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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットフェスティバル〜お祭り騒ぎ編
24/54

好評?

「臭みを消せるって聞いてから試したかったんだけどよ、そのニリンソウがなくなったらと思ってやらなかったんだけどいいか?」


なんの肉だろう?シュートはすぐ分かったが、1人を除いてジャンが持ってきた肉を不思議そうに見つめた。

その1人はというと、俯きぷるぷると震えている。そして頭を上げてドロシーに詰め寄った。


「ダウってば顔近いよ。いきなりキスなんて不潔!」


「アレだよ!鉄のインゴット出してよ!!貴金属はドロシー管理だよね?」


放っておくと何をしでかすか分からないランダウには既製品を管理して、材料はドロシーとバーバラの管轄だ。

ロザリンドは入れたものを忘れるし、メモすることも忘れるので私物だけという決まり。

不潔なこと考えてるのはどっちなのよ〜。そんなからかいに顔を真っ赤にしながら鉄のインゴットを取り出した。


それをすぐさま手に取り魔力を込める。真っ平らな円が出来たかと思えば縁が出来て、中央が盛り上がる。

そしてその中央に向かって徐々に大きくなる逆v字型の溝を四方に作って、取っ手の部分を加工して出来上がり。


「ジャンさん!それってもしきゃしなくても羊肉ですよね?それを薄ーく円形状にスライスしてください!シュートさんはタレを!タレを全種類出してください!」


「アタイが渾身込めたカツサンドより食いつきいいんだけど……」


ランダウが作ろうと、否。食べようとしてるのは何を隠そうジンギスカンである。

正直タエコ含めた全員がドン引きしている。


「さって焼っきますよぉ♪」


ジュウジュウと音と共に上がるのは煙、そして独特な臭いである。

未熟という意味で、地球のとは比べ物にならない程度の品種改良。そして仔羊で食べるなんてことをするほど食糧に余裕が無いのも原因の1つ。その臭いは地球のと比べてまた一段と凄いものだ。

おそらくはジンギスカンが好きな道民でも顔をしかめること間違いない。


それをランダウは目一杯吸い込み幸せそうにしている。

ジャンが慌てて臭いが他の仕込みに移ると騒いでるのも気にしない。


「皆さんどーぞ♪うっわ!うまぁい♪」


その言葉を信じて鍋からそれぞれが器用にフォークで取って食べる。


(うっわ微妙っス……)(口の中で血の臭いで出来たスライムが暴れてるぅ)(ランダウ君への期待値が高かっただけにがっかりが……)


「まずかねーけど今までのと比べたら1、いや2段階はグレードが下るな。アタイは嫌いじゃないけどさ」


漁師の娘なだけあって臭いに対する苦手意識は少ないフローレンス以外は渋い顔をしている。


そんな様子に目をやることもなく、ジンギスカンをおかずにしてカツサンドを食べるランダウ。それが正しい食い方かと納得して皆フォークを置く。

ドロシーだけはカツサンドと食べてみようとしたが、間接キスが恥ずかしくて動けないでいる。


『これがマスターの友達が言ってた好きなものと好きなもの同時に食べたら幸せ。とか言って食い合わせを気にしないで毎食そればっかり食べやがるアレですか……。知っててもキツいでやがります』


ランダウの異様な勢いに、明日はまた忙しくなりそうだからと片付けを始める。

本当はパンを仕込む予定だったのだが、その背中は仕事終わりより疲れているのは気の所為ではないだろう。


5日も居れば馴染むルンシバの宿へと帰り、幸せ一杯の顔をしているランダウ。

心の中で、あと2つやりたいことをやったら流石に自重するよ。そう報告する。


『このくらいならいーでやがりますよ。ただ国が動いたりするような事は暴言吐いてでも止めやがります』


(えっ、割と普段から暴言吐かれてる気が……)


『それよりも自重するのはマスターの変態さでやがります。本性見せたら恋愛脳のドロシーでも100年の恋が覚めやがります。だから、その、醸しタルで私が適当に寝ながら作ったので我慢しやがりなさい』


