃあほぼ無尽蔵に使えるんだね♪どーりでここ1ヶ月色々試しても魔力が尽きなかったはずだよ!どうしてこんなに上がったんだろ?」


複数の魔法を同時に放つ冒険者は少なくない。だがそれは片手ずつ魔法を出すだけがほとんどで、その連射速度と属性の切り替えの速さを鍛えている。

そして何より身体能力を上げる魔法と、その他の魔法は相性が悪い。

体内にとどめておく魔法と、体外に放つ魔法を同時に行える者はあまりいない。

それらを克服する為の修行をみっちり行い、ランダウは魔力の強さはバーバラよりも大分弱いが、使っても中々尽きない魔力量はバーバラ以上だと気が付いていた。


『レベルアップとスキルボーナスでやがります。ここ2ヶ月、何かしながらも魔法を使っては共有ゴミ箱へ入れ、魔力尽きかけたら料理を食べて回復させていたらそうなりやがります。他の人は魔力を一気に回復させるのは高い魔力ポーションを飲むか、魔核に貯めておいた魔力を吸い取るしかねーんですから。魔核に至っては大体ロス率30%でやがりますからダーリンと同じことしやがる人は少ねー筈です』


そして何故か急に背中に温かい感触と鼻孔をくすぐるのは寝る前に感じるタエコの匂い。

首元に手を回され力が入っている。そして、


『ダーリン、私だって成長して色々出来やがるんですから。これならダルくねーです、ふー』


「あひゃああ」


耳元に吐息をかけられ腰が砕け奇声をあげてしい、路地裏とはいえ、かなり人目を集めたが何事もなかったかのようにそこを足早に立ち去った。

海を見下ろせる崖まで来て深呼吸。


「さっきのなに?」


『あれでやがります。超近距離彼女型タエコでやがります。ゲームのキャラというか、アバターと同じサイズでダーリンの身体にのみ触れることが出来るようになりやがったんです。離れて偵察とか出きねーですけど』


「俺にだけ見えたりしないの?」


『今見えてねーなら無理そうでやがります』


そう話すタエコの息遣いが唇に当たり、すぐ目の前にいるんだなと思い唾を飲む。


『一夫多妻制を受け入れてるからって、ダーリンがあの3人と仲良くして嫉妬しねー訳じゃねーです』


「うん」


頷きタエコの肩があると思わしき場所に両手を置き、目を閉じるように言った。

けど後一歩の勇気が出ない。ランダウの首と腰に手が添えられ心臓が跳ね上がった。

それから2分が経過する。よし、するぞと手に力が入る。


「#あっ、料理チートで異世界ハーレム生活してるランダウ君始めまして。名前教えてくれる?シュタイン皇子こと、伊勢ごうさんが設立した組織グレゴリウスが1人藤原ひろかつです。部署は怠惰」


聞こえたのは紛うこと無き日本語である。振り返れば男性が2人いるし、1人は確実にモキンに来た冒険者ギルドの人である。けどそんなことは関係ない。

思考はコイツは俺のファーストキスを邪魔した、ただそれだけである。

それはタエコも同じだ。


「#もしかしてしらばっくれる気?無理無理、春のパン祭りに土用丑の日、しかも高知のよさこいのパクr」

(はぁ!コイツ今なんつった?タエコとのキスを邪魔しただけでもなまらムカついて死刑に値するのによりにもよってYOSAKOIをパクリだと?違いますぅ。リスペクトオマージュインスパイアリスペクトですぅ。528万人にボコられてしまえ!いや、200海里越しておそロシアに拿捕されてしまえこのダホ!牛!ニンニク!!あーもう!何回俺がタエコとキスしたくてこっそりしようと寝るまで待とうとしてるのにいつの間にか寝て悔しい思いしたのか知らねーの?)


