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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットフェスティバル〜お祭り騒ぎ編
38/54

かり

案の定人は全く来なかった。町巡りの効果もなさそうである。

いるのは国からの派遣で来た人ばかり。

ミスリルの誓いの行動はまず1つ。ここで過ごしても問題ないことの証明。


「僕は言われたのを作れば良いのかな?」


「うん。布は1ヶ月の間にいっぱい集めたから沢山使って。出来たら呼びたい人がいるから」


「バーバラ」


「わかってるのよドロシー」


『ダーリン、ビーがまた見てやがります』


「おう!ネスカタットで活躍したボウズ共!こういった訳有の場所は訳有の奴等に仕事回ってくんのよ。最近入った若え衆が気になってるみたいだから1つなんかくれ!」


「ありがとうございます!シュタイン皇子から業者の人は3割引きにするように言われてます」


今話しかけてきたのはネスカタットで建築ギルドの正規職員をしている人でドワーフだ。

ある程度マニュアル通りにすれば出来る冒険者ギルドと違って、建築は職人としての知識等が問われるため必ず正規職員がいる規定となっている。


「ビーは新入りだが働きもんなんだけど、喉やら色々ヤラれて1人での買い物が苦手でな、良く近くまで行ってたらしいんだ。冷やかしだと思って気を悪くしたらスマン!まぁノベルがそう言ってただけなんだが」


ガッハッハと豪快に笑うドワーフを見てビーの警戒心を少し下げる面々。


それから1週間が経ったが一般の人はちらほらとしか来ない。

代わりにネスカタットの建築ギルドの人達がなんともない報告を受け、今度はラムドのギルドがモキン入りする。

こうなるとネスカタットの人達は村へと戻るので、明日の夜に宴会を開くことに。


「という訳なんだよ兄さん達!シュートさんにも連絡したし、エーホーとか色んな食べ物売るし、近くの町にも声かけてくれるんだよぉ。ドワーフいるからビール売るのに最適だからさ、お願いだから手伝って!!」


「ダウ。それなら俺がビール売るの手伝うよ、ヤマナも呼んでさ。兄さんは孤児院の皆とか管理人さん誘って遊んで来なよ」


「俺だって手伝うって」


「いいからさ、俺に遠慮される方が嫌だかんな」


「すまんビーグ」


「あと借りを返して貰ってる人を呼んで完成度見ないとなぁ」


次の日の夜モキンでのこと。


「ほら!そこでピンヤン3!はいオッケー」


「おいランダウ。感謝してるし悪いとも思ってるけど、これで借りは返したからな?」


「これまだリハーサルにもなってないよ?本番は復興が終わってからのケスオトラ王が来る祝賀祭でやるから。演奏と指揮は任せて。歌は今歌ってたフローレンスさんの他にもバーバラとドロシーの役目だし」


