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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットフェスティバル〜お祭り騒ぎ編
29/54

反省

日も落ちた頃。毒の実験は進展はあまり無かったが、明日やるべきことをメモに書き違う実験をすることにした。


(取り敢えずなんかしてないと落ち着かない)


「あのさ、ちょっと俺にくっついてくれない?」


「えっ、ダウから言われると恥ずかしい……」


「ウエルカムなのよ〜」


「わかったかな♪」


ランダウはルンシバにいた頃にゲーム内で交換した、自宅や農場へと戻る魔法ゴホムを変換して自分に使っていた。

今まで使わなかったのは、ランダウにとって自宅や農場は実家の可能性が高く、仕事中に戻ったら迷惑がかかるからである。

今なら実家へ行っても明日またここに来ればいいし、宿屋に戻るならそれは予想範囲内だ。


ゴホムは自宅に戻れるだけでなく、レベルによって行き先を保存しておける移動魔法でもある。ランダウが変換したのはレベル3。自宅の他に1つだけ移動が出来る。


(よし!ゴホム!!)


眩い光に包まれ目を開けるとそこは実家……。ではなかった。

光も起きず、魔力を消費した感じもなく、先程から何一つ変わらない景色。

どう考えても失敗であった。


『拠点が設定されていません』


脳内にタエコとは違う無機質な声が聞こえ、何か考えようとしたが問題が発生する。


「まだこうしてた方がいい?」


「そろそろダウの方から抱きしめてくれめもいいかな?」


「なんの実験かわからないけど幸せなのよ〜」


周りの目はないが、どう見ても女を侍らかして見せびらかしてる悪趣味な状態だ。

実験は失敗したことを告げて、ここで久しぶりに使い捨てテントを使って野営をすることを提案した。

これを使えば見張りをしなくても済むのでゆっくりと休める。


「あのさ、図々しいんだけど、ダウと同じテントで寝ると私達喧嘩しちゃうと思うの」


「誰かさんが問題起こしそうなのよ〜」


「だれのことかな?」


「だから私達3人だけでちょっと話したいな。なんて……、ダメ?」


それは構わないよ。そう二つ返事で返す。

ランダウはテントを2つ変換して取り出すと手を振って中へ1人入る。前と比べて変換効率も良くなり大した出費ではない。


「なんかあれかな〜。もう寝るよ」


『大丈夫でやがりますか?』


「確かに同じことを繰り返した実験は疲れたけど心配いらないって」


『そうじゃ』「おやすみー」


ランダウは疲労によりすぐに寝付けたが、悪夢に苛まされている。

昼間のやった事がずっとわだかまりとしてあったのだ。

苦しんでる男達の顔と声が何度も何度もリピートされては恨み言を言ってくる。


「苦しい」「どうしてこんな目に」「お前だって無抵抗の俺等を攻撃しただろ」「蹴った時楽しかったんだろ?」


目が覚めると身体中が汗だらけで気持ちが悪い。

今見てた夢を思い出して手が震える。


『マスター、あの時の行動は間違ってやがりません』


「ち、ちが、楽しんでなんか、俺トリカブトは、モンスター用で、もし盗賊来たら、彼岸花の方、フローレンスさんのこと、なんで。ごめん、タエコが冷静なれって」


『あーゆー輩はしぶてーですから大丈夫でやがりますよ。仮に死んでも自業自得でやがります。ちょっとゲーム開きます。裏ワザ見つけやがったんですよ。実験も兼ねてーです』


「うん、俺もなんか、しないと、動物に彼岸花使えば、俺って人殺し、いや、殺すの抵抗……、やっぱり楽しんでるのかも……」


