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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットフェスティバル〜お祭り騒ぎ編
37/54

ピッツァ

ネスカタットでの取り調べが終わり、ラムドに戻って1番先に入った施設はリール亭である。

2人が作ったのをたべたくなったのと顔を見たくなったのである。

店に入ると会計の人がウエイターを呼び、店の奥に連れて行かれる。


「アタイに隠れて危ないことしてねーか?」


「はい!」×4


「イースト菌で膨らますことに成功したんだ。そして私とフローレンスは似た惣菜パンに行き着いた」


「絶対アタイのが美味いと思うんだけど食ってくれよ」


「ランダウ君は私の方が気にいるさ」


仲がよく尊敬してても料理となると張り合う2人を見て微笑む4人。

シュートの魔法袋から取り出されたのはほぼピザである。

シュートのは生地が薄いタイプで野菜がメイン。

フローレンスのは生地が厚くふっくらしててベーコンが散りばめられている。


「私のエーホーのカリカリ具合たまらないよな?」


「アタイのパルバットの方が美味しいだろ?」


どちらも美味しいがランダウが好みなのは薄いタイプのエーホーであるが、このピザには圧倒的に足りない物があった。


「マルケンさんみたいな感想になりますけどどちらも美味しいです。これは野菜好きとか肉が好きとか好みの問題の差だと思います」


最後に僕はエーホー派ですと付け足した。


「ちょっと僕の実家にある食べ物と合わせてみませんか?明日にでも持ってきますよ」


「いつだい?明日の何時頃持って来れる?」


早く持ってきてくれ。出来るなら今すぐと目で訴えるシュートに気圧されて、今日帰って明日の朝一持ってくることを約束してしまった。

その代わり食事代は無料となったので結果オーライである。


実家への途中ヤマナもランダウの実家へと向かっていたので一緒に行くことに。

ヒデ達の働き具合を聞きに行くのだと。自分達が出てった後に凄いのを出してないかの確認だそうだ。

家に着くと夕方でヒデ達は帰っていた。そしてビーグが畑で仕事というか土いじりをしている。


「わかるッスよぉ兄弟!その背中は女に振られたんスね!」


突如人の傷を抉る謎の青年にイラッとするが、その声色と表情は本気で慮っているのが分かった。

女に付けられた傷は、時間か男の友情か女にしか癒せないと熱弁を振るうヤマナはルンシバで屋台をしていた時より活き活きしている。


「ほら、叫ぶっスよ!何がアナタはおっぱいしか見てないっスかぁ!お尻も脚も見てるッスよぉ!!ほら兄弟」


「何がうちはお金にしか興味がないだぁ!ブローチも捨てていいしうちの事はさっさと忘れてとかふざけんなぁ!お金目当てで近づいたとかそんなことは知ってたんだよぉ!それでも家族との生活を話した時に見せた笑顔と目の綺麗な輝きに惚れたのにそれも嘘だったのかよぉ!!」


その後も、お揃いのブローチ付けといて大事な話があるとか期待させんな。最近は俺が買った服しか着てないから気に入ってると思って何が悪い!など溜まったモノを吐き出している。

叫び終わった後はブローチを外して投げ捨て、それを見たヤマナはビーグの背中に手をやり飲みに誘った。


「今晩は付き合うッスよぉ兄弟!」


「おう!名前は?」


「ヤマナッスよ。兄弟に敬語はいらないっスよね?」


「よし行くぞぉヤマナ!いいかダウ!ブローチは絶対に拾うんじゃないぞぉ!」


2人の世界に入って街中まで向かうのをただ見送ることしか出来なかったミスリルの誓い。

仕事はどうしたとかとても言えなかった。


「あのさ、俺ブローチ探したいから皆は母さんに言ってチーズ貰ってきて」


「えっ、でも義兄さん探すなって」


「探しものなら僕でも手伝えるかな!」


「これは俺1人で探したいんだ。俺達兄弟で絶対にするなはさ、してくれって意味なんだ」


『ダーリン、単眼鏡を使えばすぐにでやがりますけどそれじゃダメでやがるんですよね?』


(うん、それじゃあ俺が見つけた事にならない)


さっきの独白から推測出来るのはやっぱり詐欺グループの一味であろう。

けどヤマナから聞いた話とはちょっと違う。せめてブローチは持っててほしいと望んだ。

叫び声を聞いたリャーギンはブローチ探しを手伝い、両親と3人はそれを見つめていた。

これはきっと兄弟しかやってはいけないことだと理解した。


「あのヤマナさんには感謝だ。ここ最近は空元気で見てらんなかったからな」


「ビーグ兄さん大丈夫かな?」


「大丈夫だって」


兄弟2人で話しながら探すこと数時間。


「やった!見つけた!!」


拍手が起こり、ビーグの部屋に置き手紙をしてブローチと一緒にする。夜も遅く身体を軽く拭いてから兄の部屋へ入る。

リャーギンの方は上手くいってるのかも聞きたかったが、きっといつもより早く起きて店の準備をしてるだろう2人を思うと早く寝ることに。


目が覚め、リール亭へと行くと腕組をして待ち構えてるシュートとフローレンスがいた。

どうやらランダウに食べさせるまでピザは店に出さないと決めていたらしく、更に美味しくなる食材を心待ちにしていた。


「これをどうするんだい?」


店の包丁を借りてピザ用チーズの用にスライスしていく。

焼き上がりを待ち、皆で食べると昨日よりも確実に美味しくなっていた。


(やろうとしてたこと先越されちゃったなぁ)


『もしかしてダーリン、そのためにチーザーを変換してやがったんですか?』


(まあね、ピザって無性に食べたくなる時あるから)


