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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットマネー〜借金返済編
4/54

疲労困憊

「畜生!このままじゃ今日も収支ゼロじゃないか!」


ラムドから東に出た近郊、ピオラ平原(初心者向けの狩場)で3匹目となるスモールウルフの牙を抜きつつ叫んだ。

薬草5束とブルースライムの核1つで5百ガロずつで4千ガロだ。

夕方に近くなると涼しくなり、腐る心配が減るので首を落として血抜きをしている。

これで毛皮を売ると食事代になるのだ。


ブルースライムの核は砕いて薬草等と混ぜ合わせると低級の傷ポーションになり、その他モンスターは魔核持ち、または魔石持ちと言われる上位種もいる。それらは多岐に渡る使いみちがあり、それを売ればいいお金になる。


(今まで気にならなかったけど、このブルースライムの核って壊したくなる時あるんだよなぁ。今はお金ぎりぎりだからしないけど……)


前世の記憶からサバイバル知識もあり、新しく覚えたことはゲームのメモシステムを使ってこの世界の魔物に対応自体は出来ている。

駆け出し亭の食堂にスモールウルフの肉を持っていくと格安でおかずにしてくれる(美味しくはない)のでぎりぎり困っていない。


「そのうち武器を新調をしなきゃいけないけど現状厳しいんだよなぁ」


ここ15日の活動を思い出しながら流れ出る血を見つめるランダウ。


活動初日に子供用の剣と解体用のナイフ、そして革の防具を買い金貨5枚を早速失った。(しかも全て中古)

意気揚々と受付のお姉さん曰く簡単なスモールウルフやブルースライム討伐しながら薬草採取。

薬草は前にリャーギンから教わっているので見分けも簡単だ。


「早速スモールウルフを見つけた!幸先いいぞぉ♪」


と、思ったら後ろから4人が駆け抜けて獲物を横取りされた。

文句を言おうとしたら案の定というか、やっぱりヒデ達だ。

あれこれイチャモンやら絡まれるけど無視だ無視と思い狩場を変えることに。


行く先々で邪魔をされつつ馬鹿にもされる。流石にこれは腹が立つ。

けど経歴も長くてマジョリティでもあるヒデを訴えたところでこっちの立場が悪くなるのは分かる。


揉め事を起こすのも良くないと割り切り森の中まで入り撒くことに成功した。

コイツらと宿が違うってだけはラッキーだったとしみじみ思う。


「こちとら高校時代サバゲーやってたこともあるんだぞっと」


木の枝を切ったり生い茂った葉を身に纏いながら薬草採取をこなす。

無我夢中で13束集めた頃に、風もないのにカサカサと葉っぱが動くのを感じ剣を抜く。

屈みながら一歩、また一歩と近づいて行くとブルースライムが現れた。


スライムの身体自体が消化液ともなるので武器を使うと傷んでしまう。

向こうもランダウの存在を確認したのか警戒しつつも距離を縮めてくる。

丁度中間地点に魔力を注ぎ準備をした。

今まさに罠へかかったブルースライムは地面から突き出た土の槍によってピンポン玉程の大きさの核が体外へと排出された。


「やっぱ初戦闘はスライムだな。でも毒スライムよりの見た目は減点って所だ」


苦し紛れに軽口を叩いているが既にランダウは実家の近くでブルースライムを倒している。けどそれは数えないことにした。

そうして1日かけての活動は次の日身体を痛めてトントン。その後も良くて5千ガル程度。

このままじゃヤバいと思い、自分の能力でこの世界では秀でてるモノを考えた。

それは教養である。バイト経験があって接客も出来るし計算にはそこそこ自信もある。


なので商業ギルドの依頼を探して店番の面接までこぎつけた。

面接する人の名前はマルケン。恰幅のいい体型をしていて朗らかそうである。

隣街へ商品の仕入れる時に店番をする人手が必要だという。


「うーん。君は仲間からの評判も良くないからね、いつもの子に頼もうと思ってるんだよね。受付の彼女の顔を潰すわけにはいかないからこうやって面接はするけどね」


その位の根回しはアイツらだったらするだろうと思っていた。

ランダウは無策にただここに来たわけじゃない。

自分の計算能力を試させ、メモシステムも使った記憶力や言葉遣いに、先入れ先出し法等自分は使える人間だとアピールした。


以外と思うほどにあっさりと合格してマルケンの贔屓となれた。

お客がいない間はフェイスアップや簡単な掃除をしつつもこっそりとゲームをしている。

たまに一緒になるロバートという少年と仲良くもなれた。

彼はランクアップが遅くなる代わりに、マルケンの仕事を手伝いながら仕事のノウハウを教えて貰っていて、いずれ独り立ちするのが夢だ。


イベントを進める余裕は無いからただひたすらに畑を綺麗にして農場をやる、そして店を開けて閉店したら釣りをする、たまにダンジョンへ行きつつレベルを上げる、寝る前に鍛冶や錬金調合とを行いスキルを上げも忘れずに行いアイテムを増やしていた。


そして仕事が終わり宿へと帰った夜にはイベントを。店の規模がメインストーリーの進み具合に似つかわしく無いくらい大きくなり、利益もそこそこ出ている。

けど借金はまだ2割も返せていない。店を経営してる時は出来ることが少なく、増えたアイテムを見ながら倉庫整理が楽しみになっている。


「シリーズ恒例だけど農場にどうして丸太や石がこんな溢れるんだよ。売っても大したお金にならないけど中盤には足りなくなる……。開放されてないけどそのうち納屋を建てたり家畜小屋も作りたいしっと新キャラのアゲハか、アリーとは別のベクトルで可愛いな」


