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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットマネー〜借金返済編
15/54

試運転と魔道具

タルと見たこともない道具がリビングを圧迫しているが、ランダウ以外はそれを気にしてはいない。

何故なら目の前のソレは絶対にヤバいものである確信がそこにいる皆にはあったのだ。


「このタルはなんと!お酒の材料になる物を入れたらお酒になるタルだよ。小麦を入れたらピルスナーってビールになるし、果物と小麦を入れたらヴァイツェンってビール。そしてもう1つの方はトウキビとかオリーブを入れたらオイルに変換してくれるスグレモノ♪どっちも入れ物は用意した方がいいかな?多分」


フィーネでは、というよりも、ケスオトラが治める西武諸国では個人での造酒は違法ではない。

が、作っていいのと作れるには大きな隔たりがあるのだ。

自慢げに話す内容を聞くと、果物を入れるだけのワインが最長の7日、ピルスナービールやエールは3日、同じビールでも、果物と作るヴァイツェンは5日で出来る。


当然ながら、圧倒的な程に時間がかからない。

日本人がビールと言ったら9割が思い浮かべるであろう馴染みのあるピルスナービールですら、発酵だけでも5日から1週間はかかり、その後の熟成で1ヶ月。

それを小麦を入れたら3日で完成なんて、どれほどに規格外かわかるだろう。


この世界ではお酒といったらエールという程には馴染んでいるし、ワインやウィスキーも富裕層がステータスで買う程度には広まっている。


けれど主食で使うから、酒造の知識を持っている人の好みの問題でビールは発明はされてはいるものの、この世界の人は殆ど存在すら知らない。


「ビールスナーだかってのはわからんが、お酒だろ?流石にそれを売ったりしたら各所から睨まれるぞダウ」


「ピルスナービールだって。いやいや、父さんも兄さんもお酒好きでしょ?これがあれば安上がりだよ。ビールは冷やして飲むと美味しいから」


「まぁ個人で楽しむ分ならいいのか。それにしてもダウ、母さんと俺にはないのか?」


酒を嗜まないビーグが、自分達には何もメリットが無いものを出したので、からかい半分羨ましさ半分で質問した。


「勿論あるさ。ただちょっとこっちは材料を買わないといけなくてさ」


そう言って取り出したのは、先程より2回りは小さいオイラーとは違う別の機械。

ゲーム内ではマヨラーとチーザーと呼ばれるアイテムだ。


「卵を入れて出来るマヨネーズってのが色んな料理に合って美味しいのと、ミルクを入れて出来るチーズって食べ物もオススメなんだ。2人とも食べるの好きでしょ?」


唐揚げやザンギにはマヨネーズをかけるのが好きなランダウはどうにかしてマヨネーズを普及させたい。

というか自分が使いたい。まずはその一手だ。

卵やらなんやら混ぜるのは後。まずは美味しさを知ってもらう。


「なんていうか、聞いたことない食べ物を作るものを渡されても、どう反応していいかわかんねえよ。嬉しいけど」


「それはどのくらいで出来るの?」


「3時間くらいだよ」


「卵はあったから早速試してみましょうか」


フェイが持ってきた卵をマヨラーに入れると、グウォングウォンと音を立て、それを完成するまで見つめていた。

その間コッソリとゲームをしていたランダウ。


『マスター。アイテム品質とレベルって何が違うか説明しやがってくれてもよろしいでやがります』


「あー。正直俺達プレイヤーも完全には分かってないんだよ、公式も考えずに感じろとかの返答だし。けど、これはあくまでも予想なんだけど、品質は主人公が作れるもの、身に着けるか食べれる物全般に付いてて、レベルは11になったら上の品質って感じかな。無印以下はレベル10で下の品質に下がる。勿論品質もレベルもない農具みたいな例外はあるけど」


『逆に品質がねえのにレベルがあるのはなぜでやがります?』


「それは純粋に能力向上だよ。例えば品質がないアイテムでよく使ってる単眼鏡だったらさ、今使ってるのはレベル3。これが1だったら距離は短いし、大雑把な種類しかわからない。植物、魔物、動物みたいな?」


『なるほどでやがります。あと、店の稼ぎとかは結構ある割に、もうそろゲーム時間で3年目の終盤まで来てるのに借金を半分も返せてないのはマスターが下手でやがります?』


「いや、ほら、装備とかの変換にお金がかかったし、アイテムを倉庫に集めて眺めるの好きなんだよぉ」


『ゲームを進めないとマスターの力も成長しやがりません。対してお金にならないから責めませんが、状態異常の対抗アクセサリーとかあるのに、それ用の回復アイテム過剰在庫過ぎだろとか、明らかにスキルレベルや装備がゲームの進行に合ってないでやがります』


「そうだね。でもスキルレベルは7から上がってないんだよ。このゲームって、メインストーリーまでは100レベル、クリア後には9999レベルまで上げれるのが恒例なのにさ。装備に関して有名なRPGで言うなら、3つ目の街位ではがねの剣か破邪の剣とか持ってる感じかな。今度からは必要最低限の物だけ変換して金策に走ってみるよ」


