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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットフェスティバル〜お祭り騒ぎ編
30/54

火事場泥棒?

モキンの街手前にある、日本の交番を木造にしたような小屋。

これを無視するのはよくなさそうなので、恐る恐る中を覗いて声をかけてみた。


「んあーい、ったく」


出てきたのはいかにも窓際族や左遷といった単語が似合う中年男性であった。

あからさまにやる気のない対応に、気合を入れていた面々は若干引いている。


(うわぁ。リストラ寸前おじさんみたいな?)


『社会経験バイトしかねーでやがるのに……』


(いや、叔父さんの持ってた漫画でいたよ。ラジオで競馬聞きながら仕事してたりとか、1日中シュレッダーかけるだけでお金貰える人とか)


「いるんだよねぇ、無知を勇気と勘違いしたの。あそこ入るのって手続きすっごいいるの。国に届け出を出さないといけないから2週間はかかるかな」


思ったより厳重なのか、ほぼ一方向からしか来れないとは言え、入らせない為にしては1箇所だけの見張りはザルなのか。


「だからさ、身分証貸して。後はこっちでやるからさ、あぁ、でも向こうからこっそりと入ろうとしたらお兄さんこれから手続きしなきゃいけないからそんなことしないでね。入って半日もいたら死ぬ病気なるのと、あそこの街にある物はなんでも拾って良いけど手前のは大体取り尽くされてるよ」


(つまり面倒だから見つからないように入れってこと?)


「お気遣いありがとなのよ〜」


こうして小屋を遠回りして建前上は見つからないようにしてモキンを再び目指す。

暫く歩いているとロザリンドが口を開いた。


「いやぁ。話の分かるオジサンで良かったかな!」


「あの人の目好きじゃなかったなぁ」


「男の視線にうるさいドロシーが言うなら裏があるかもなのよ〜」


「あっ、セメントの塀が見えてきた。まずは単眼鏡で確認しよ」


4人が揃って毒を意識して見ると大量の埃が舞ってるかの用に毒が塀から溢れ出てきている。


「思ったよりヒドいかな……」


「でもある程度塀から離れると見えなくなるのよ」


(出来るか分かんないけど、あの毒をゴミ箱共有!)


『距離が遠すぎみてーです』


1番楽な方法が出来ず近くを見渡すランダウ。


「これからヒドいことをします」


近くにいたネズミを土魔法で作った檻に閉じ込め、長めの棒を付け足す。


「これを持って歩いて、ネズミが毒にかかった所でいったん止まろう」


これは炭鉱のカナリヤを参考にしたものである。少しでも毒のリスクを減らすかを考えた時に効果がありそうなのは試すことにした。


「つまりどこまで毒の影響あるかってこと?」


「そゆこと、塀の外にも毒草があるならそっから除去もしないと」


「分かったのよ」


こうして1人は単眼鏡でネズミを見て、1人は周りの警戒、1人は薬の準備。そして1人は……。


「確かに私が1番腕力があるみたいだけど、ネズミ持つのやだぁ」


「探索は元々ロザリーの係で、ダウは状況の判断と薬係、私はそれ重くて腕がぷるぷるなのよ〜」


警戒は虚しく、塀の近くまで問題なく来ることが出来た。街から離れるだけでなく、地面に来る頃には毒が何故か消えているのだ。

ごめんな。そうネズミに謝り開放する。そして上を見上げるランダウ。


「高さ約3mか。ちょっと待ってt」


「「「説明!!!」」」


とんでもない物を作るとかは許容出来る。だが命の危険があることを独断ではやらせない。

ランダウなりに彼女達を守りたくての行動ではあるが、それを黙って受け入れるほどお姫様な彼女達ではないし、ランダウが学習しないのならと行動を先読みした。


「えーと、毒って粘膜とか、傷口とか、後は鼻とか口から入るのね、強い毒だと皮膚からでも」


「そんなのどうしようもないじゃない!!」


「だから風魔法使って塀までを毒の花粉なのか分かんないあれを一部吹き飛ばし続ける。そして塀に乗ってディミルの種を土魔法で埋めてから戻ってくる。そして念の為こっから離れて数日過ごそう。ディミルの種が効果あるか分かるまで」


「分かったけど、何もしないのは退屈なのよ〜」


「ダウはここで何か作りたいのとかあるの?」


「アレやろうよ。俺の実家に行く途中でやったまも、ゲフン。あまり見ないモンスター倒すの」


『あれでやがりますね。強くなって積極的なロザリーに切り替えるんでやがりますね。あーあ、2人共可哀想でやがります。私もそのうちマスターにやり捨てされやがるんです』


(人聞きが悪いこと言わないでよ!)