『おーっす!ここが今人気の隠れ商店だね♪』

『いらっしゃい、可愛いお客さん♪ゆっくりと見てくれよ』

『カランカラーン』

『ダルいの我慢してきたのに……。やっぱり元気な方が好きなんだ……』


修羅場イベント。こんなことは今までのシリーズには無かった事であり、目の前で泣きそうな声を出してる様に感じたランダウは本気で焦る。

どうにか誤解も解け一息ついて思った。

マジカルファーム4はシリーズ最高のボリュームと謳っていたし、生活が落ち着くまではメインストーリーを進めるのは辞めようと。

昨日のゲームを思い出した所で我にかえる。


「よし、血抜きと解体も終わりっと、狼の解体も慣れてきたな。帰りに何かモンスターが出てくればいいんだけどなぁ」


ふと足元に目をやると薬草以外の葉が色々と生い茂っているのに気が付いた。

だが、そんなことは当然であり、ただ生活の為の薬草以外は意識から外れていたのだ。


「これはよもぎにニリンソウまであるぞ!よく見ればイヌサフランに鈴蘭や彼岸花って、植生どうなってるんだ?」


まあ異世界だし、見た目だけ似てて別物かもしれない。

そう思いつつニリンソウに手を伸ばす。

スモールウルフの肉をこれで味付けすれば良くなるかもしれないと思ったランダウは、いつもだったら自分用の一食分しか取らないスモールウルフの肉を、可食部分は全て魔空虚へと入れた。

前世の知識を活かして、袋に入れ冷やした上、魔法で空気を抜き真空パック擬きにするのもニリンソウを風を当てまくり乾かすのも忘れない。


足早にギルドへ行き換金を済ませ駆け出し亭の厨房へと顔を出した。

そして調理担当の40歳前後大柄な男性ベルズさんにニリンソウでの臭み取りや他の物での味付けを試したいと言ったら乗り気な返事が帰ってきた。


「当たり前だろ?スモールウルフで成功したら他の肉にだって試せる」


「これってお金になります?」


「まだやめときな。せめて何かのランクが7……、いや6級になってからじゃないと有力者に横取りされて終わりさ。代わりに10日間飯代タダにしてやるよ。2食分」


「いいんですか?それにまだ煮込んでる途中なのに?」


「匂いで分かる。こりゃ美味そうだ♪その代わり勝手に広めんなよ?」


拳をぶつけ合いニヤリと笑い合う2人。同世代より年上とのやり取りが落ち着くってどうなんだろう?

そう思わなくもないけど味方がいないので仕方ないと言い訳をする。

そういう所が総合ギルドで浮いてる理由だと気がついていない。

ベルズ以外の人とも試食と言う名の食事会をすると中々美味しい。


そこへ2つのパーティーが宿へと帰還した。

1つは女の子3人だけで組んだパーティー。初日にギルドのお姉さんにお辞儀をしたらサイテーと言った女の子がいる。

もう1つは男子2人の女子2人のどう見てもリア充パーティー。


「味方か……。ベルズさん、まだ肉はいっぱいあるので僕の奢りであのパーティーに」

「やっぱり苦労してんだね。よし!分かった!」


2階にある自分の部屋へとゆっくりと歩きながら反応を伺ってみると最悪ではない程度だ。

男2人はランダウからと言ったたけで拒否感を示し、いらないと付き返した。

ウェイトレスさんが喜んでそれを下げ食べて美味しそうにしてくれてるだけマシだと思うことに。


部屋へ入りゲームをしようと思うも、慣れない事をして疲れたし、バーであちらのお客様からですみたいだと気が付いて恥ずかしくなる。

ベッドの上で足をバタバタしなかったのはせめてもの抵抗だ。

よし、気分を変えて今度こそゲームでもやろうと思ったらドアをノックする音。


ドアを開けるとそこに居たのは総合ギルドへ行った初日、ランダウにサイテーと言った女の子だ。

お礼を言われ、自分達だけじゃなく男もいるパーティーに差し入れした事によって女好きの疑いは晴れ謝られた。


味付けは企業秘密と言ったらパーティーに誘われ、内心ガッツポーズ。

(改めて話してみると明るく優しい女子じゃないか。心の中でサイテー女とか呼んでごめん)


『やっぱり元気な女の子が好きなんだ……』


脳内に再生されたアリーの声に硬直する。

そうだ、コイツは俺をサイテーと言ったじゃないか!

謝ったからって、いや。俺にはアリーがいるしと、人と関わらなくなり過ぎたせいでダメ人間の思考へと陥っていた。


「別に綺麗な女性は好きだよ、男だしね。だから君の言う安心はある意味では間違いだ。ただ俺は道楽でやってないぞ、君達位頑張っているんだぞって行動で示したかったんだ。まあ秘密とは言え、今度近くの森で一緒になってやり方見て覚えられるのは仕方ないかな」


本人的にはかなり気取って語ったつもりだが、実際はキョドって捲くしたてただけだ。

そんな対応した彼を怒ることもなく、分かったわとだけ言って部屋へと戻っていく。

そしてランダウはというと。


「何やってんだよ俺!折角のチャンスをさ!肉が美味く食べれるだけでお金は入んないんだぞ!」


現実逃避をするためにゲームを開き、自分でもくだらないと思いつつも、関浩二が子供の時に友達と話したある言葉を言っていた。


「あーあ。ゲームのお金が現実になればなぁ」

『了解しました10:1を開始します。対象ガロ』


目の前の画面に現れた謎の文字に驚きつつも心が踊るランダウは、まずは試しと操作し始める。

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