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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットフェスティバル〜お祭り騒ぎ編
32/54

叫び声

作戦開始から7日目のこと。街の草花もかなり綺麗になり、街の奥まで進んできた。

毎日毒消し薬を作ってるおかげかカスタムが向上して、ランダウが使わなくとも効果が出るようになった。


家は進む度に変換用の保存場所に入れながら寝泊まりを繰り返す。

そうして進んでいたら、街1つ駄目になった位でどうして海に出ることが出来なくなったのか理解したミスリルの誓い。

海に面してるはそびえ立つ崖があり、モキンそのものもが高台にあるのだ。

海へ歩いていける所に人が集まり街を作ったというのが正解であろう。

そこでとある物を見つけた。


「これって、フローレンスさんの」


「ご両親のお墓なのよ……」


「お墓の後ろにあるのはここで見てきた禍々しい草花や、あそこにあるでっかい木と違って綺麗な樹木だ……」


「まるで2人を守ってるみたいかな」


見上げてみるとディミルの実そっくりの果物が成っているので風魔法を使い落とす。

転送を使い説明文を見てみると書かれていたのは……。


【名もない果物:漁師キュリとカールが死の直前、愛娘のことを想って出来た、元は雑草から出来た植物の実。自分達が受けた毒とは別の毒が近くにあったため、成長を繰り返しその毒に対応するため樹木になり、その実や種は特効薬となる】


「この力があればなんでも出来るって、ちょっと自惚れてたかなぁ」


「どしたの?」


自分が見た説明文をそのまま説明して、これからどうするかを相談した。


「私はこの木には触らず今のやり方でで街を綺麗にしたい。これはフローレンスさんがどうするか決めるべきだと思う」


「これを魔法で成長させて、あの原因の毒樹木を枯らせばフローレンスさんきっと喜ぶのよ」


「僕もこの木はそのままにしたいかな」


『今さらでやがりますが、毒死した動物を転送したら後遺症があるとかの説明付いてやがったかもしれませんね』


絶対出来るとは限らないがそう言えばそうだと後悔する。毒に汚染されるかもとゴミ箱にしか考えが及んでいなかった。

次は気をつけようと意識を切り替え、皆の意見を聞いてランダウは考える。どうしたら皆が笑える結果になるだろうかと。


「うん。ちょっと嘘が入るけど、この果物の種を入り口にこれを植えて育ててみよう。後はここまでの道を他の人でも来れるようにしてからフローレンスさんにこの事を話す。で、どう?」


コクリと頷き、何個か名前のない果物を手にして薬をばら撒きながら入り口へと戻る。

と、ロザリンドがぴくりと反応して身構えた。


「声が聞こえる。それも男性2人のかな」


耳を澄ますと確かに塀の向こうから叫び声が聞こえる。


「ランダウ!ドロシー!バーバラ!ロザリンド!生きていたら合図してくれ!魔法でもなんでもいい!!」


「書類では最低5日は経ってる!ほぼ死んでるって!アンタもそんな近づくと死ぬぞ!」


「まだ大丈夫だ!同僚の不始末で若い命を散らせてなるものか!せめて息があったら親元に連れて行く!」


「ったく。なら俺も命かけてやんよ!」


「なっ!お前もしかして街に入る気か?」


「動けねぇってんなら元冒険者の俺のが向いてるって。安心しな、来月結婚するんだ。死ぬ気はサラサラねぇよ」


何やら凄い盛り上がりを塀越しに繰り広げられている。

誰が答えるかを何故かアイコンタクトとジェスチャーでやり取りして、言い訳があるランダウが代表になった。


「皆無事でーす!!ちょっと気になることがあってここで8日程過ごしました。身体は健康そのものです!!」


「本当か?!なにはともあれ生きてて良かった……。こっち来れるか?」


「はーい!」


塀を飛び越えて挨拶を済ませると、どうやらこの2人は別件で来たようである。

ラムドを出てからの内容を事細かに聞かれた。

冒険者ギルドの人はランダウが返り討ちにした盗賊のこと。

そしてモキン内にはモンスターが1匹も出なかったことも。


もう1人は国に仕えてる役所の人で、モキンに入る前の手続きで不正処理が見つかり、担当者を降格減給処分まではし、ランダウ達をどうするか決める際、どうせ死んでるし放置しようが方針であった。

が、彼だけは助ける為に冒険者ギルドに顔を出し、戻ってきてないか調べ、この職員と共に来た。

そして今いるのはラムド総合ギルドの会議室。


「で、そのフローレンスさんから、動物も死んだし鳥も近寄らないと聞いてたのに、鳥が街の上空を飛んでるのを見て気になったと」


「はい。街の中は変な色の草がいっぱいだったのに、その木があるところまでは通れる道が出来てましたし、鳥が果物をつついていたので食べたらスッキリして」


「もしこれが本当なら大事件、いや大発見だ」


「ちょうど死罪に該当するの10人、いや仲間を捕まえればそれ以上いるから探索に使います?」


気軽にやり取りされている人の命に若干引くランダウだが、タエコに死刑囚は生涯炭鉱か新薬の実験にでも使えという意見は日本にもあったことを言われて、思うのと実行するのは違うと思いつつもどうにか飲み込む。


「経歴も調べさせてもらってね、仕事も真面目でトラブル無しだけど、念の為ランダウ君達の人柄調査するついでにフローレンスさんとやらに聞いてきてやるよ」


「アンタ、損な性格してるな」


「そっちほどじゃないさ。少年達、しっかりと言うこと考えとけよ?」


言われた事を理解しないまま、どのような手続きをされていたのか説明を受ける。

簡単に言うと、モキン復興の責任を負う代わりに成功したら領主となる契約をさせられていた。

その場合国から復興支援金があるのを担当者がくすねようとしたのである。


「国もダメ元でのやつだから罰則はないけど、実際に復興の目処を本当に立たせてしまったからなぁ。ここからここまでが君達の本部となってるし、その毒に対抗出来る果物が確認されたら土地の価値が上がってから売ってもいいしどうする?」


