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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットフェスティバル〜お祭り騒ぎ編
40/54

お祭り

ラムドのギルド関係者がモキンに入って1月が過ぎ、祝賀祭まで後5日。漁師達はモキンに戻り漁を開始した。

タコもカツオも獲れ、ダメ元でカツオを醸しタルに入れたらあっさりと鰹節が完成する。

後はたこ焼き器を作ればたこ焼きを作れる。


レンゲの方は傷跡は大分回復し、髪も生えてきた。

家族の他にレーヴィーや孤児院の皆も集まっている。

そこでビーグは家を建てようと親に相談したがランダウは待ったをかける。


「あのさ、ここの地続きでちょっと土地を買わない?兄さん2人共さ」


「確かに季節関係なく育つならもう少し土地は欲しいなとは話してたんだが……」


「買ったら家を建てれないだろ。国から土地を買うって相当するんだぞ」


ビーグのもっともな意見に頷く面々。ミスリルの誓いには前もって話しているので表情は変わらす。


「そこはどうにかするからさ!騙されたと思って!」


「ビーグとレンゲさんはいいだろうけど、レーヴィーさんはほら、孤児院もあるからこっちに引っ越すって訳にもいかなくてさ。流石に皆住めるだけの家は買えないし」


「ねえ、驚かせようとばかりしないで見せたら?」


「ダウには普段から驚かされてるから普通にしてればびっくりなのよ〜」


「それじゃあ一旦外に出てほしいんだけどいい?」


皆を畑のない広めの空き地に集めて変換を行う。まずは孤児院だ。

モキンの祝賀祭までの2ヶ月、タエコと2人でコツコツと進める事で、家の改築を含めた街の店全体がアンロックされたことによりもっと上のアイテムを手に入れられた。


「まずはこれ!じゃ~ん!!」


全員ランダウの実家に行ったのを見計らい、高級補修材を使って孤児院を綺麗にした、し過ぎたその孤児院を転送枠に入れて出したのだ。


「これはもしかして新しく孤児院用の家を買ったのか?」


子供達はスゲースゲーと喜んでいるが大人達はそうもいかない。

現実と向き合わなければいけないのだから。


『ほら引いてるでやがります。ダーリン止めてってうちが言ったのに笑いながら無理矢理するなんてヒデーでやがります』


(なんでちょっとレンゲさん風に言うんだよ)


『ダーリンあーゆーの好きかなって思ったでやがります』


(普段のタエコが1番好きに決まってるでしょ……)


『……』


(あれ??もしかして俺のためにしてくれたのに否定したから怒った?ごめん)


『ちげーでやがりまひゅ』


「入れば分かるのよ〜」


「リャーギン、なんで魔法袋も持ってないのにこんなでっかい家が出てくるの?どうしてそれについて誰も言わないの?」


「あー、ダウだから」


中に入ると見覚えがあるような作りに違和感を覚えるレーヴィー。

その答えは子供達が1番先にたどり着いた。


「もしかしてラン兄ちゃん修理したの?!」「おー、掃除上手」「これでリャーギンといつでも会える!」


「そうです!僕達ミスリルの誓いが直したんだよ!で、兄さん2人の結婚祝いにはこっち!」


次に取り出すは小屋に見える一軒家。ただしこれはモキンでランダウ達が使っていたのとはグレードが違う。

更に1段階上がっているのだ。

当然自分達のもリフォーム済である。


「あっ、待って下さい!本当に予想してるより上だから気をつけて入った方が……」


「結祝いだって、うち達本当の家族?」


「ああ、兄さんがモタモタしてるからしないだけですぐに結婚したい」


中に入るとレンゲとレーヴィーは仲良く腰を抜かした。

兄2人は驚いてるよりも感心している。

ドミトリやフェイも子供達の面倒を見ながら息子達の新居を見て回る。

入口でへたり込んでいる女性2人をとうしようか困っているその彼氏2人。


「やっぱりうちリーリの夢を見てる。悪いことしてきたのにこんな幸せあるわけない。傷が治るわけないし、ビーグみたいな素敵な人を騙しといてうちのこと愛してくれるなんてない。本当は皆に殺される直前。でもリーダー恨んでないからね」


