魔法適性がないと名家を勘当された少年は、拳を武器に成り上がる。~適性はなかったから使えないけど、耐性がカンストしていたので最強になって無双モード~
連載候補_(:3 」∠)_
ためしにローファン書いたら、ただのハイファンになった。
「ヤマト――お前は、この四条家から勘当だ」
「…………そうかよ」
俺は親父の言葉に、短く悪態をついた。
ある程度は予想していた結末ではあったが、実際にそうなると腹が立つ。そんな態度が顔に出ていたのか、親父は鼻で笑った後にこう言うのだった。
「はん……魔法適性ゼロの出来損ないが、偉そうに反発か」
「うるせぇな、もう無関係なんだから小言もなしだろ?」
「何を言うか。我々が貴様を育てるのに、どれだけの金をかけたと思っている。被害者はこちらなのだ。それを偉そうに――」
――くそったれが。
俺は内心でそう言った。
勝手に生んで育てて、魔法の才能がないから勘当――どう考えても、親父だったこの男のエゴじゃないか。だが、それを言っては話が拗れる。
そう考えて俺は、荷物を持って部屋を出ようとした。
「ふん。貴様には、無能たちの街がお似合いだ」
最後に聞こえたのは、息子を息子と思わない男の吐き捨てるような言葉。
俺はこうして、四条家を出たのだった。
◆
――人が魔法を使えるようになって、かれこれ千年が経過した。
突然に降って湧いたその力は、自然と格差を生み出す。要するに魔法を使える者と、使えない者の差だ。使える者は富み、使えぬ者は貧した。
四条家は魔法使いの家でも名家と名高かった。
しかし、その嫡男として生まれた俺には魔法の才がなく、どんな最新技術を用いたとしても能力は発現しない。
十五になった時点で、その者の適性は決まるとされており今日がその日だった。
本来なら魔法学園に行くのが通例だが、その前に勘当、というわけだ。
要するに、一族の汚点は早々に消そう、ということ。
「…………ふん」
あまりに馬鹿げた世界の成り立ちに、俺は笑ってしまった。
なにが魔法だ、なにが無能だ。先天性の才能だけですべてが決まる、そんなの間違っている。魔法都市となって久しいトーキョーの公園で、芝生に寝そべりながら俺はため息をついた。
「さて、しかしどうするか……」
青空を見上げて。
俺は改めて今後のことについて、少し真剣に考えた。
金もなければ、食料もない。どこかで働こうにも、基本的に魔法が使える、というのが前提だ。それでも働こうとするのなら、行き着く先は無能たちの街。
トーキョーの西側にある、辺鄙な土地だった。
だが、どうにもそこに行く気が起きない。
決して名家出身のプライドが、そうさせるわけではない。
「すべてを諦めてる奴らと、一緒にはなりたくねぇんだよ」
俺はそう独り言ちて、身を起こした。
そうなのだ。トーキョーの西側にいる者たちは、みなすべてを諦めている。政府から貰える僅かばかりの物資に妥協して、声を上げることすら忘れた奴ら。
その中で暮らすというのは、俺の【人間としての尊厳】が許さなかった。
「とはいっても、まずは働き口を――――ん?」
そう考えていた時。
ふと、視界の端――路地裏へ続く道に、何かが見えた。
「めんどくせぇ。けど、無視はできねぇな」
俺は立ち上がると関節を鳴らし、その路地裏へと向かう。
すると、そこにあったのは――。
「おい、お前らには誇りってのはねぇのか?」
「あん……?」
柄の悪い男が三人、一人の少女を取り囲んでいる光景だった。
俺が声をかけるとそのうちの一人が、怪訝な表情でこちらを見てくる。そして、少女に向けていた魔力をこちらに。
やはり、魔法使いによるカツアゲだったか。
魔法を使える者にも、一定層はこういった馬鹿がいる。
力の使い道を間違えている、といえば良いのだろうか……。
「なんだ、てめぇ? ――って、なんだ無能仲間か」
その男は、そう言って口角を歪めた。
魔法について携わったことのある人間なら、相手の魔力量は察知できる。当然ながら、俺の魔力がゼロである、というのはすぐにバレるわけだ。
そして話を聞く限りは、そこの女の子も使えない側か。
「なんだよ。良い格好がしたいだけなら、さっさと逃げるんだな? 無能が二人になったところで、オレ様たちには手も足も出ないだろうからよ!!」
「は……アホらしい」
そう考えていると、男たちは粋がって笑いだした。
見事なまでの三下振りに思わず、俺はため息。そして――。
「いいから、かかってこいよ。この――」
拳を握りしめ、構えながら。
魔法を使う者を揶揄する言葉を口にした。
「モヤシども」――と。
それを聞いた男たちは目の色を変えた。
魔法を使う者たちは、みな総じて体術に弱い。それを補って余りある魔法という存在に隠れてしまっているが、彼らはそれが気に食わないのだ。
だから、格下だと思っている相手にそう口にされると――。
「ふざけんなァ!?」
ほぼ例外なく、襲い掛かってくる。
詠唱を開始した三人に対して、俺はより早くに動いた。
魔法を使えないのなら、それを埋める努力をすればいい。そして、俺はそれを成し得るだけの時間と労力を払ってきた。
すなわち、誰よりも速く。
すなわち、誰よりも強く。
「なっ――!?」
「遅いんだよ!」
この拳を、相手の顎に目がけて打ち込むこと――!
「がっ!?」
一人がいとも容易く意識を失うと、他の二人は明らかに動揺した。
その隙に、俺は一足飛びに距離を縮める。
「ぐっ!?」
「かは!?」
そして、間髪入れずに相手を昏倒させた。
一息ついてから指を鳴らす。なんとも間抜けな顔で倒れる男たちを見下ろしていると、なぜかこちらまで情けなくなってきた。
そうしていると、声をかけてくる人物がある。
言うまでもない。
それは、男たちに絡まれていた女の子だった。
「あ、あの! ありがとうございます!」
「あー、気にすんな。完全に俺の憂さ晴らしみたいなもんだから」
「憂さ晴らし、ですか……?」
こちらが答えると、少女は首を傾げる。
そこに至って初めて、俺は彼女のことを確認した。
「そんなに、悪い出身じゃなさそうだな」
――で、最初の感想がそれ。
長い桃色の髪に、金色の瞳をした少女のいで立ちは、並の家庭以上のものだった。使えない側であるのは間違いないのに、この違和感はどういうことか。
しかしすぐに、俺はある結論に至った。
「あぁ、俺と同じか」――と。
要するに、良いところの家に生まれながら魔法が使えなかった、ということ。
どこの家の子かは分からないが、なんとも奇遇な話だった。
そう考えていると――。
「決めました……!」
「あ……?」
不意に少女がそう言った。
そして胸に小さな手を当てながら、こう続ける。
「私の名前は、月宮ヒナノと申します。お願いです――」
真っすぐな眼差しを、俺に向けながら。
「私のボディーガードになってください!」――と。
それが、少女――月宮ヒナノとの出会いだった。
「月宮……?」
彼女が現政府のトップ、月宮首相の一人娘であると俺が知るのは、少し先の話。
もしかしたら、この先にあるかもしれない話だった。
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