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アンメットライフ  作者: ¥$終
〜アンメットマネー〜借金返済編
10/54

やりたかったこと

「ぐッ!!」


兄ビーグの寝返りによる肘打ちでまだ日も昇ってない時間に起きてしまったランダウ。

(人手が足りないんだよな、小麦で儲かれば人が雇えるはず……)


ゲームを起動させ、経営コマンドをある程度設定してから農場へと移動し画面を切り替える。

相変わらずどこから転がってきたか分からない丸太と石を拾い、収穫してから種蒔きをする。


(ファームの名前が付いてるだけあってシリーズのどれも畑での作業ショートカットはないんだよな。あっ、でも水撒きを簡単にするアイテムはあるし、クリア後には収穫用の家畜とかは開放されるか)


時間もあることだしと鎌を使わずに1つ1つ手作業で収穫していく。

道具を使って収穫すると実の品質が1段階上がって、売値も良くなる代わりに種は採れない。

手作業で収穫するとランダムで傷が付いたりして価値が下がる。

けどその代わり種がドロップするのが確定し、改めて買う必要もないし、低確率で種レベルが高いのもドロップする。


(よっしゃ!小麦の種LV4ゲット!これを集荷箱に入れたらいつでも買える!)


ゲーム始動後のルーチンを一通りこなしてインベントリを覗く。

丸太は相変わらず大量にあるので木製の農具を作りまくってランクアップさせた。


(種は安いからLV4のやつ渡そうかな……。いや、武器とかアクセサリーの装備効果を鑑みるに凄いことなったら大変だしLV3のでいっか)


クワ、鎌、鋤をそれぞれ3つ、如雨露を2つを鉄製品で変換してゲーム内に保管しておく。

本当は荷車を出せれば良かったのだが、ゲームではインベントリがあり、集荷箱に入れると自動的に売れるので必要がなく存在しない。


錆びずに使いやすい農具を使えば家族が楽を出来る。

その思いでやったのだが予想外の出来事が起こることとなる。

ビーグがもう一度寝返りを打ち、やっと開放されたので服を着替えて納屋に行き、作った農具をこっそり入れようとしたその時だ


(ちょっと待てよ、鉄のクワってゲームだとパワーゲージが付いて3×3マスを耕せるけどもしかして……)


『10:1を行ったアイテムの種類が一定数を越しましたので5:1に成長しました。そしてモンスターにも使えるようになりました』


(種類って事は他には換金用とかプレゼント用とかのプレイヤー自身は使えないのも試すか……。それといいことなんだけどタイミング!!取り敢えずはクワの性能から確かめないと!)


クワを握り力を込めて納屋から数m離れた場所へ振り下ろすと、デコボコだった目の前3㎡の地面が瞬く間に耕された。

その現実を受け入れられず振り下ろしたままの姿で硬直して脂汗をダラダラと流している。


(魔法ある世界に物理法則とか言わないけど、言わないけどこれはいくらなんでも非常識だろ……。しかも耕した場所を戻す方法はマジカルファームにはないし……)


類似のゲームだと、ハンマーやツルハシを使うと元に戻ったりするのだが、マジカルファームにはその仕様はなかったのだ。


ランダウは折角作った農具だしと納屋に入れてそれ以上考えるのを辞めた。

強張った表情をしながらも自分では何食わぬ顔をしてるつもりで家に戻ろうとした時スライムを見つける。


(よし来た!アイアンソードで壊してみよう!何か忘れてる気がするけど後回しだ!)


魔空虚から剣を取出し、大上段に構えて力の限り真っ直ぐに振り下ろす。

突いたり斜めに斬ると飛んでいってしまうかもと考え地面に挟んで潰す作戦である。

ランダウの勢いに驚いたスライムは偶然にも身体は斬られるも核を守ることには成功させた。


「なんだよ。アクセサリーを装備してないとスライム1匹斬るのに手こずるのか……」


今までは魔法を使ってたとは言え、1人でやってた時に倒せてたモンスターに手こずり、底上げされた身体能力頼になっていることを感じて、新たな課題を見つけたと前向きに考える。

見たところ剣は痛んでなさそうなのでもう一度同じように振り下ろす!フリをして直前で止めた。

躱そうとしたスライムは無防備になり、剣の側面で身体を叩きつけ、これなら動けまいと今度こそ力いっぱい込めて核を真っ二つに切り裂く。


「う、うおお!」


漲るとまではいかなくても不思議な力が流れ込んで来る。

それはどう考えても灰のようになって風と共に消えてった核に関係してるとしか思えない。


「レベルアップかステータス吸収のどっちかだな。これが俺だけなのか何回も出来るかも試さないと!!」


ステータス画面なんてないのでアイアンソードを握り思いっきり素振りをしてみたけど思ったより変化が感じられない。

ただの気のせいという可能性も出てきたので、これ以上は街に戻ってからにしようと1人頷いた。


「そろそろ皆起きる時間かな」


こうしてモンスターも変換出来ることをすっかり忘れて家へ帰り朝食を食べた。

(後でスライムが出て来たら皆にも試してもらおう。そしてその後に3人が7級へ上がってもらえば面倒事から逃げれる!)