「なっ、聞いてねーし!シャレになってねーぞおい」


王の前での披露という重大な事を今更聞かされた総合ギルドのメンバー。

すでにお金は前払いしていて、ニリンソウや、マルケンが依頼を出した植物を集める依頼などそれらのおかげで借金が返せた者も少なくない。


「ちゃんとお金は払ってるしいいじゃないか。こんなに呼んでくれて正直嬉しい」


ヒデ達4人と最悪自分も踊ろうかと考えていたが、男女合わせて17人も集まった。

支援金を使って総合ギルドの人に音楽に合わせた踊りを覚えてもらっている。

見たことがない催し物があれば集客も見込めるだろうとの計算。


しかも練習と称して建築ギルドの皆に見せて評判を伺っている。

ロバートがラムドでこっそり買い物客に、総合ギルドのメンバーが何やら面白いことをモキンでするらしいと噂を広めていた。

結果ヒデ達の親や親戚が集まって応援してる様はさながら学園祭のようである。


「キャー!あの右から2番目の木の板振ってる男の子すっごいカワイイ!やっぱり私のランダウ君は見込んだ通りだわ!!あの叩く楽器とか吹いてる子達もすっごい好み♪」


「エアトンさん。僕貴女が捕まえられるの見たくないからね?」


ベルズとエアトンが見ている音楽隊は孤児院の子供達である。鳴子以外の楽器はマジカルファームから。

ロザリンド作のゴブリンレザーをお揃いで着ていて、胸の所には色違いの円が5つ。

中央にランダウの髪色の茶色。そしてそれを取り囲むように折り重なった4つの円。

これはロザリンドが1人て考えたミスリルの誓いのロゴマークである。


「それに本番はこの鳴子持ってやるからね。考えようによっては王様が見てる前で踊るなんて凄いことだよ?」


「どう考えても凄いことだよ!お前もしかしてバカか!」


「おーい、ダウ準備出来たぞ!って兄さんどこ行ったんだろうな?孤児院の皆は演奏終わって母さんが面倒みてるけど」


「ほら、夜の海見ながらデートじゃない?ネスカタットから来た皆さーん!今日はミスリルの誓いがやってる屋台は無料でーす!隣のは有料ですけど料金以上の満足は保障しまーす!!」


「ボウズ!そこまで言うならそのビールとやらをまず貰おうか。この男がボウズが昨日言っていた兄貴だな?」「ほらビーちゃん行こ?昨日からあの子のお兄さんの屋台来るって気にしてたよね?」「ノベル!すぐに触ろうとするな!お主それでネスカタットに来たんだろ?」


グワっと屋台に集まってきた建築ギルドの人達。実際はそうでない者もいるが、まずは食べた感想を広めてもらうのが目的なので気にしない。


仕事終わりに無料で美味しい物が食べられる。その影響は凄まじく、熱気に包まれていた。

2つ隣のシュートとフローレンスとの屋台は順調で、息があっている。

ピザことエーホーとパルバットである。

が、隣のヤマナとビーグがやってる唐揚げと焼き鳥とビールの屋台の様子が変だと気が付いたランダウは、マルケンさんに海が開放されると作ることが出来る、固形石鹸の作り方と引き換えに来てもらったロバートに店を代わってもらい様子を見に行く。