「そうよね、私みたいな行き遅れに年下の優しい彼氏が出来るなんて。大体日が暮れてから次の日まで休まず出来るなんてリーリの夢じゃないとあり得ないわ」


(レンゲさんもレーヴィーさんもどうしたの?あと聞きたくないこと強制的に聞かされたんだけど)


『リーリの夢は御伽噺でやがります。苦しんで死ぬ直前にいい夢を見る代わりに、魂を食われてしまう悪魔の話しでやがります。大体は理想の男性が現れるとか』


(獏とマッチ売りの少女を合わせた感じか)


「あー、ダウ慣れしてない人にはショックだよね」


「仕方ないのよ〜、ダウ慣れする機会なんてなかったのよ」


「義兄さん達も良かったですね。リーリの夢は理想の男性が現れるって話なんです」


「僕、その話初めて聞いたかな!」


「6歳か7歳の時にドロシーと3人で吟遊詩人の詩で一緒に聞いたのよぉ……」


ランダウはダウ慣れという謎単語から耳と目を逸し、両親にも家を変えないかと聞いたが、息子が3人いなくなって広い家に住むのは寂しいと断られる。


「あの、私達7級以上になったので自宅に帰る制限無くなったんです」


「そうなのよ〜。もし義父さんと義母さんが宜しければ一緒に住みたいです」


「皆がよければ俺もそうしたい」


「僕はダウがいるところが居場所かな♪」


両親はそれを喜んで受け入れた。リャーギンは別に出ていくつもりはないけどと申し出たが、子供達の世話もあるんだから2人きりの時間はなるべく作りなさいとフェイに窘められる。