そう言ってゲーム画面が開き、変換した物を保管しておく所にワインがあった。

早速取り出してお礼を言ってウズウズしている。


「ねえ、飲んでいいよね?」


『す、好きにしやがればいいんですよ!折角出来た彼女に打ち明けてフラレてもいいんならこのワインは捨ててもいーでやがります』


コルク抜きを作り、コップにワインを注ぎテイスティングしてから一口。


「100年に一度の出来でヴィンテージの歴史に名を刻むね!」


『突っ込まねーでやがります』


「うそうそ。そんなのと比べ物にならないし、タエコの匂いと味がするよ。俺が飲んできたお酒で一番美味しい♪」


『うっわキメーでやがります!何が私の味でやがりますか!!!マスターが私のナニを知ってやがりますか!自惚れも大概にしてほしいでやがります!うっわ身の毛もよだって鳥肌がすげぇーことになってやがります。まじアウトでやがります』


「そんな、そこまで言わなくても……。焼鳥食べた時に俺の味がするって言ってたのタエコじゃん。それじゃあもう作ってくれない感じ?」


『マスターが言うのとじゃ違いやがるんですよ!変態がバレないようにちょくちょく作ってあげますので感謝を忘れねーで下さい。葡萄を適当にタルヘ入れるだけでやがりますからね!』


「本当にありがとねタエコ♪」


返事もなくなり、改めて落ち着いてみると自身の臭いがヤバいことに気がつく。服を脱ぎ身体を拭いてから新しいのに着替えて正座する。

手を合わせて一礼してからワインに手をのばす。

ゲームから取り出すときに見たワインの説明文を思い出しながら満足気に味わって飲んでいく。


【タエコ作の足踏み葡萄ワイン無印品質LV4:一所懸命踏んで温度管理を真心籠もった1品】


次の日起きたら微妙に頭が痛い気がしてるランダウ。

10歳がワインを一本開けるのは良くないなと痛感する。


(ああ、ゲームでお酒を作ってから酵母を上手いことしてパンに付着させたらいいのか。イースト菌は難しいけどシュートさん達の情熱があれば……。でもタエコのワインは俺のもんだ)


『なに朝からきめえこと考えてやがりますか?』


「単眼鏡LV10なら菌とか毒を見れるかなって」


『マスターにしては悪くねー考えでやがります。が、苦味と食感のバランスを考えたパンのお披露目はすぐでやがります。対状態異常のアイテム使いやがってください』


こうしてアクセサリーを装備して、ディミルの実から作った毒消し薬を飲んで体調を整えてからロビーへと向うと全員が揃っていた。


「それじゃあ役者も揃ったところでラドバロ春のパン祭り、始めますか!」


開店から2時間が経ったが、殺到。そんな言葉は生易しい。

大阪のバーゲンセールでもここまでの事は無いだろう。

何事かと衛兵が出動しそのまま見張りをしていた筈が、数人こっそりと列に並びつまみ出され暴力を振るわれることとなった。


ベルズも当然のように手伝い必死にやってはいるが行列に終わりが見えてこない。が、そもそも材料が底をついてきた。

バーバラに今の注文から100個までと伝えると、大ブーイングが聞こえる。


明らかに転売目的で10や20頼む客は、後ろの人に粛清されている所をみると、もしかしたら日本より自浄作用は高いかもしれない。


パンを完売した所で、お詫びの焼鳥と唐揚げのみ一割引きをして3時過ぎまでの営業をして終了。

これから石灰がルンシバで売っているかと相場の確認、そして石灰は地球の物と同じかも確認することに。

ニリンソウや炭酸カリウムなどの様子から見て、バーバラが知ってる石灰で間違いないと踏んでいる。


そしてさらなるパン作りに必要不可欠と単眼鏡LV10を買って変換する。

どのくらいの性能か鉱石等で試すことに。


「なあ、何してんだい?」


ドワーフが入り乱れる、炭鉱から採れた物をまじまじと見ては視線を切ってもう1度見る。

高等な技術で精錬した物でもなければ純度100%の物などそうはない。変化がしにくい金くらいだろう。


石灰が見つかるどころか、クロムやニッケルが含まれてるのが安く売られており、ボーキサイトに至っては抱き合わせ商法で売られている。


(うへへぇ。これならステンレスにアルミニウム、タングステンとか超硬合金やチタンなんかも将来的に……。圧力鍋の形だけ魔法で型を作ってマジカルファームで高品質で作れば……)


