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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットフェスティバル〜お祭り騒ぎ編
39/54

医療行為

「ごうさん。戻りました」


「やっぱり引っ掛かんなかったっしょ?俺のデッドエンドに突っ込みなかったし」


「引っ掛かるも何も日本語話してたぞ、客寄せパンダって。頭の回転だってこの世界の10歳とは思えない。そもそも前世だってお前それデッドエンドじゃん()なんてwaveでしか見たことないし」


「そんな言い回しするって事は時代が違うのであろう。土用丑の日といい、驪鋺摩嵎做擂りおんまぐなーるだって我達より結構前の産まれだろ?広至か万保か、もしかしたらもっと前の久化かもしれない」


「その名前は言わないでくださいって。ほんと2121年以降に産まれたかったです。後5年遅く産まれれば……。女の名前じゃないでしょ」


「久化って第二次世界大戦?!何百年前のこと?」


「その戦争は昭和だって、久化はその後。アンタ実は記憶戻ってないんじゃない?」


「いやいや、近代史とか選択しないと詳しくないって。っても世界三大祭の名前は偶然じゃないでしょ?」


「世界三大祭に認定は令和だが、始まりは昭和だと記憶している」


「も一回調べて来ますよ」


「お前だけなら不安だから我も行こう」


「なんで今日はそんな話し方してるんですか?」


「新たな転生者を迎え入れるリーダーっぽいかなって、ファストノベルあるある。てか俺皇子だから普通に偉いし」


〜〜〜


(そう言えばランダウの記憶を遡ってもカサブタなんて作ったことないな)


『そりゃ子供でも簡単に使える回復魔法がありやがればカサブタなることなんてねーです。基本的にロウフリアで不調は完治、しなないように処置、そのまま、死亡の4つでやがります』


カサブタだけでなく新陳代謝について説明をしていくが、バーバラ以外は理解をしていない。


「まっ、ダウなら試せれば治せる見込みあんだろ?とりあえず良かったわ。ちょっとヤマナにお礼と唐揚げ貰ってくる」


少しの間気まずい沈黙が訪れた。声を出すのが辛い兄の彼女に対してかける言葉が見つからない。

レンゲさんは、そう言おうとした瞬間、後ろからヤマナの声が響いた。


「兄弟!何してんスか!!!」


急いで振り返るとビーグはなんと唐揚げ用の油をグラスに掬い手にかけていた。

あまりの熱さに手を振ったら顔にもかかり、苦悶の表情と声を出している。


「ビーグ兄さん!何してんの!」


「ほんと何考えてるの?!」


「何、考えって、レンゲのこと、しか頭にないけど?ほら、声出て良かった、じゃん。か、細い声も好き、だけどレンゲはやっぱり、その声だよ」


やせ我慢をしながらレンゲに話しかけるビーグ。

そしてランダウを真っ直ぐに見つめると。


「人で、やるのが、1番だろ?治んなきゃ、レンゲと、お揃いだぁ」「バカ!うちのは自業自得だもん。なんでビーグが!」


有無を言わさずバーバラが水魔法を頭からかけようとしたが、熱した油にそれは危ないと判断して魔空庫から布を取り出して即座に被せる。

嫌がるビーグを踏ん張じって応急処置をし、異変に気が付いたシュート達にも説明をしたらこってりと絞られ、後はどうするかだ。

後片付けをロバートに押し付けちゃっかりヤマナもいる。


「ダウの向こう見ずなとこは義兄さんからして同じなのね」


「そこまで出来るなら義兄さんが治したり出来ないかな?」


ロザリンドの提案は意味不明であったが、ミスリルの誓いは理解を示した。


「バーバラに勉強教えたように俺が兄さんに火傷痕の治し方教えるってこと?」


「なんでそんな回りくどいことするのよ〜?」


「うちそれが出来るならビーグに治して欲しい。でも治すのは先にビーグにして」


声も元通りになり、ランダウから魔道具を返してもらい、昔の姿に見えるようになると元気になったレンゲ。

でもそれは根本的な解決にはならない。


「分かりましたけど、治すときは魔道具も隠してるのも外さないと駄目ですよ?じゃないと感覚が」


「ならいい。ビーグにうちの醜い姿見られるならこのままで」「見られたくないなら俺の目を潰す。そしてダウにレンゲを治してもらう」


本気でやりかねない。ランダウの兄であること、さっきの無謀な行動を鑑みるにこれ以上グズったらやると見たほうがいいとここにいる皆は目で通じ合った。


「けど火傷痕の治療となるときっとかなりの魔力が……」


「大丈夫だって、実はこう見えて子供の頃は国に仕える魔法使い目指してたんだぜ?実は今でも魔法は毎日使ってるし、なんだか最近魔力量が上がった気がするんだ」


「初めて聞いたよ。そうな」「うち知ってたよ」


ビーグが自慢していた弟でも知らなかったビーグを知っていたことでドヤ顔をしているレンゲ。

今もストールとフードで隠しているが、それでも分かるものがある。


(となると……、もしかしたら兄さんの無属性の魔法は熟練度が上がってるかもしれない。下手したらレベル上げしてる俺よりも効果が高いかも)