家族が作った野菜や種をマジカルファームに転送したらどうなるか気になり2個ずつ貰っておく。

こうして祭前の最後の休息は過ぎていった。


祝賀祭当日。この日は朝から人で街は溢れていた。

元モキンの住人の他にもラムドやルンシバからも来ているだけでなく、ミスリルの誓いが巡った町や村からも来ていた。

犯罪履歴さえなければ新しく生まれ変わった街故に人間関係もリセット出来ると触れこんだ。


フィーネとケスオトラ2人国の王から挨拶も終わり、シュタイン第1皇子の挨拶が始まった。


「あれがシュタイン皇子かぁ」


よく見えないので単眼鏡を取り出そうとするランダウ。


「おい!お前よくそんな平然としてられんな!もうすぐなんだぞ!」


「そんなことよりダウに提案があるのよ〜」


「ほら、歌詞の中にちょっと国王の前では憚れる所あるの変えたじゃない?」


仕事終わって女を抱いてと言った欲望丸出しの歌詞を歌うのを嫌がった皆。フローレンスでさえ、この唄を知らない人の前ではアタイでも無理だと言い切る。


「だから前に歌詞変えたじゃん?」


「そこの部分はアタイとランダウで歌おうぜ。その後皆で復唱する」


「むりむりムリムリむ」「ほらシュタイン皇子の挨拶も締めに入った。お前が歌わねーんならアタイも歌わない」


「そこでこの街の被害を最小限に留めた2人の英雄の娘と、この街の復活の兆しに気が付いた冒険者達が祝の場に相応しいことをしてくれるようだ。本当に感謝しかない」


シュタイン皇子は1つ拍手をすると雷が落ちたかと思う程の音が鳴った。

挨拶していた舞台とは別の小さな舞台。そこにヒデ達が乗り整列して、首だけを下に下ろしてピタリと止まる。


「モキンの街復活の祝賀祭に捧げます!」


フローレンスの小さな身体から発したとは思えない大きく澄んだ声、それに合わせて孤児院の子らによる演奏が始まった。


「セイヤ!!」×ミスリルの誓い


「大漁大漁♫」


「大漁!大漁!」×舞台の全員


木材で作った指揮棒を振り、音楽と踊りのペースを揃えるランダウ。

観客は何が起きているかさえ分からずに大半は口を開けて音楽と踊りに飲まれていた。


『ダーリン、そろそろでやがります』


「ソーランソーラン!」×2

「ソーランソーラン!!」×フローレンスとランダウ以外の皆


「はー!どっこいしょー!どっこいしょ!」×2

「どっこいしょー!どっこいしょ!」×フローレンスとランダウ以外の皆


モキンの唄をYOSAKOIにアレンジした、モキンの大漁祭と名付けたこの催し物。

YOSAKOIソーラン祭に参加したことがないランダウが、何も知らない人に教えたにしては十分な出来映えであった。

レーヴィーや、ヒデ達の親は見たことない楽器を操る子供達や民族衣装に身を包み踊っている様を眺めて感動している。


「いやーっ、ハッ!!」×全員


最後にビシッと空手のポーズで決めた。途中間違えた者や踊りがズレていた所はあり、本人達にとっては悔いが残ってしまう。

そんな気持ちを微塵にも感じさせてたまるかというような女性の声が届き、シュタインにも負けない大きな拍手を送った。

その声の内容は途中不健全ではあったが、彼女の拍手は広まり街を揺るがすような大喝采となった。


拍手が収まり全員が整列してお辞儀をして舞台から降りた。

フィーネとケスオトラの王から称賛され祭りは本格的に始まった。

今回ミスリルの誓いは屋台をするつもりはなく、4日間続くお祭りをそれぞれデートすることに。


一人目はドロシー。ランダウが指示してロザリンドが作った浴衣を着て下駄を履いている。

彼女の方から手を繋いで歩きたいと申し出たのは大きな進歩であろう。しかも指を絡め合う恋人繋ぎだ。


「今タエコさんなにしてるの?」


「流石にいたたまれなくて籠もってるよ」

(本当にタエコには申し訳ない…。)


食べ歩いたり、クジで景品が当たるゲームをして遊んだりと祭りを満喫する2人。

シュタインは輪投げや射的も流行らせたかったが、魔法のある世界で受け入れられず、型抜きやスマートボールといった遊びを作っていた。

当然この祝賀祭にも持ち込んでいる。


どちらからという訳ではなくなんとなく海の方へと歩いていく。

浜辺に置かれているベンチに腰をかけ、波の音と遠くから聞こえる喧騒をBGMに海を眺めている。


「私ね、ランダウとキスするのがイヤってわけじゃないの」


「無理しなくていいよ。俺いくらでも待つから」


「そうやって優しいから甘えちゃうんだよね。昔モンスターに襲われて助けてくれた冒険者に憧れたって話したじゃない?」


ミスリルの誓い3人には仲の良い年上の男の子がいた。当時10歳の冒険者成り立てで、3人を外へ連れ出し自分の戦う姿を見せたかったのだ。

その男の子にドロシーが1番懐いており、すぐ後をいつも歩いていた。


「そこにゴブリンの亜種が現れ襲われて、その人は一目散に逃げたの。私を押しのけて、ね。そのゴブリンはよろけた私を押し倒して、バーバラやロザリーもどうにかしようとしてくれたんだけどビクともしなかった。この後どうなるか子供でもわかったわ。でもそんな時女性だけの4人パーティが颯爽と現れて槍で一突きして倒したの」


それ以来異性に触れられるのが苦手で、女性にいい格好をしようとする男が嫌いになったと話す。

その女性冒険者達も男は皆オークかゴブリンだと思え、口ではなんと言っても身体目当てで嘘つきばっかりだと教えたのも後押しとなる。


「でもダウはちょっとやらしいし、すぐに綺麗な女の人見ると鼻広げるけど、私のこと思って優しくしてくれる」


そんな癖があったのかと頬をかくランダウ。

突如胸に顔を埋められ抱きしめてよいのか困惑する。


「バーバラにロザリーに、そしてタエコさん。あのー、だから、ごめん上手く言えないや」


上目遣いで見つめるドロシーは、自分の唇を人差し指と中指で触り、それをランダウの唇に当てた。


「戻ろ?またデートしようね?」

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