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魔法適性がないと名家を勘当された少年は、拳を武器に成り上がる。~適性はなかったから使えないけど、耐性がカンストしていたので最強になって無双モード~

作者: あざね

連載候補_(:3 」∠)_

ためしにローファン書いたら、ただのハイファンになった。







「ヤマト――お前は、この四条家から勘当だ」

「…………そうかよ」



 俺は親父の言葉に、短く悪態をついた。

 ある程度は予想していた結末ではあったが、実際にそうなると腹が立つ。そんな態度が顔に出ていたのか、親父は鼻で笑った後にこう言うのだった。



「はん……魔法適性ゼロの出来損ないが、偉そうに反発か」

「うるせぇな、もう無関係なんだから小言もなしだろ?」

「何を言うか。我々が貴様を育てるのに、どれだけの金をかけたと思っている。被害者はこちらなのだ。それを偉そうに――」



 ――くそったれが。


 俺は内心でそう言った。

 勝手に生んで育てて、魔法の才能がないから勘当――どう考えても、親父だったこの男のエゴじゃないか。だが、それを言っては話が拗れる。

 そう考えて俺は、荷物を持って部屋を出ようとした。



「ふん。貴様には、無能たちの街がお似合いだ」



 最後に聞こえたのは、息子を息子と思わない男の吐き捨てるような言葉。

 俺はこうして、四条家を出たのだった。







 ――人が魔法を使えるようになって、かれこれ千年が経過した。

 突然に降って湧いたその力は、自然と格差を生み出す。要するに魔法を使える者と、使えない者の差だ。使える者は富み、使えぬ者は貧した。


 四条家は魔法使いの家でも名家と名高かった。

 しかし、その嫡男として生まれた俺には魔法の才がなく、どんな最新技術を用いたとしても能力は発現しない。


 十五になった時点で、その者の適性は決まるとされており今日がその日だった。

 本来なら魔法学園に行くのが通例だが、その前に勘当、というわけだ。


 要するに、一族の汚点は早々に消そう、ということ。



「…………ふん」



 あまりに馬鹿げた世界の成り立ちに、俺は笑ってしまった。

 なにが魔法だ、なにが無能だ。先天性の才能だけですべてが決まる、そんなの間違っている。魔法都市となって久しいトーキョーの公園で、芝生に寝そべりながら俺はため息をついた。



「さて、しかしどうするか……」



 青空を見上げて。

 俺は改めて今後のことについて、少し真剣に考えた。

 金もなければ、食料もない。どこかで働こうにも、基本的に魔法が使える、というのが前提だ。それでも働こうとするのなら、行き着く先は無能たちの街。


 トーキョーの西側にある、辺鄙な土地だった。


 だが、どうにもそこに行く気が起きない。

 決して名家出身のプライドが、そうさせるわけではない。



「すべてを諦めてる奴らと、一緒にはなりたくねぇんだよ」



 俺はそう独り言ちて、身を起こした。

 そうなのだ。トーキョーの西側にいる者たちは、みなすべてを諦めている。政府から貰える僅かばかりの物資に妥協して、声を上げることすら忘れた奴ら。

 その中で暮らすというのは、俺の【人間としての尊厳】が許さなかった。



「とはいっても、まずは働き口を――――ん?」



 そう考えていた時。

 ふと、視界の端――路地裏へ続く道に、何かが見えた。



「めんどくせぇ。けど、無視はできねぇな」



 俺は立ち上がると関節を鳴らし、その路地裏へと向かう。

 すると、そこにあったのは――。



「おい、お前らには誇りってのはねぇのか?」

「あん……?」



 柄の悪い男が三人、一人の少女を取り囲んでいる光景だった。

 俺が声をかけるとそのうちの一人が、怪訝な表情でこちらを見てくる。そして、少女に向けていた魔力をこちらに。

 やはり、魔法使いによるカツアゲだったか。


 魔法を使える者にも、一定層はこういった馬鹿がいる。

 力の使い道を間違えている、といえば良いのだろうか……。



「なんだ、てめぇ? ――って、なんだ無能仲間か」



 その男は、そう言って口角を歪めた。

 魔法について携わったことのある人間なら、相手の魔力量は察知できる。当然ながら、俺の魔力がゼロである、というのはすぐにバレるわけだ。

 そして話を聞く限りは、そこの女の子も使えない側か。



「なんだよ。良い格好がしたいだけなら、さっさと逃げるんだな? 無能が二人になったところで、オレ様たちには手も足も出ないだろうからよ!!」

「は……アホらしい」



 そう考えていると、男たちは粋がって笑いだした。

 見事なまでの三下振りに思わず、俺はため息。そして――。



「いいから、かかってこいよ。この――」



 拳を握りしめ、構えながら。

 魔法を使う者を揶揄する言葉を口にした。




「モヤシども」――と。




 それを聞いた男たちは目の色を変えた。

 魔法を使う者たちは、みな総じて体術に弱い。それを補って余りある魔法という存在に隠れてしまっているが、彼らはそれが気に食わないのだ。

 だから、格下だと思っている相手にそう口にされると――。



「ふざけんなァ!?」



 ほぼ例外なく、襲い掛かってくる。

 詠唱を開始した三人に対して、俺はより早くに動いた。

 魔法を使えないのなら、それを埋める努力をすればいい。そして、俺はそれを成し得るだけの時間と労力を払ってきた。


 すなわち、誰よりも速く。

 すなわち、誰よりも強く。



「なっ――!?」

「遅いんだよ!」



 この拳を、相手の顎に目がけて打ち込むこと――!



「がっ!?」



 一人がいとも容易く意識を失うと、他の二人は明らかに動揺した。

 その隙に、俺は一足飛びに距離を縮める。



「ぐっ!?」

「かは!?」



 そして、間髪入れずに相手を昏倒させた。

 一息ついてから指を鳴らす。なんとも間抜けな顔で倒れる男たちを見下ろしていると、なぜかこちらまで情けなくなってきた。

 そうしていると、声をかけてくる人物がある。


 言うまでもない。

 それは、男たちに絡まれていた女の子だった。



「あ、あの! ありがとうございます!」

「あー、気にすんな。完全に俺の憂さ晴らしみたいなもんだから」

「憂さ晴らし、ですか……?」



 こちらが答えると、少女は首を傾げる。

 そこに至って初めて、俺は彼女のことを確認した。



「そんなに、悪い出身じゃなさそうだな」



 ――で、最初の感想がそれ。

 長い桃色の髪に、金色の瞳をした少女のいで立ちは、並の家庭以上のものだった。使えない側であるのは間違いないのに、この違和感はどういうことか。

 しかしすぐに、俺はある結論に至った。



「あぁ、俺と同じか」――と。



 要するに、良いところの家に生まれながら魔法が使えなかった、ということ。

 どこの家の子かは分からないが、なんとも奇遇な話だった。

 そう考えていると――。



「決めました……!」

「あ……?」



 不意に少女がそう言った。

 そして胸に小さな手を当てながら、こう続ける。



「私の名前は、月宮ヒナノと申します。お願いです――」




 真っすぐな眼差しを、俺に向けながら。





「私のボディーガードになってください!」――と。






 それが、少女――月宮ヒナノとの出会いだった。





「月宮……?」





 彼女が現政府のトップ、月宮首相の一人娘であると俺が知るのは、少し先の話。

 もしかしたら、この先にあるかもしれない話だった。


 


 


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― 新着の感想 ―
[一言] 続きが気になる終わり方ですね(╹◡╹)
2020/10/12 20:49 退会済み
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