『属性とか熟練度関係なしでビーグに教えやがりましょう。もしかしたら顔以外も火傷痕あるかもしれねーですから』


「まずは兄さんに説明しながら魔法使うね。痛かったりしたら言ってよ」


「ああ、レンゲに関わる事だから細かく言うぞ」


そうしてランダウは魔空庫を作るとき以外で初めて全力で魔法を使う。

瞬間的に込められる最大魔力から更に注ぎ込み威力を高める。バーバラとの実験で3倍までは高められるが、それ以上だと効果はないのに、使用した際に身体に負荷がかかることが判明した。


その3倍まで高めた状態を維持しながらランダウの説明は聞きかじった知識と、タエコからの情報を織り交ぜて話したので分かりにくかったであろうが、何度も質問してビーグなりに理解をしようとしている。


「これ痛くないけど蟻が手の中を走り回ってる。かゆいかゆい」


「兄さん触ったら駄目だよ。ほらレンゲさんの為に我慢」


使い始めてからすぐに来た痒みに耐えること7分。赤く水ぶくれになっている手が少しだけ白くなり、暫くして水ぶくれが破けた。

それから更に数分後、破けた水ぶくれはささくれのようになっていきぽろりと取れ、後は傷口を塞ぐ回復魔法と同じ様に治る。


「よし!範囲は狭いけど一発で成功。ホント上手くいってよかったよ。兄さん、次からは考えて行動してね。時間経っても痛みがないならレンゲさんにやってみてよ」


成功した嬉しさと、魔法による希望が見えて2重に嬉しいランダウ。

瞬間最大魔力から3倍までの所要時間は約10秒。それを10分以上続けてもまだ余裕がある。


「なあ、この痒みはどうにかならないのか?」


「そんなことよりブローチ外さないとダメ?」


「俺を騙すのが嫌で組織を抜け出すのに受けたんだろ?頼むから俺にありのままのレンゲを見せてくれないか」


ゆったりとブローチを外そうとするビーグを止めたいレンゲ。思い出すのは昨日の夜追いかけてくれたこと、ノベルに殴られながらも抵抗せずに自分だけを見て本当の気持ちを聞き出してくれたこと。いなくなった後も好きな気持ちは変わらなかったと言ってくれたこと、この顔なのに抱きしめてキスをしてくれたこと、それらを思い出し覚悟を決めた。


どんな姿でもレンゲはレンゲだ。そう言って顎に手をやり魔法を使い始め、他の皆は背を向け輪を作り、見ないように見せないように壁になった。

ランダウから聞いた事をゆっくりと思い出し、込める魔力を上げていく。


「うぅ、なんだかビーグの温かいの(魔力)がうちの中に入ってる」


「痛いとこない?」


「ううん。むしろビーグにうちの身体の中を触られてるみたいで落ち着く」


「もう少し魔力上げるよ」


「ひゃあん!そんなに強くはダメ、うち変になる。もっとゆっくり優しく」


『流石ダーリンの兄でやがります。なんだかやること全ていかがわしい感じです。きっとロウフリア初、大人のお医者さんごっこでやがりますよ』


(ごっことか言わないでよ。確かに兄さん医者じゃないけどさ。どちらかと言うならレンゲさんに問題が……。ほらドロシーなんて耳まで真っ赤だよ)


「あそこの家から出てくるのリャーギン義兄さんとレーヴィーさんなのよ〜」


あそこの家とは復興を担うミスリルの誓いに与えられたコテージである。

人数分用意されており、昨日から手伝いに来てもらってる家族や孤児院の子供達にも泊まるように言っておいた。

そしてランダウは寝れない程忙しいのを予想して兄2人には自分のコテージを使うように説明してある。


『ダーリン。もしかして本当にいかがわしいのは』

(やめて!仲良くても、仲が良いからこそ生々しい話しは聞きたくない!曖昧なままで終わらせて!)


「うっわ。レーヴィーさん幸せそうかな♪義兄さんも幸せそうだけど隈が凄いことになってるかな」


そんな話をしていると、とうとうビーグの魔力が尽きた。

次はうちがビーグを治すと傷が付いていない左手を、ヤケドした所に重ねる。


「あっ、ランダウはうちとビーグの魔道具に魔力入れてくれる?」


「いいですけどレンゲさん喉治ってますよね?」


「これ2つとも魔力ないと作動しないの。常時発動だから1日で切れる。うちの魔力ビーグに全部使いたい」


つまりはそういうことだろう。日に一回魔力を補充しないとレンゲの姿が変わって見えないというのなら、昨日は補充していたという事実。


恐らくは実家の料理を食べると体力や魔力が回復するだろうと睨んだランダウは、ビーグにレンゲを実家に連れて行って暮らしたらどうかと提案する。


「いや、いきなりそんなこと、レンゲだって……、なあ?」


「うちビーグと一緒に住む」


「はい決定なのよ〜」


「どうせなら新しく家建てたら?畑だって順調だしチーズもシュートさんと定期契約してるんでしょ?」


「ビールもこれからじゃんじゃん売るッスよ!」


「そうだな、兄さんだって結婚するだろうし、家を建てるのも悪くないか」


「ダウ、なんだか僕具合悪い気がするから治してくれないかな?」『ダーリン、タイツだけじゃ脚がさみーでやがります。仕方ねーんでダーリンの頭乗せていいでやがります』


「ダウどうしたのよ〜」


大きな氷球を作っていたが、ランダウの様子が変で一時魔力を止めたバーバラ。


「いや、タエコもロザリーと似たようなこと言ったから面白くて」


「へえ、タエコさんってロザリーっぽいんだ」


『もう立ち直れねーです……』

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