他国では固形石鹸は売られているが、ラムドまで来るには値段が倍以上になるので自作出来るのはかなりの強みになる。


「さ、サリゥ」


「兄さん?」


作業着にフードを被り、ストールの様な物を顔に巻いたビーと呼ばれている人を見て、かつての彼女の名前を呼んだ。


〈な、なんでうちのことわかるの?まさか……〉


意識しないと聞き逃しそうなほど小さく掠れた声。


「コイツなに?ビーちゃん知り合い?」


この青年はノベル。少し思い込みが激しく、日本でいうストーカーを何度もやらかして街を追われた人間である。

そんなノベルに構うことなくビーグは捲し立てる。


「当たり前だよホラ!サリゥがなんと思おうとも俺の気持ちは変わんない。……、そんなの関係ない!やり直せばいいだろそんなの!……、今だってあの時と何一つかわらず」

「待って兄さん。この人本当にサリゥさんなのはわかったけど1人でどうしたの?」


サリゥはビーグに近づき首元に手をやるとブローチを外してランダウへと手渡した。

すると今度はランダウがおかしくなる。


「あれ?サリゥさんいつの間に着替えたの?どうして兄さんにあんなことを?え?サリゥさんのブローチも持てばいいの?」


1人で話しているランダウを気にすることなくビーグは何も変わらずにサリゥ(仮)に詰め寄る。


「ほら、顔を隠してもその綺麗な瞳はサリゥそのものだ。いや、あの頃より綺麗だよ」


「お前さっきからおかしいぞ?」


ビーグとの間にノベルが割り込み喧嘩腰になるがサリゥが止めに入った。


〈私が綺麗?こんなのでも?〉


フードとストールを取ると現れたのは、酷い火傷痕で髪は剥げて、顔中ケロイドで覆われていた。

仕組みに気が付いたランダウはブローチを魔空庫に入れて今のサリゥの姿を見て驚く。

何しろ火傷だけでなく耳も潰れているし、よく見ると右手にも傷がいっぱいある。


〈だから忘れていいよって言ったのに。行こノベル、人気のないとこへ〉


腕を組み、抱きついて町外れへと向かって駆けて行く2人。

その様子を見た後力なく跪き頭を垂れている。


「今の姿でも好きだし綺麗に決まってるだろ……。でも選んだのは俺じゃないんだな……」


それは違う、今なら分かる。何故自分の名前を知っていたのかを。

ビーグ兄さんが話したのを覚えていたのだ。

特徴とダウという名前からネスカタットでランダウかもしれないと呟いたのをロザリーが聞いたのだと。


そしてビーグ兄さんが着けていたブローチはサリゥさんの姿が変わって見える魔道具。

きっとサリゥさんが着けていたのは心の声か何かをブローチを通して届ける魔道具。

声の魔道具はあれだけだとなんの意味もないはず。それなのに今も持っていて、朝から準備していた兄さんがいるのを分かってたはず。それなのに来たのは今も未練があるに違いない。

まずは兄を立たせなければ。そう考えたランダウ。


「兄さ」「なーにやってるんスか兄弟!!」


落ち込んでいるビーグの尻を蹴っ飛ばすヤマナ。


「行け!走れ!!俺でもあの娘の気持ちはわかるッスよ!ここで追いかけなきゃビーグは男でも兄弟でもないっス!考えるまでもなくビーなんて名前なんで名乗ってるか気が付け兄弟!」


『はなから風俗狂の兄弟じゃねーですけどね』


「ビーグ義兄さん!サリゥさんはあっちに行ったかな!」


「随分と気が利くのよ〜」


「だって2歩位ずつ位走っては後ろ見ながらまた走ってるから分かりやすいかな!」


「なんだ、ボウズはビーの知り合いだったのか?」


「見た目変わってて気が付きませんでしたけどね」


「そんなことよりワシにはそのビールを樽毎買わせて貰おうか」


「72リットル位あるんですよ?」


「なーに、一晩分じゃ。その位飲みたくなるほど美味い!」


一所懸命接客をしてはいるがどこかソワソワして気が気じゃないランダウ。

だが遠目でも泣き腫らしたのが分かるノベルが建築ギルドの輪に加わるのを見て、申しわけないが上手くいったのを確信して喜ぶミスリルの誓い。

そして1人の男が動き出す。


「今回は仕方ないっスよ兄弟。両思いには誰も勝てないんスから。このパルバットとビールは奢りっス」


そうして宴会は朝まで続いた。

ネスカタットから来た人達は帰り支度をしながらビーの事を探している。

ノベルはあの娘はサリゥだからと訂正しながらも周りを見渡す。


どこで夜を明かしたのかビーグとサリゥが戻って来た。彼女はまた顔を隠していて魔道具を返して欲しいとランダウに言ってきた。


「レンゲ。俺はこんなの無くても」〈私がイヤなの〉


「レンゲさんが本名なんですね?それと義兄さん。好きな人には綺麗な姿に見られたいって気持ち分かってください。」


ランダウはマジカルファームには火傷の状態異常があり、その回復手段でもある火山のダンジョン近くの川で捕れる火太刀魚を使った料理をすぐさま作り変換する。

攻撃力アップの効果もあるが気にしない。

意味があるかは分からないが攻撃力アップの効果を下げて火傷に効くようカスタムを念じるのも忘れなかった。


「まずはこれ食べて下さい。昨日の夜から2人とも食べてないんでしょ?」


言われて確かにと思い気まずいまま出された料理を食べる。

そこへバーバラがランダウなら回復魔法でどうにか出来ないか聞いてきた。


(料理の効果は無しか……。火傷を治すなんて日本でもステロイドかリザベン使うか皮膚移植レベルだよなぁ。確かコラーゲンの分泌だっけか)

「やったことないからまた動物実験だけど、大丈夫な皮膚を侵食増殖させつつ、火傷部分をカサブタみたいに出来れば……。あくまでも予想だけど……」


「カサブタって?」×ミスリルの誓い

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