「「「お邪魔しました!」」」


「あらあら、もう他人じゃないんですし、そんな畏まらなくてもいいからね」


「そうそう兄さん、この前仕事中に拾った新品の農具があって、納屋に入れといたんだけどさ、絶対に力を込めて使わないでね」


「新品の農具を拾うってどんな状況なんだ。ダウに限って盗むなんてことはないだろうけど」


「父さん、ダウなりの照れ隠しだよ。1人前になったから実家に仕送りみたいな」

(流石リャーギン兄さん!)


「ダウの言いたいことは分かった。体調に気を付けて彼女達を大事にしろよ」


「ありがとうビーグ兄さん。僕が渡した種を育てるなら収穫は手でやってね。あと色々と書いたの部屋に置いといたから」


(あと念の為異変がないかそのうち様子見に来るからね)


こうして家族に見送られて街へと戻ることに。

そしてランダウ達の姿が見えなくなりビーグは早速納屋へと向かった。

両親にそんなにダウの心遣いが嬉しかったのかと茶々を入れられたけどビーグには使命があった。


「早速全力で使ってみようぜ父さん」


「おい、ダウの話聞いてたのか?」


「聞いてたさ。5連並べしてる時によく言ってたんだよ。俺がそこ置くのは絶対止めてくれって言ったらさ」


「俺もそれ経験あるわ。絶対するな!ってのはしてくれってやつだよって言ってたな。つまり」


「何か仕掛けがしてあるんだよ」


「そうか、なら3つあるし皆でやってみるか。母さんは鋤を使ってみよう」


すると当然のように地面が耕され、鋤を使った場所は掘り起こされて大量の小石が地面に転がっている。

納屋の裏へと回ると同じようになっているのを見つけて、これはきっとダンジョンから発掘された物だろうと少し見ない間に成長したダウに家族は感動した。


「んっ、これ何?」


「どうしたのよ〜?」


「なんか魔力が流れてきて」


「ダウはこれを知ってたの?」


「いや、俺だって今日の朝知ったんだ」


「次は僕でいいかな?」


その後も単眼鏡でブルースライムを手当たり次第見つけては倒してみたものの等しく3回までしか魔力が流れてくる感覚は無かった。

いくつか分かったことは、核が本体から離れて5分経つと効果はないことと、4回目の人が5分後にやっても灰になること。つまりミスリルの誓いは製薬ギルドから出てる依頼のモンスターの核を壊す仕事は受けられなくなった。

そして何より大切なことは。


「気持ち魔力が強くなった気がするわ」


「僕的には苦手な属性ほど伸びてるかな。それよりも心持ち感覚が変わったかな?」


「あまり変化がみられないのよ……」


ブルースライムだからか、期待してたよりは能力が増えたりはしなかった。

ロザリンドが言った通り、彼女の神経は若干研ぎ澄まされている。

モンスターの核を壊すと、モンスターにあった能力や個人の才能が引き伸ばされるのである。

これに4人が気が付くのはまだ先の話。


「次はグリーンスライムや他の魔石持ちのモンスターで試してみましょ!」


「僕的にはこれからすぐにやってみたいかな!」


「ロザリーに賛成なのよ」


「でもそいつらのいる場所に行くには7級まで上がんないと」


「「「私達もう7級よ」かな」なのよ」


その言葉で昨日の朝、何故あんなにもボロボロだったのかを悟る。

自分がゲームして遊んでるうちに3人は依頼とテストを受けて成功したのだと。

そうしたら1つの疑問がまた生まれる。どうしてそんな急いでと。


「これでヒデと関わることないでしょ?」


「全部ダウにお世話なったら仲間って言えないかな」


「装備も前のやつ使ったのよ〜」


それを聞いたランダウは自分を恥じた。

人とは違う能力に溺れてモンスターの中でも弱いブルースライム如きも一発で倒せずにいることを。

もしかしたらアイテムは出せなくなるかもと3人に言っておいて、自分だけその努力を怠っていたことを。

肉体年齢は3歳しか変わらず、精神年齢は自分の方が上の筈なのに実力はずっと上であることにもだ。

そして彼女達に気が付いたら頭を下げていた。


「俺を鍛えてください!」

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