(俺の地元で言うと、東梅から穂香まで位の面積か……。中々の広さだ)


『マスター。分かりにくいことこの上ねーです』


「うーん、フローレンスさんの地元を私達が所有するのはなんだか……」


ポツリとドロシーが呟くのを他の3人も頷いて返す。


「放棄します。出来るならモキンに住んでた人に優遇だけはしてほしいです」


「わかった、君達は真面目だね。元住民のことは心配しないでほしい」


『拠点が『解除大漁され大漁♫大ました漁大漁♫飲んで飲まれて♫』


機械音声とタエコの歌声が急に聞こえてビクッとするランダウ。

改めてタエコから何があったかを聞くと、土地の所有権が無くなりゴホムの設定が解除されたとのこと。

今の歌の音程はランダウ基準での再現と言われ、あまりの酷さにショックを受ける。


『聞き苦しかったでやがりますか?』


(いや、タエコの声は好きだからいいんだけどさ……)


『私もマスターの歌好きでやがりますから』


ガチャ。ドアの開く音に全員が目をやると、そこにいたのは息を切らしたフローレンスとシュート。

後ろに冒険者ギルドの職員もいたが誰も見ていない。


「あのね!フローレンスさん♪聞いてください!」


「なんとモキンの街がなのよ、」


ゴン。パチン、パチン、パチン。鈍い音が1つと乾いた音が3つ鳴った。

ランダウはシュートからゲンコツ。他3人はフローレンスがビンタ。


「暴力で訴えるのは年長者として間違っているだろう。まして君は賢いから話しても分かるはずだ。けどやらずにはいられなかった。済まない」


「えっと、危ないことしたから怒られるのは当たり前で、その、ごめんなさい」


叩いた後は優しく頭を撫でられ戸惑うランダウに優しく語りかける。

君のことだから勝算はあってだとは思うけど、命を賭ける必要もないのに自ら飛び込まないでほしいと。


「大事な人を理不尽に失う辛さを味わわせてはいけない。君が家族に会えないだけじゃない。君に2度と会えなくなった家族はどれほど悲しむと思う?それは私やフローレンスも同じことだ」


自分で決めたゲーム時間を無視してはのめり込んだり、生活に追われて精一杯だったり、タエコと話すことで気を紛らわせたり、食べ物に集中することで考えないようにしていた事が湧き出てくる。


前世の知り合いと2度と会えない話せない。両親に育ててくれてありがとうも言えないで死んだ。

そして今の優しい家族達を泣かせる事になるかもしれなかった。

好きだと言いつつ彼女達をわざわざ危険な所に連れて行った。


「ごべんなざい。ぞんなづもりじゃ……」

「分かってくれればいいんだ」


年下でありながらもしっかりとしたランダウが泣いたことで、既に自分達を抱きしめたまま泣いているフローレンスに申し訳無さが勝っていたが、どれだけ心配かけたかが分かり大粒の涙が溢れてきた3人。


「フローレンスさんが喜ぶと思って……」

「何か出来ることないか思ってたのよ……」

「僕なんも考えてなかったかな」

「アタイはお前らが無事なのが1番嬉しいから無茶はすんな!」


5人がわんわんと人目も憚らず泣き叫び、どれほど時間が経っただろうか。

ようやく落ち着き、椅子に座り事実確認をしていく職員にシュートが頭を下げた。


「いえ。何も迷惑なんてかかってませんし、ただ必要な書類書いていただけですから、むしろこちらがお待たせして申し訳ございません」


「冒険者ギルドからは、この件で知った犯罪の隠し方を口外しないで欲しいので契約魔法を受けてもらいます。その代わり犯罪者を捕まえたことを考慮してランダウ君は講習を受けて貰えば7級へ、他は明日にでも6級へと昇格です」


「分かりました。あー、なんだか父さん達に会いたい」


「私達もそうだけど……」


「なのよ〜……」


「あれかなぁ……」


「どした、いつでも合えると思ったら間違いだぞ?」


「ねえ、俺も皆の両親に紹介してよ」


渋るには何か理由があるのだろうと踏むランダウ。こう言えばきっとドロシーなら喜んでくれるはず。

1人が行けば他の2人だって。それが狙いだったが。


「余計危ないのよ〜」


「僕達実は家出同然かな」


「考えてみてランダウ。親に反対を押し切って冒険者になって借金背負って家出したかと思えば、一緒の街にいて2年位にも会わないでやっと顔出した第一声が、私の大好きで素敵な将来約束した彼氏でーす♪友達皆娶って貰いまーす♪なんて言ったら……」


『ドロシーって日本に産まれたら彼ピッピとか言いかねねーです』


ロウフリアの恋愛事情に詳しくないランダウでも、それは一発アウトなのは分かる。

フローレンスですら、それは言わない方がいいなと引いてるが、職員2人は口笛を吹いて冷やかしている。


「別にランダウ君のことは言わなくとも付いていけばよくないかい?借金はないこと、良き仲間と上手くやってる報告はするべきだ」


「そうだな!辛くたって気まずくったって惚れた男といると勇気が貰えるだろ?」


それは体験談ですか?そんな目を3人に向けられ頬を掻くフローレンス。

話がまとまり、職員2人に事後報告があるので宿屋を教えて総合ギルドを後にした。

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