「おーい、そんなとこでブツブツ言ってないで完成したのか見に来てくれよ。音が止まったぞ」


ゲームでは完成したら機械の上に出来たアイテムのアイコンが浮かぶ仕様であったが、流石に現実ではそのようなことはない。

蛇口のような取っ手口に付いてるランプが青く点灯している。


ちなみに醸しダルはリビングではなく、玄関近くに移動させられ、出荷前の小麦を既に投入されている。

明らかにタルの容量以上の小麦がはいったのだが、既に同じ現象を如雨露で体験しているランダウの家族は気にしていない。

本人達も気が付かないうちに毒されているのだ。


「うわ!ただのサラダがめちゃくちゃ美味しくなってる♪」


「ビーグ、俺にも食わせてくれよ」


マヨネーズの感想は悪くなく、チーズにも期待が寄せられているのだがミルクが手持ちにはない。

ランダウも持ってはいなくゲーム内にもないし、しかも買って変換するのはタエコに止められている。


「また今度面白いのあったら渡すから楽しみにしといてね。明日から僕らに依頼があるらしくて暫く来れないかもしれないから」


「程々にな。無茶だけはするなよ」


「お嬢さん達のことしっかり守ってあげるのよ」


「うん。わかったよ父さん母さん」


手を振り別れを告げて宿屋へと魔物を倒しながら戻るミスリルの誓い。

暫く後に、大量の上質な小麦から作られる安く美味しいビールは、フィーネや近隣国に留まらず大陸中に広まり、ビール太りという現象を各所で起きることとなる。

そしてそのビール太りの名前は、初めてビール太りをしたランダウの父から名付けられ、ドミトると呼ばれるのはまだ誰も知らない。


「ねね、実際に依頼を受けるのは明日だとしてもさ、どんな依頼か見てみない?」


家を出てからは、レベルアップ目的で魔物を倒していたが、人目につきそうになってからは止めて雑談をして歩いていた中、ドロシーが提案した。


「確かに私達でも出来る仕事なのか確認は必要なのよ〜」


「あ〜、確かに俺も依頼内容次第で何か用意したほうが」


「「ダメ!」なのよ!」


「今の発言は僕でも分かるくらい危険かな」


醸しダルやマヨラーといった、下手したら高難度ダンジョンの下層で見つかる可能性のある現装備よりも、存在が理不尽極まりない道具を目の当たりにした3人は食い気味に発言を遮った。


「ダウは物知りなのになんでそんなに不用意なの?」


「いや、そんな凄い道具は用意しないよ?」


「職人が作る魔道具なんかよりも不可思議な物をポンポン嬉々としてだしてるのよ〜」


「えっ?流石にダンジョンから出てくる魔道具とかもっと不思議でしょ?」


「僕でも知ってることをダウが知らないとかホントかな?ダンジョンから出てくる魔道具なんて殆ど庶民には手に入らないかな」


「たまには私がダウに説明するのよ〜。一般的に出回ってる魔道具は材料に文字や絵を刻んみながら魔力を流すのよ。そして魔石をはめ込むと、文字や絵、流した魔力によって決められた魔法が発動する道具なのよ〜。大体はあれば便利とかだったり、ダンジョンから見つかる魔道具の劣化版ばかりなのよ。1番身近なのは魔法袋なのよ〜」


「けど、同じように作っても効果が違ったり、人によっては全然違う結果になるから役に立つのってすっごい高価なの。けどダヴが出すのってどれも聞いたことない効果の物ばかり」


ランダウが魔道具について詳しく知らないのは無理もない。家には魔道具は1つもないし、話題に上がることもあまり無かったのだから。

精々火が出る料理用の魔道具が欲しいと、フェイが思っていたくらいだ。

そして各ギルドには、灯りが点く魔道具等が存在していたのだが、日本の家電に慣れ親しんだ記憶を持った状態では目に付くことは無かった。


『ゴホンゴホンでやがります』


(ちょっと待ってよ。今めっちゃバーバラが饒舌になってるから)


『私を作った神は、マスターと同じ気持ちで世界を見るため、地球の知識とロウフリアの知識をある程度までしか与えやがりませんでした。マジカルファームに至っては会社名とかスタッフの名前くらいでやがります』


(俺は聖徳太子じゃないんだからちょっと待ってって!)


「で、私はダウと勉強して思ったのが、ダウが出すのに負けない魔道具を作りたいのよ〜」


「7級からは稼げる金額がゼロが1個違うものね。別に魔核は売らなくても生活するには十分だし」


「ロザリーはさっきから黙ってどうしたのよ?」


「ほら、難しいことは皆に任せるかな?」


「んもう。ロザリーったら。そうやってなんでも人に任せてたらいつか痛い目見るわよ?」


「僕が信頼してるのは友達と未来の旦那さんだけだから大丈夫かなって」


ようやく会話に一区切りがつき、心の中でタエコへと念じても返事がなくて驚くランダウ。

3度を越した辺りで不安になり、少し擦り寄るように言葉を選んだ。


(タエコさんの話聞きたいな)


『ふーんでやがります』


(だからごめんってば)


『まあ、いいでやがりますけど。私は魔道具があるのと、高価になってる理由を知ってたりするだけで見たことがなかったでやがります』


(うん。それでそれで?)


『でもマスターと違って魔道具をキチンと認識出来てたでやがります!』


(もしかして自慢したかっただけなの?!)

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