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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットフェスティバル〜お祭り騒ぎ編
18/54

出発

「それじゃあ護衛を頼むよ」


「はい!私達ミスリルの誓いに任せてください」


そうして産まれて初めてラムドの外へと出ることとなったミスリルの誓い4人。(今まで仕事で行ってた場所はラムドの管轄内)

ランダウに貰ったコスプレ衣装はデート用にして、仕事は普通の装備でやることに。

近場の外出ではないので身分証となるギルドカードを門番にそれぞれ渡して、犯罪履歴等が分かる魔道具で確認される。


「これはダンジョンからしか見つかってないのよ。最初は手をかざす必要があったのを、この身分証で出来るようにした天才がいたのよ〜。犯罪もその国の法律に合わせて調べれるように変えれたりと凄いのよ〜」


「なんか理解を越してるね」

(これって転生者かな?)


『私は仮にマスター以外の転生者と会ったところでわからねーですからなんとも言えねーです。ただ転生に関わらず天才はいやがりますからね』


(確かにあの女優とか天才過ぎて2週目とか言われてたなぁ)


『当時年齢一桁の子役を女優とかロリコンでやがりますね。はぁ、私もマスターに媚びた感じで話さなきゃなんねーですか?』


(いやいや、俺大学で1人暮らしの時、隣に住んでたOLのお姉さんと仲良くなれないかなぁ。とか考えてたくらい年上好きだよ?それにタエコはそのままがいいよ)


『あの赤縁眼鏡して常にミニスカ黒タイツ。玄関で靴を履かず、わざわざドアの外に出てからマスターに見せるように屈んで靴を履いて男受け狙いまくった人でやがりますね。あざてー女です。ちなみに私の年齢は53万でやがります』


「思ったより長生きしてる!」


『桁1つ間違えてしまいました。ドジっ娘でやがりますから。マスターのこと知る前は会話するための知識だけを与えられて、何もねー空間でフヨフヨしてただけでやがりますから稼働年齢はマスターの歳と変わんねーですけど』


「これで分かる犯罪履歴の種類が街のバロメーターになって、この魔道具がないと国に街として認可されないの」


「「へえ〜」」


「なんでロザリーも知らないのよ〜」


そんなこんなでシュートとマルケン以外も護衛対象がいるので挨拶を交わして出発した。

索敵はランダウが、そしてそれを弓で射るのがロザリーの役目である。

そして馬車の中にいる他はというと、ドロシーとバーバラ、それにシュートが爪楊枝と串とBBQセットを一所懸命に作っている。

2人は細工と鍛冶スキルに関わるので、スタミナ消費が激しく予めランダウに渡された飲み物を飲みながらの作業だ。


「ドロシーってば数は私より少ないけど、1個1個が綺麗なのよ」


「といっても、1回に作る量は私より少ない筈なのに、魔法の発動や手際がよくて、結果数が多くて均等に出来てるシュートさんに比べたら……」


「おい小娘共。やっと7級上がったショボい冒険者のアンタらと、ギルド幹部で複数の店を経営してるシュートさんと比べるなんておこがましいぞ」


口の悪い小麦色に焼けた肌と、真っ赤な髪のショートカットが特徴的な、20歳そこそこだがドロシーと同い年に見える女性はフローレンスだ。

彼女は尊敬しているシュートのお気に入りであるランダウと、その仲間を毛嫌いしているせいでこうだが、本来初対面の人にこんな対応をする人ではない。


「フローレンス。そこまでだ」


「けど!素人の創作料理がたまたま当たった位で調子に」

「そこまでだというのが聞こえなかったか?」


「はい……。すみません」


「確かにプロではないし、同じ料理を作るのならお前の方が上手に作れるだろう。だがランダウ君は手際は悪くはないし、料理の味付けや食べ合わせについて考えることが出来ている。出店に向いてる料理と、唐揚げやニリンソウを使ったスープ、向こうの街で出そうと話したら何も言わなかったね?」


「はい。既に改良を加えたあのスープはこっちより香辛料の多いルンシバでも十分に受けると思いました」


「だが彼は私が買い物をすると言ったとき、唐揚げと組み合わせるならもう少しサッパリとした味付けだと、唐揚げとも合わせやすいと言ってきた。勿論私もそうするつもりだった」