この間約1秒である。タエコの思考も似たりよったりなので割愛させてもらう。

ひろかつは反応を見るためにわざと煽ってみたのだが、無表情を装ってはいるのに目が恐ろしく血走っているので理解しているのが丸わかりだ。


「#ひろかつ。そんな言い方だと仮に転生者だとしても味方になってくれないぞ。俺はこいつと同じ転生者で部署は強欲。無理矢理どうこうするつもりはない、だから彼女達と別行動するのを待っていたのだから。まずは話そう」


変装はしているが明らかに声がシュタイン皇子であることが分かり、ランダウ達の頭が少し冷えた。

ここではぐらかした方が面倒だとタエコと結論づけ、日本語で話し合いをすることに。


「それじゃあ昭和からの枝別れか。パラレルワールドや並行宇宙なんてこっちでは呼ぶかな」


「あっ、それはこっちもです。ネットの発音がちょっと違いますね」


「いやいや、情報の波になぞらえてwave。その波に知りたいことを検索するさまを網を投げるみたいだとネットでしょ?」


「こっちはクモの巣上でウェブですよ。ネットワークからのインターネット。そういうのも違うんですね。ところでグレゴリウスの部署って七つの大罪ですか?」


「そう、それが本題でもある。前世の記憶を取り戻した人があるのは渇き。ひろかつは便利な機械を再現したい怠惰、その他にも政策によって出来てしまった人種の格差をなくし、全ての種族と結婚すると息巻いてる色欲のいっぺい」


『ソイツもしかしてヤマナじゃねーですか?』

(タエコのことバレたら面倒だから笑わせないで……)


「その他は若い女に嫉妬していつも怒ってるリケジョ家の……」


「るこだな。1人で2つ兼任してもらってる。こーじ自分は娯楽エンタメを欲してる強欲。シュタイン皇子は無理に推し進める傲慢かな?前世では長いこと純文学が流行った反動で、数十年ファストノベルというライトノベルより簡易な誰でも書ける小説が流行っていてそれが好きだった。異世界転生や不思議な力が芽生えるというやつだ」


あくまでも自分はシュタイン皇子ではないという姿勢を崩さない。

これは彼の好きなエンタメ作品でよくあるシチュエーションの、素人の変装なのに誰も気が付かない。てか声で気づくだろ!というのをやりたかっただけである。


「いざ自分がなってみると不便でしかないってのがわかったけどな。俺達は反省はするけど後悔はしない。けど急ぎすぎたのは確かだ。だから食に余裕が出来れば心に余裕を!それをなんとかしたくてこうじを誘いに来た!」


「すいません!出来ることはもう出し切ったのでお断りさせていただきます!」


『即答でやがりますね』


(なんかちょっと俺のやりたいことと違うかなって)


「……、分かった。モキンでの反省を活かして無理強いはしないことにしてる。ただ気が変わったり、互いの利益になりそうなことがあったら、ギルドにファストノベルあるあると言えばこっちに通じるようにしてある」


「10歳からの独立だけど、俺達のひらがなを見る事、身の危険が迫ること、この2つが記憶を取り戻すのに手っ取り早いから、全員が目的を達成するまで変更するつもりはないから諦らめて。気に入らないならその暴食でどうにかするしかないってこと」


「そうそう、カタログは保留のまんまだから決まったら教えてよ。期限はないから」


思いのほかあっさりと身を引いてくれたので安心して腰を地面に下ろす。

さてさっきの続きをと思ってもタエコは近くにいなさそうなのでゲームを開くと無慈悲な言葉が。


『ダーリンがモタモタしやがるからです。次はダーリンがムードを作ったらしやがりましょう』


(ちっくしょう!!)


『折角ゲーム開いたんですから何かしやがりましょう』


この流れは添い寝の時にあったので期待に胸が高まる。

街に出て何かを買ってきてランダウの自室へと入りイスへと座った。


『うへっ!冬だから乾燥してきたからリップクリーム買ってきたら塗りすぎたでやがります!拭いてーですけど手は嫌だし私は口か1つしかねーです!一体どの口に拭いやがればいいでやがりますか!』


「あのさ」


『もう口がベトベトして喋りたくねーです!ああ何かに拭いてーです!リップクリームだから口に拭いてーです!!あー、何も言わず拭えねーですかね』


タエコは思う存分リップクリームを拭うことが出来た。

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