『正当防衛でやがります。それが楽しんでる顔でやがりますか?だから一回深呼吸して』


言われた通り深呼吸して、ゲームを開くと丁度12時。マジカルファームは午後9時を回ったところである。

自宅に戻るようにタエコに言われ、ベットの前まで来るとタエコが入ってきた。


『マスター。ベットに入って、寝ますか?の選択肢を出しやがってください』


言われるがまま行動する。ベットに入る瞬間タエコのキャラが部屋に入ってきた。


『こうしやがるとゲームの時間は進まねーで、私は部屋の中を自由に動けます。料理とかは出来ねーですけど』


「うん。もしかして、それが裏ワザ?」


『そーでやがります』


何だよそれ……。そう思ったが、タエコのキャラがベットへと来たら身体に違和感がある。

手がひんやりと、でも心が温かい。髪も誰かに触られている。


『ゲーム内で作り物の身体で、マスターのロリコン趣味とは逆の何百万年も生きたババアでやがりますけど、一緒に添い寝してやるでやがります。と言ってもマスターにはなんの変化もねーでしょーけど、せめて気持だけでも一緒にいさせやがってください。』


「ううん。ありがとう。タエコがいてくれて本当に良かったよ」


この感触はタエコの物だ。そう思うだけで日中からあった嫌なしこりや、悪夢の想いが和らいでいく。

現実でも横になり目を瞑り、目の前にタエコがいる気がして頭の中でしがみついてみる。

悪夢は見なかった。


次の日目覚めると、頭と背中を優しく撫でられている感触があった。

もしかしたら一晩中こうしてくれていたのだろうか?

嬉しさと申し訳無さと恥ずかしさか湧き上がってくる。


『マスター。私が勝手にやりたくてやっただけでやがりますから気にしねーでください。マジカルファーム内の時間が夜で終わって、マスターが寝苦しそうでかつ、私の気が向いたらたまーにやるでやがります。マスターが使ってるベットの方がふかふかでやがりますからついでです』


「気の所為かもだけど、タエコの手の感触はあった気がしたよ。細くてひんやりとした指で気持ちよかった」


タエコの気遣いが嬉しくて微笑むランダウ。

ずっと放置していたゲームを閉じようとすると新しく開放された能力がある通知が来ていた。


『それはでやがりますね。アレとアレがアレしてこれからスキル経験値がアレな感じでやがります』


「ええ、全然分かんないんだけど」


『うっせーでやがります!!』


優しくなったり急に怒ったりと七変化する対応を楽しく思い、もう一度聞こうとしたけど、添い寝してくれなくなったら嫌なので諦める。


「ダウー?起きてる?」


「うん起きてるよー」


テントから出ると焼鳥とパンが用意されており、目をパチクリさせて驚くランダウ。

どうやら3人は、自分達の都合ばかり押し付けて、初めて対人戦をしたランダウを気にかけなかったことを反省してると申し訳無さそうに告げた。


「それで昨日の夜に3人で行ったのよ」


「その、汚物はいっぱいあったけど、荷物とか骨とかはなかったのよ〜♪」


「だから、もしかしたら復讐とかしてくるかもしんないけど、生きてるし安心して欲しいかな」


「「「ダウが私達を守ってくれたように私達もダウを守る」のよ」かな!」


何もテントを別にしたのは言い合いを見られたくないからだけではない。

毒の実験をしている時の表情が真剣に集中しているのではなく、焦燥感のような物でしている事に気がついたのでこっそりと夜抜け出して確認しようと決めていたのだ。


『良かったでやがりますね。3人も守ってくれる人がいて』


(4人だよ。本当に俺は幸せ者だ)