『もしかして自重捨てる前のやりたいことって、圧力鍋とかその製鉄の文化を世紀単位でぶっ飛ばしやがるつもりで?』


(いや、これは完全に私用だよ。アルミとかステンレスは絶対ヤバいの分かってるから。今のとこマルケンさんにも教えないやつ。マジカルファームのチタンなんてこっちじゃ絶対に加工どころか傷一つつかない可能性あるじゃん?だからマジカルファームで量産しつつ、普通に劣化するのが欲しい)


爪楊枝や串はマジカルファームで作って変換した物を使っても汚れは落ちず、簡単に折れた。

このことより、転送してから作れる物は不思議な力が働かないと踏んだのだ。


『どこで誰が見てるか分からないでやがります。だから私のスキルレベル上がるの待ちやがって下さい。使うのもなるべく身内だけの時でやがりますよ』


(そっか、例えばタエコにたこ焼き機作ってって、頼めばどんなのか説明する必要もないのか。無理しない程度にお願い)


『多分でやがりますけど、ドワーフを優遇してるこの街を見てるとマスターの科学知識は国にバレると狙われかねねーです』


「大丈夫?ずっと石を見て止まってるけど……」


心配するドロシーに紙で伝えたい事を書き演技を始めるランダウ。

心の設定は、ブラック組織に若返り薬を飲まされた他人の不審行動と犯罪には厳しい癖に、自分と身内の犯罪には緩い名探偵。


「うわぁ!こんな綺麗なのがこんなに安いってすごぉい♪あれれぇ?僕のお小遣いでも買えるぞぉ♪」


普段のランダウを知っている人からみたら逆に気持ち悪い位の子供っぷり。

ここでこんなお宝が安く売られてるなんて発言したら目をつけられ、次の日には高騰してしまう。

見てはいけない物を見たような気がして動きが止まっていたが、いち早く正気に戻ったシュートが意図を汲み取り、年を取ってから出来た息子を甘やかす父親の演技をした。


「この値段ならいくらでも買ってやる。でも大切にしてちゃんと片付けるんだぞ?」


「あなたったらランダウばっかりに買って、アタイにもお揃いのを買ってくださいな」


シュートの言葉でやっと理解したフローレンスは演技に乗っかったが、自分の欲を優先しておかしなことを言い出した。

このやり取りを聞いたランダウは逆に動きが止まる。

実年齢は20歳でも、見た目は自分とそんなに変わらないフローレンスの暴挙に自分の立ち位置に困ったドロシーは、ランダウの彼女と姉で迷いながらも家族で押し通そうと役になりきる。


「お母さんばっかりズルい!私にも買ってぇ!」


13歳にもなってこんな子供の振りをするなんてと、羞恥心で顔が真赤になるも、自分は姉だからここまで童心に戻る必要はないんだと気付き、余計に恥ずかしくなる。

おかしな家族連れは周りの目を集めながらも、欲しい物を買っていく。

一方その頃バーバラ達はと言うと。


「それも買うんですか?」


「ダウならきっとこういう安く売られてるのから驚きの物を作るのよ〜。失敗しても安いから大丈夫なのよ」


「凄い信頼関係っスね。そーいえばシュートさんから大金貰ったんスもんね」


「信頼関係じゃなくて愛の力なのよ〜。好きな気持はドロシーに負けないのよ〜」


「それにダウは僕達にそれぞれ100万ガロ、自分に200万ガロで振り分けたけど、僕達ダウが大金必用になるまでそれに手を付けないって決めてるかな」


「でもランダウ君ならそれまでにもっと稼いでそう……」


こうして予想以上の収穫を1日で終わらせた。

それとは別にランダウは深夜にこっそりとゴミ捨て場へと赴き、炭鉱のゴミを漁りながら知ってる限りの重要な原子入の鉱石等を念じながらタダで集めていた。

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