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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットフェスティバル〜お祭り騒ぎ編
33/54

壺とか絵画とか

3人は泊まりになるだろうということで、3人を見送ってから日も落ちた今までずっとタエコと取り留めもないことを話しながら歩いたり買い物したりのランダウ。

時間を決めて何時もの宿屋前集合、来なかったら久しぶりの1人である。


『今度はキチンと土地でも買いやがりますか?』


(うーん。別に機会があればって感じかな。あっ、それよりも今晩何か寝る前に歌ってくれない?タエコの歌キチンと聞きたいし)


『……。マスター、私はマスターの母親でもなければメイドでも抱き枕でもオルゴール付きダッチワイフでもねーですから!!』


魘されてから毎晩タエコと寄り添い寝ていた。

それ自体はタエコも嫌ではないし、むしろ楽しかったので文句などない。

けれど今の物言いは何か引っかかった。

兄ビーグが狐耳の女性と歩いてるのを見かけたがそれどころではないランダウ。


(ごめん!でもそんなつもりなくて)


『どういうつもりで言いやがったんですか!マスターにとって私はなんでやがりますか!』


神から与えられた使命はランダウのサポートで、それ以外は自由にしていいと言われた。

自由と言ってもどこかに行けるわけでも、ランダウ以外の人と接することも出来ない。

自分はランダウにとって便利なお手伝いでしかないのだろうかという不安が最近になって出てきた。


(その、一言では言い表せないし、上手く言えないけど、良きパートナー以上の存在なのは間違いないよ)


『マスターは口が上手いでやがりますね。けどちょっと考える時間をください』


それから何を問いかけても返事はなく、頭を垂れながら街をぶらつく。

さっきまでの楽しい気持ちはどこかに行ってしまった。

最近ずっと甘えてたのは自覚していたし、このままじゃ駄目だとは思っていたが、自己評価を下回る駄目さだなと痛感する。


今タエコに出来ることはなんだろうと考え、思い浮かんだのは手料理を振る舞うことだった。

モキンにいたときは4人で食事していたのでタエコに転送する隙がなかったのだ。


(何にしよう……。焼鳥も餃子も美味しいって言ってくれたけど、タエコの好きなことって俺よく知らないんだ。もっと色んなの作ってあげてれば良かった……)


『……。うどん』


(タエコ?!)


(マスターが作りたいって言ってたの一緒に食いてーです)


(もちろん腕によりをかけて作るよ!)


『腕とかそれだけじゃ足りねーです。私の知識では踏めば踏むほど美味しいとありやがります』


(分かった!足にもよりをかけるよ。……、ごめんねタエコ)


『私こそ面倒くせーこと言って……』


(俺こそ気の利かないパートナーで……)


「ダウ君じゃないっスか!」


と、そこへヤマナが現れた。仕事終わりに夜のお店をハシゴするんだと楽しげである。

色々と話し込み、明日ランダウの実家へ商売話を持ち込むことも聞いた。

何故実家の住所を知ってるかは怖くて聞けない。


どうやら夜のお店はとある事情で賑わっているらしい。

彼女だと思ってた女性に裏切られて落ち込み憂さ晴らしにお店に足繁く通ってるとか。


『ビーグが連れていたのは狐獣人でやがりましたね。その種族には珍しい銀髪の』


(手口が日本では一昔前って感じだよね、ネットで見かけるような。仲良くなって、不幸チラつかせて貢がせまくって肉体的接触……、は日本だとしてるの多いか。まぁ、ないのに期待だけさせて。何もプレゼントとかしないのにねだるのは得意とか……)


『マスター、ちょっとドロシーに似てねーですか?』


(俺貢いでないから!!で、金払い悪くなったらお金目的で近づいたことを正直に話す。貴方のことだけは本当に好きだから貴方と釣り合うまで待っててとか言って別れる)


『不幸な生い立ちなのは嘘付いてねーらしいでやがり、年齢は15〜17がメイン。他の街では似たような手口が頻繁に起こっていたから組織的な可能性がたけーらしいでやがると。難しいですね』


そしてその銀髪の狐獣人は騙すのが苦手らしく、途中で方針を変えたのか中古の装飾品とかを買って、それを転売するのがメインになったことまで知れ渡っている。

そこまで知られてて多くの被害が出るかというと、夜のお店の女性はそれを基本男性に言わないからだ。

言葉では優しく慰めているが心の中では高笑いしているのが過半数を占める。


「男の俺がなんでそこまで知ってるかって顔っスね。まぁ、おっぱい道の為せる業っスよ」


謎の道を極めようとしているヤマナにお礼を言いつつ、ビーグに注意してもこういうのは本人に言っても拗れるだけだと様子見することに。

目下うどん作りに必要な物を買い集めている。

ラムドでは割と遅くまで営業しているお店がちらほら見かけるのだ。


(あのさ、俺が食べるのは踏んだやつじゃないの用意したいんだけど)


『今日の私は面倒くせーですから、マスターは私と同じもの食べたくねーんだなぁ。って思うだけでやがります』


(何この子、めっちゃ可愛いんですけど!!)


