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【揺花草子。】(日刊版:2018年)  作者: 篠木雪平
2018年03月
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【揺花草子。】<その2235:リレー。>

 【揺花草子。】<その2235:リレー。>


 Bさん「阿部さん。

     今日は3月11日です。」

 Aさん「うん。そうだね。」

 Bさん「あれから7年目のこの日を迎えたわけだけれども。」

 Aさん「うん・・・もう7年か。早いもんだね・・・。」

 Bさん「毎度毎度言ってる気がするけれども、

     ぼくらはでも、あの7年前の出来事を今でもはっきりと思い出せるし、

     もう7年も経っちゃったのかと言う思いすらある。」

 Aさん「そうだね。」

 Cさん「けれどきっと、それは私たちが『当事者』であるからであって、

     そうではない人々にとって7年って言うのはもう

     あの日々が記憶の片隅に追いやられて過去の出来事に変質してしまうには

     充分な時間だと思うわ。」

 Aさん「確かに・・・それはそうだと思います。」

 Bさん「ぼくら【揺花草子。】では、

     この日を決して忘れないようにとかそう言う意図は別にないけど、

     この日だけはあの日の出来事を語ることを習わしにしているね。」

 Aさん「そうだね。これまで毎年この話はして来ているね。」

 Cさん「そもそも決して忘れないようにとかって言うの自体ちょっと違うのよね。

     当事者、少なくとも我々はあの日々を忘れてしまうなんて

     絶対あり得ないと思うし、忘れる恐れもないのに無理に

     『忘れないように』なんて言い方をするのは不整合だわ。」

 Aさん「確かに、それはそうです。

     そんぐらいあの出来事はぼくらにとっては大きい出来事でしたね。

     恐らくは生涯に2つとないぐらいの。」

 Bさん「ほんとにそうだと思う。

     もちろんあんな出来事が二度と起こっては欲しくないけれども、

     いつかぼくらが人生の終わりを迎えるにあたって

     人生10大ニュースを書き出す機会があるとすれば、

     余裕でトップ3には食い込んで来るレベルの出来事だと思うし。」

 Aさん「うん、確かに。」

 Bさん「誤解を招く言い方かも知れないけれども、

     あの日の記憶はぼくらの中ではたぶんこれから先もずっと色褪せない。

     ぼくらはきっとこの先もこの日が来るたび、

     あの日のことを昨日のことのように思い出すんだろう。」

 Aさん「うん。」

 Cさん「あれからもう7年が過ぎて、

     世界はいろいろ変わったし、変わってなかったりもしている。

     私たち自身にもそれは言えることね。」

 Aさん「はい。」

 Bさん「でも、ぼくたちはあの日をこの場所で乗り越えたと言う事実はいつまでも変わらない。

     そしてそれをぼくらは決して忘れ得ないし、いつでも思い出せる。

     これは逆説的な言い方をすればとても貴重なことだよ。

     もちろんさっきも言ったように二度とは体験したいとは思わないけどね。」

 Aさん「そうだね・・・。」

 Bさん「──そしていつか、この記憶を、

     誰かに引き継げれば良いなとは思う。」

 Aさん「──うん。」


 繋ぐことの価値。

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