心の中で否定するものの、3人はタエコと同じ感想を抱いていて、ドロシーに至っては涙ぐみ必死に耐えて、肩を何度も上下している。


「あれ?ちょっと勘違いしてない?皆で強くなればまた盗賊来ても俺、焦らずに対応出来ると思うし、ロザリーだって強くなったら俺が何かする度にスイッチ入りにくくなると思うんだよ」


「私はわきゃってたのの〜」


「ほんと?本当に本当?」


何度も確認するドロシーに、好きすぎて面倒臭い女になってるのよ〜。と、バーバラにからかわれるも、全然面倒じゃないから何度でも聞いてとモテ期を最大限楽しむランダウ。


「ちぇっ。残念かな」


説明を終えると三者三様の反応を見せる。

すぐに終わらせるからと言い残してジャンプする。

まるでテレビとかで見るジャングル奥地の様に鬱蒼としている。

作戦通り種を撒き終わりすぐに戻って、単眼鏡で確認したら毒にはなっていなかったが薬を一応飲んでおく。

後はディミルの実が成長するまでの時間潰しとなる。


変換効率が1:3になったことと、装備の性能を知れたことで、前回よりも強い魔物を召喚していく。

その間タエコはひたすら農場をやってから素材を集めて、残りはひたすらスキルレベルを上げている。


「4人がかりだとほぼ瞬殺だね」


「何回か毎に2人1組でやらない?」


「賛成かな!」


こうしてレベルアップを勤しみながら、ランダウは前にチタンで作った失敗作のアクセサリーを取り出した。

効果は身体能力全ダウン。HPやMPと魔力にはマイナス補正がかからない指輪をこっそりと左手に付ける。

毒耐性があるアクセサリー以外は外した上で。


「ダウ!どうしたのかな?急に動きが変かな」


「これも俺の修行。悪いけど付き合って」


「ダウとならいくらでも付き合うし結婚もいつでもOKかな!」


突如ロザリンドの足元にバスケットボール大の氷球が飛んできた。

発射元を見るとバーバラが黒い笑顔で間違えたと謝っている。


「や、約束は覚えてるから大丈夫かな!」


野盗達の死体を確認しに行ったのは本当だが、テントの中でランダウを巡って大激論も当然なった。

取り敢えずは今まで通りの距離感で、必要以上に自分からボディタッチをしないこと。

ランダウから望まれたらOKで、その場合順番とかに文句は言わないことと決めた。


取り敢えずの取り決めは、自分達が15歳になったらどんなアピールも解禁と成人になるまで待つと全員が納得する境界線。

自分達がと言葉を濁しているが、このルールを決めたバーバラが1番先に誕生日を迎えることとなるのは2人は気がついていない。


ゲーム内で3匹揃わないとこちらに召喚出来ないので、ボコられてるのを回復の操作しつつもリアルで連携を取りながらの戦闘は非常に有意義となった。

夕方となり、本日3回目のレベルアップの感覚が来た。


「なんだか力が漲る♪」


「今度は何に穴を空けるのよ~?」


「うわっ!なんだか壁の向こうから凄い気配がするかな?!」


「ちょっと見てくるから休んでて」


ジャンプするために屈むランダウの襟を掴み待ったをかける。

宿屋でドロシー達を探した時にも使っていたが、実は使用者の意識1つで壁を透けて見えるというぶっ壊れ性能があったのだがランダウは思いついてなかった。


「ダウの出す道具ならなんでもアリかなと試したら大成功なのよ〜」


ディミルの実を意識して覗くとそこにはミントも竹も脱帽する速さの成長を見せる姿があった。

まるで動画の早回しを見ているかのように、胚軸が地面から出て枝を伸ばして葉が生っている。


何より注目したいのは、その成長している物はランダウが埋めた物ではないという事だろう。

それらは既に実を付けていて、植えた覚えのない所から成長しているのだ。

これは毒素があり過ぎて一気に成長しただけでは足りず、成った実が落ちてそれが成長してを半日の間に繰り返し行われていた。


そしてもう1つは草花が枯れていたり、どこかに消えてしまっている点だ。

これはディミルが毒素を吸収するだけでなく、自分達の縄張りを広げる為に邪魔者を排除している。


「ねえ、毒素で調べて中を見てみてよ」


「来たときは濃霧のようだったのに……」


「ゼロとは言わないけど半分以下なのよ〜」


「これは夜が明けたら楽しみだね」


「これならいっそ4人で今撒いてから寝ない?」


宿屋で薬を作ってた時に出た種はまだ8割以上残っている。

毒素が少なくなると成長も遅くなることを考えて、今の群生地より少し奥に撒いておけば効率は確実にいい。


「うん、やろっか。塀に登ってから3分毎に薬は飲む事、危険がある時以外は口を開かないこと、何かある時は手を叩いて知らせること。いいね?」


『マスターにしては攻めやがりますね』


(遅効性ならこの時間で無効化出来れば問題無いはず。ゴミ箱には量が多すぎるのと無限に湧き出るから意味がなかったよ)


それともう1つの理由は、毒を調べるために転送して説明文を見たら、微量の摂取は何事もなくて継続して取り続けると内臓機能に深刻なダメージを与えると書かれていたからだ。

その時間は健康体なら呼吸だけで平均5時間。


「どれ位の時間で戻るのかな?」


「20分位でいいんじゃない?」


各々薬を持ち、目が届く範囲で作業を行った。

そしてボロボロになった家屋を見てランダウは中年男性の説明を思い出す。


(ここにあるものって取り放題なんだよな……)


『マスター、それってかじ』


(違うよ!泥棒は盗むこと。これは合法だと説明されたでしょ!)


家を何軒も転送したり、リサイクルボックスを取り出して投げ捨てられたゴミたちを入れておく。

これを土魔法と風魔法を使いながら器用にしているのは訓練の成果が早速出ているのだろう。


(ねえバーバラ。またダウが凄いことやってるよ?)チラッチラッ


(私にはあれが凄いことの前フリなの分かってるのよ)パチクリパチクリ


(ちょっと僕、苦しくなってきたかな。毒かも……)


「「呼吸はしなさい!!」するのよ!!」


折角アイコンタクトでの会話も無駄となってしまう。

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