関浩二の友人達は妙な子とぼかした言い方をするが、彼の1番好きな女性のタイプはメンヘラちゃん、構ってちゃん、電波等の一癖も二癖もある女の子を好きになってきた。漫画ならヤンデレが1番好き。

本人曰く可愛い!守ってあげたい!!となるそうだ。

ちなみに一度も守ってあげれたことはない。


人気のない公園で敷物を敷いてうどんのためにせっせと踏むランダウ。

少しだけ心に決めたことがあるので明日のために確認。


「ねえ、タエコって視覚はどんな風に見えてるの?前に後ろにいるフローレンスさんに気がついたじゃん?」


『基本はマスターと同じ視界でやがります。意識すればマスターのつむじを見下ろせる位までは上げれます。その他は車に付いてるバックモニターみてーなのがマスターの身体の至る所にあって、見ようと思えばそれを見れます』


「うへぇ、それは恥ずかしい……」


『太腿の後ろに3つ黒子があるのは誰にも言わねーですから安心してください』


「知らないままで良かった知識が増えたっと、後は宿屋の部屋でしよっか」


ルンシバにあった行者にんにくを入れた鍋にうどんを入れて完成。そしていざうどんを転送する。


『今の中品質のうどんで転送の能力が少しだけ上がったみてーです。マジカルファームに送らねーで転送枠のままなら物は1つだけでも戻せます』


「おー、じゃあ説明文使って転送鑑定なんか出来る訳か」


ふとゲームに目をやるとうどんは既になくなっていた。

既にタエコが手にして一緒に食べようと急かしている。


『大変美味しかったでやがります』


「それは良かったでやがります」


どちらともなく笑い合う。少し前までのギスギスした空気はもうない。

でも流石に一緒に寝ようとは言い出せないのでゲームを閉じようとするがタエコから止められる。


『マスターはすぐ油断しやがるのでついでにゲームでもやって進めやがってください。マスターの店も大きくなったし、街を活気づける為に毎月イベントするぞとか、この町長は牧場主1人に依存しすぎでねーですか?』


「それはねぇ、ゲームだし……。このイベントでいい成績残すと参加者全員の好感度が上がるんだ」


夜になり少しは期待していたランダウだが、タエコが自宅の部屋に入り、当たり前かと気を落としたが突如タエコが騒ぎ出す。


『このベット硬くてとても寝れねーです!マスターは謝罪の誠意としてマスターの家にあるベットよりも10倍は高価なベットを寄越しやがってください!』


「そんな高いやつないよ……。次の日店空いたら家具・インテリア扱ってるとこで1番高級なの買うから」


『ダ・メ!でやがります。そうやって安いの与えとけばって魂胆が気に食わねーですし、段階おいて買うとか非効率の極みでやがります』


「どうしろって言うんだよ」


『あー、今1番高いベットってどれでやがりますか?』


「一応タエコと俺のは同じ高いやつだよ。家のグレードアップについてくるやつ」


『それじゃあ仕方ねーです。今度オルゴール付抱き枕って言ったらこんなもんじゃ済まさねーですけど、魘されて寝不足なったことで死んだら私も死にますからね』


「えっ、モキンでも似たようなこと言ってたけどそれ本と」

『ほら、さっさと寝やがり下さい』


かなり大事な情報なので聞かなきゃと思っても、寝やがり下さいの一点張り。

ただその言葉がどんどんと、ゆっくりとしたリズムと音程が含まれて、まるで子守唄のように聞こえるのはランダウの勘違いではないだろう。

疑問よりも嬉しさが勝り、その優しい歌声は眠りを誘い、ランダウは程なくして意識を手放した。


「おはようなのよ〜」

「両親と仲直りできたかな♪」

「宿屋に来る時に凄いの見ちゃった!」


どうやらランダウの兄リャーギンが女性と楽しそうに歩いているのを見かけたそうだ。

今まで彼女いない歴=年齢の2人が急に同じ時期に女性と歩いていることに引っ掛かりを覚えた。

もしかしたらリャーギンもと思うが、見失った状態では探しようもないので今日はランダウの実家へと行くことに。


「今日はどんな不思議なのを渡すのかな?」


「毎回渡す訳じゃないってば。心配だから顔出したいのと、また樽とチーザーは渡すけど。ああ、簡易収納箱も渡さなきゃ」


3人は簡易収納箱に食らいついたが、それよりもランダウは言わなきゃと心に決めたことがある。

大きく深呼吸して真っ直ぐに3人を見つめた。


「あのさ、皆とデートする前の日辺りかな」『マスター?何言おうとしてやがりますか?』


タエコの言葉を無視して続けるランダウ。


「実は異次元の人格の人と話せてて、それをずっと黙ってた」『マスター!やめやがってください!』 


(別に話したからって消えたりしないでしょ?)


『そーでやがりますが……。なんで急に』


(それはね、あれ?皆が呆けてる)

『当たり前でやがります。ドロシーが言ってた魔力が話しかけてくると大差ねーでやがります』


「それがどうしたのよ〜?」

「バーバラが前に言ってた予想と変わんないかな?」

「そんなことよりその人は男なの?女の人?ダウはどう思ってるの?」


「ああ、そうだ。ちょっと待ってて。順番めちゃくちゃになってた」


「私達も相談するからいいわよ」


ランダウを背にしてしゃがみ込む3人。そしてランダウ本人はタエコへと話しかける。


(昨日改めて考えたらタエコの事が女性として好きです。このままじゃ不誠実だし、彼女達にも浮気みたいだし皆に言いたかった。タエコは俺の事そう思って無いだろうけど振り向かせるよう頑張るから)


『マスターはいつから私のこと好きでやがりましたか?』


(女性として意識したのは初めて話しかけてきた日の夜だよ。一緒にワイワイゲームしてて、ああ。彼女が出来たらこんな風にゲームするの夢だったなぁって。本心に気付いたのはタエコは俺にとって何なのか考えた昨日だけど……)


『あの3人よりも好きでやがりますか?』


(いや、その、それは。でも俺にとって誰も欠けちゃならないくらい好きだよ)


『発言が浮気男そのものでやがりますが、欠けちゃならないって事は私1人で3人分でやがりますね。でもマスターは振り向かすの無理でやがります』


(そこは努力するし!)


『マスターしか見つめてねーのにどこに振り向けばいいんだか分かんねーです』

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