これはただ単にランダウが唐揚げにレモンはかけない派なだけであった。

人がかけるのにはなんとも思わないが、折角唐揚げが流行りそうな土台が出来そうでレモン文化を自分から作りたくなく、他の料理でどうにかしようと画策したのが本人の知らぬ所で高評価を受ける。


「マルケンさん。そのランダウってのそんなに凄いんスか?」


「ああ、ヤマナは会ったことないか。料理の発想力は群を抜いてるね。それよりも僕個人的には、油っこいからお年寄りや女性は苦手そう、たった仲間の少女3人からのサンプルで客層を意識する彼の着眼点が凄いと思うね。あくまで10歳にしてはだけど」


「やっぱりアレっスか?しゅた」

「ヤマナ!」


「すんませんっス。ついうっかり」


こちらはマルケンと従業員のヤマナだ。

快活で見切りが早い風ではあるが、その分思い切りがよく17歳という事もあり、新しい事を取り入れるのに忌避感はない。


「確かにツマヨージとか商品化すれば、店を持たない料理ギルド連中の人達に売れるとは思うけど、作りが単純過ぎて独占は出来ないっスよね」


馬車内で喧々としているのとは対極に、ランダウとロザリンドは、マルケンの部下でもあり御者をしている少年ロバートと上手くやっている。


「前方異状なし!ロバートさんって御者も出来るんですね。お店のことをマルケンさんに任されてましたし。多分僕は料理に回りますけど、お互いに頑張りましょうね」


「ランダウに色々出来るとか褒められても微妙な気分だよ……。計算だって自分より早いじゃないか」


「ねね、2人は面識あったのかな?」


「店番した時に何回か一緒だったんだ」


「たまにどっか見ながらニヤニヤしてる時は怖かったけど」


「店内を見るのが楽しかったんですよ。……!右前方にオークが3体発見。ロザリー!頼むよ」


「僕にも見えたよ♪もう少し近づいたら焼き鳥の如く串刺しにしてみせるかな!」


魔法袋から取り出したように見せ、魔空庫から300を超す矢を用意した。

ちなみに魔空庫の中に魔法袋を入れたらどうなるかを試そうとバーバラがしたが、何をどうしても入れることは出来なかった。


修行していてのは何もランダウだけではない。体力だけでなく、手のひらに出来る豆すらも回復出来る料理と豊潤な矢で新しい技を開発していた。


「せーのっ!」


それは複数打ちである。4本同時に上空へと向けて発射し、しかもそれを連射して雨のように降らすのだ。

しかしそれは逃げる所が沢山ある平原で1人でやっても効果は見込めない。1人が連続で同時に4本射ろうが数はしれている。

それはオークも当然分かっているようで、纏まって動いていたのが1匹と2匹に変わっただけだ。


「ダウ!矢の追加お願いかな♪」


「あいよっ!」


ロザリーが狙いを付けて放ったのは精々3回目までだ。

それ以降は距離だけを気にして方向は適当である。

そしてロザリーが狙っていた瞬間がついに来た。避けたオーク同士がぶつかり睨み合ったのだ。

一瞬の遅れ、降り注ぐ矢から逃げるために無理な態勢となった。


「まずは1匹かな♪」


ランダウから貰った魔力を乗せて威力を底上げ出来る弓。当然スピードも上がっている。

上空から来る矢と、真っ直ぐに自分へと狙いを定められた矢、両方避けるためにその場で回転し、避けきった。

が、ロザリンドにとって、やけくそで転がったモンスターなど止まった的となんら変わりなくあっさりと仕留めた。


同じ手は食わないぞ。言葉は発さなくとも憤怒の形相をしているオークが避けるだけでなく、矢を棍棒で打払いながら距離を詰めてきた。


「うわわ。どうするのランダウ」


「そりゃこうするさ♪」


オーク2匹の膝裏に矢が刺さり、あり得ない位置からの狙撃を受け反射的に振り返ってしまった。

そして何もない空間を見つめたまま残りのオークの頭に矢が突き刺さる。


「じゃあ回収してくる。折角だし今日の夜営に解体して、肉は食料に回す?」


「食べる分は1匹でいいかな!」


「オッケー♪」


「あ、あの。なんであのオークは急に振り返ったんですか?」


「ダウが風魔法で、降ってる矢を操って後ろから刺したから、後は僕がかな」


「それをお互い何も言わずに出来るなんて……」


回収しに行ったランダウがグリーンスライムをついでに2匹倒して戻ってきた後は、夜営まで大きな問題もなく進み、他の人達からは少し離れて場所取りを済ませ、食事の用意をしようとした時にランダウは大事な事を思い出した。