チーズを乗せて焼いたのを食べると今度はシュートとフローレンスが相手のピザの方が美味いと言い始めた。


「このチーズはうちの実家で取り扱っているので住所教えときますね。あと野菜とかうちで採れてるのだったら父に交渉してください。自慢の野菜たちですから」



お礼を言った後はチーズの量はどうすかでまた料理に熱中しているので、美味しかったですと言ってから店を出て伸びをした。

するとロザリンドが単眼鏡を取り出して周りを見渡している。


「何してるの?」


「ほら、サリィさん探して文句の1つでも言おっかな!」


「気持ちはわかるけどやめたほうがいいよ。それにロザリーは会ったことないし、名前間違ってる」


「悔しいけど犯罪でもなんでもないのよ〜」


「それよりも裁縫の道具出すからさ、今日はちょっと仕事休みにしない?」


タエコと2人きりになるのを防ぐため、これからはなるべく大部屋で泊まることで結託した3人。

今回はミシンの使い方を教える必要があるのでロザリンドではあるが、交代制でランダウを一人占めする日を分ける談合をしていた。

実際タエコは四六時中一緒にいれるし、好きな時に話している上、野盗の一件からずっと添い寝してるのでその位は許されるだろう。


身体で覚えるタイプは得意なのか足踏みミシンを1時間で苦もなく使いこなすロザリンド。

町巡りしている時に溜まったゴブリンの皮革は相当数に及ぶ。

糸も針もラムドで買えるし、店が開いてなくともマジカルファームにもある。


「すいませーん、宿の者ですがあなた方にお客様です」


ドアを開けるといたのは宿屋の受付と今まで対応していた人とは違う役所の人である。


「モキンをこれからどうするかが決まったのでご報告を」


ケスオトラ政府はモキンの漁師は反乱を起こしたグループとそうでないグループと分けて対応した。

それでも多少なりとも漁師全員にも少なからず責任はあるとして、反乱を起こしていない漁師を低賃金で他の国で漁をすることで物資を確保した。


これから安全確認と街の復興を全面的にサポートした後は、任期が終わり通常の賃金になっている漁師達はモキンでの漁をさせることに。

そして当時モキンに住んでいて戻りたい人は引越し費用もケスオトラが負担することを表明した。


「大盤振る舞いですね」


「それで1つ君にお願いがあるんだ小さな英雄達」


持ち上げながらの頼みを中身も聞かず安請け合いするようなことはしないミスリルの誓い。

この人は悪い人ではない感じがするが、国からの指示なのは明らかだと身構える。


「あはは。そんな変な事じゃないよ。依頼人と冒険者の枠を超えた友情が見つけた奇跡。その立役者がモキンの復興を率先して手伝うなんて素晴らしくないかい?」


毒に汚染された街を国がいきなり大丈夫ですと言って信じる人がどれほどいるのか分からない。

まずは様子見といった人が多数派のはず。

年端もいかない少年少女が身を張って安全を示す美談が欲しいとのこと。


「ちなみに了承してくれたらシュタイン皇子から褒美があるよ。呼び出して下賜とか古いから書類から選んでくれってさ。なんと上限があるけど複数選ぶのも可能で、その他にも復興支援金としてこれだけ渡せるよ。チョコっとやって冒険者資金にするもよし、目一杯使って派手にするもよし。どう?」


話が旨すぎる。元々やりたいことをするだけで品物やらを貰えてその上お金が発生するなんてあるだろうか。

ここは拒否して勝手にしよう。そうアイコンタクトで通じ合った。ロザリンド以外。

しかもランダウとタエコは褒美のやり口がカタログみたいだと余計に嫌な予感がした。


「あっ、そうそう。フローレンスちゃんとシュートさんに聞いたらすぐ遠慮する子供達って聞いたから、いらないやらないとか言って復興支援したらあまりに感激して1代限りの名誉貴族にしちゃうかもってさ」


逃げ道を塞がれ力なく頷いた。

ここまで来たらいっそやりたいようにやったらどうかと開き直る事に。


「#客寄せパンダか」

(世界は違っても文化レベルは少なくとも同じ以上だね)


『気をつけるに越したことはねーです。今、日本語漏れてやがりましたよ』


タエコにだけ言おうとしたのか漏れ、日本語でポツリと呟いた形になった。ロウフリアではこれに該当する言葉がなかったのも原因である。

ディコスのことも気になり尋ねたが返ってきた答えがこれ。


「冒険者個人の名前は知りませんけど、チーム金銀財宝の皆さんはあなた方に宜しくと言って自国に帰りましたよ」


(……。そういうことか。けどこれになんの意味が?)

「ありがとうございます」


「いえいえ」


役所の人が帰った後にディコスはおそらくチーム金銀財宝の一員になったであろうことを話し、モキンをどうやって盛り上げるか作戦会議を行うことに。


国としてはまずは死刑が決まった犯罪者を使った安全確認。それと果物の効果と魔法による促成栽培が行われた。

それには1ヶ月もかかり、その間ミスリルの誓いはモンスター討伐半分、ランダウの能力を使って魔物を倒すこと1/4、モキンての計画準備と自由時間1/4で過ごした。

皆の口癖は基礎が出来たら実践に勝る修行無しで、これは3人を助けた冒険者の教えでもある。


相変わらずランダウはレベルが上がっても魔力量は増えているが他の部分は若干しか上がっていない。


ビーグは立ち直り、服に隠してはいるがブローチを常に身につけながらもヤマナと仲良くなっている。

リャーギンは両思いなのは分かっているのに孤児院の事があり、すぐに結婚とはいかない様子。


そしてついにモキンの街のが一般開放された。

街に必要な魔道具はケスオトラが保管していて、もし復活できた際にはすぐに返還する準備があったそうだ。

こうしてミスリルの誓いはモキンで活動することに。

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