「ありがとう皆、俺のためにそこまでしてくれて。その格好までしてくれて」


3人共前にランダウから貰ったコスチューム衣装を着ていた。


「これはロザリーが抜け駆けしてアピールしようとするから」


「やっぱり好きな人には可愛いって思って欲しいかな♪」


「私のはなんだかふりふりしてて戦闘には向かなそうなのよ〜」


そして昨日の対人戦を振り返り、ランダウが自分の間違いを振り返った。

憎しみが前にあったとは言え、彼女達を守らなきゃという思いが強すぎて1人でやろうとしたこと。

複数が相手でも一気に倒す必要はなかったこと。

そして……。


「この防具の性能を試してなかったんだよ」


「正直武器は当てることさえ出来れば上位の冒険者に引けを取らないわね」


「フローレンスさんに叩かれて痛がってたロザリーを考えるとそこまでってイメージなのよ〜」


「それにはちょっと考えがある」


魔空庫から取り出したのはジンギスカン鍋。金属ならなんでも良かったが、今の所自分にしか需要がないこれに決めた。

それを地面に置き、空手の瓦割りの要領で中奥の盛り上がっている部分を殴る。

すると鍋は凹み、殴った手の部分を3人に見せながら思った通りだとドヤ顔を決める。


「全く痛くない。守られていない素肌でこれなら多少の攻撃は平気だと思う。あの時は多分フローレンスさんに攻撃の意思がなかったからじゃないかな?」


「あのねダウ。出来れば実験する前に何をするかとか、大丈夫と思った根拠を聞かせてから試してね」


「それはいい考えなのよ〜。ダウってばすぐに思いつきで行動するのよ」


「ってことは僕も試してもいいかな?」


心配する2人を他所に、自分でも試したくて肩を回すロザリー。

どうやら自分でも出来そうな事にはときめかない様子。

鍋を凹ませれはしないロザリーとバーバラであったが、確かに痛みは何もなかった。

そして最後に放ったドロシーの一撃は鍋を突き破る。


「えっ、嘘のでしょ……。なんか私が怪力みたいじゃない」


「よし、次の段階に入ろう」


「待ってちょっと誰か否定してよ!?」


バーバラが慰めているのを横目に、冒険者になった時に買った中古の短剣を取り出すランダウ。

1言指先を切ることを言ってからそれで人差し指を軽く切るとなんともない。

もう少しと力を入れてみてもくすぐったいだけ。


「切り過ぎたら回復魔法じゃ治らないから気を付けるのよ〜」


「そう言えば擦り傷位しか使ったことないけど、どのくらいまでなら治るの?」


「人によるって言いたいけど、骨折までは魔力が足りれば治せるわ。ただ……」


「怪我した場所によっては動かすのに不備が出たりするのよ。体内の怪我や目に見え辛い不調は簡単なものだけなのよ〜」


目に見え辛い不調とは、今のランダウを慮ってのことだが、病気や毒による物は体力を回復し続け治るのを待つのが基本である。


(これって理由あるの?)


『ぶっちゃけると、火が出るとか、水や氷、木が育つ、金属の加工。難易度に差はあれど、大抵の人は目の当たりにしたこともありやがるし、想像はしやすいでやがりますよね?』


(骨折や擦り傷は見た目通りに治すからやりやすいけど、神経とか菌やウイルスによるモノや内傷なんかは身体の仕組みが分からないから無理と)


『そーでやがります。部位欠損は純粋に魔力と魔力量が足りねーのが原因でやがりますね。木を生やすのは成長と見れば自然でやがりますが、人の身体はそんな風に出来てやがらねーですので必要とする魔力がやべーです』


(ここまで分かれば大丈夫。タエコって知識の偏りがあれだよね?マルケンさんが知ってる海エルフ知らないのに魔核壊すと強くなれたりするのとか、こういう事知ってたり、でも魔道具を手作りすると差が出るのは知らないんだよね?)


(『そりゃマスターの命に関わることだから創造主に聞いてたに決まってやがります。でも一週目のゲームは攻略サイトとか見るの嫌いなの知ってやがるから、何でも理を知って教えるのもつまらねーですから知らねーです。新しい景色を見てマスターと一緒の気持ちになりたいでやがります』)


『創造主が好き嫌い激しいでやがりますかね?』


(神様なのに!?)


この後もどの位から怪我をするのかを試しつつ、動物やモンスターを見つけては服毒させたりと、昨日とは違い落ち着いて実験が出来た。


やはり1番安全確実なのは単眼鏡で自分達が毒にかかったかを確認しつつ、少しでも分かったら薬を飲むことと落ち着いた。


そしてミスリルの誓いで1番視力のいいロザリンドが小屋を見つける。

近づいてみると……。


(あれはなんていうか……、交番感が強い。偶然かもしんないけど、きっとシュタイン皇子絡みなんだろうな)

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