「バーバラ。これオーク回収しに行ったらグリーンスライムいたから。1個だけだけど」


そう言って投げ渡したのは魔核である。魔道具作りをするのに必須で、集めるのに苦労する部分だ。


「ありがとうなのよ〜。ダウ大好き♪」


『私もバーバラみたいなリアクション取りやがったほうがいいでやがりますか?』


(なんでだよ……)


『シュートが買い物してる間、乳鉢や乳棒を2つずつ、そして色んな小物を買ったのを知ってやがります。それとグリーンスライムがホントは2匹いたのもです』


こうしてランダウはタエコとのやり取りに気を取られてフローレンスに睨まれてる事に気が付かず食事を終え、早速オークの解体をすることになった。

その時間で、軽くしか食べていなかったシュートが焼鳥の味付けを試そうとした瞬間待ったをかける。


「ごめんなさい!それはルンシバでやってもらえないですか?実験用の肉としてこのオークも渡しますし、焼鳥に必要な木炭も自分持ちでいいですから」


「くぉ!」


このガキ!と言いそうになったのをフローレンスはぎりぎり我慢した。

昼間の一件がなければ確実に言っていただろう。


「くぉ?」


「ど、どーしてだい?肉の味付けならある程度決まってるとは言え、料理人なら拘って当然なんだから。アタイだってそうするつもりだったよ」


「それはですね」


その説明を聞いて納得はしたが、シュートとフローレンスは微妙な顔をしている。

むしろ興味深そうに頷いてるのは商人3人だ。


「あれっスねぇ。マルケンさんの言うとおり、見た目通りの少年って訳じゃなかったっス」


「驚くのはまずは実際に効果があるのかを試してからだね」


「ほぇー」


ルンシバに着いてからしてほしい事を頼んだ後は、やっとオークの解体だ。

ミスリルの誓いで上手なのはロザリンド、次いでランダウだ。

他2人は微妙と言ったレベルである。

いつもは目立ち過ぎるのを避けるために、討伐部位と肉の一部しかギルドに持っていかなったので、丸々解体するのは今回が初めての試みだ。


「ああ!皮に肉が付きすぎた……」


「血がドバっと出た時はどうすればいいのかな?」


「ああっ!もう見てらんないな!」


悪戦苦闘している2人に手を差し伸べたのはフローレンスだった。

手順や固い部位のコツを、多少口は悪くとも丁寧に教えていく様は板についている。

慣れた人が指示をすることにより、当初よりも早く綺麗に終わった解体はモンスターが血の匂いに惹かれないための後処理も終わった。


プライベートなことは話さずとも、1つの作業を協力したことにより、少なくともフローレンスの中にあったランダウへの理不尽な苛立ちはなくなっていた。はずだった。


『作業中、風魔法で臭いを広がらないようにしつつ、その成分を共有ゴミ箱にやるとは考えやがりましたね』


(向こうに臭いとか押し付けるのは気が引けたけど、モンスターが寄ってきたら周りの人達にも迷惑かかっちゃうし)


「これで魚が手に入ればなぁ。タコはいるっぽいって父さん言ってたし」


オークの肉を見て、なんとなくお好み焼きとたこ焼きを食べたくなったランダウ。

どちらにも必要な鰹節を作りたいなと思い小さく呟く。


一作業が終わり気が抜けた。シュートが言葉足らずであった。タエコに普通に褒められ舞い上がった。そこまで気にしていなかった。

様々な理由が重なり、ランダウの口から漏れた言葉は彼女の胸へと刺さった。


「悪かったな!」


突然の言葉にシュート以外の人間は驚いた。

そして静まりかえった場の雰囲気に、今のは自分が悪いと分かっていながらもフローレンスは舌打ちをして馬車の中へと入る。


「彼女を悪く思わないでくれ。前もって説明しなかった私が全面的に非がある。道中お嬢さん方に絡んだ時点で気が付くべきだった」


こうしてシュートとフローレンスの関係。そして何故彼女が急にキレたのかの説明が始まった。

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