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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
99/201

英雄や偉人になれなくても

泣くぐらい怖い話をしても、落ち着くまで泣いてもらったら、美智果はケロッとしていつも通りに戻ることができた。この子が泣く時はいつもそうしてる。『このくらいで泣くな』とか僕は言わない。泣きたい時にはとにかく泣いてもらうようにしてるんだ。


それがこの子の強さに繋がってると僕は思ってる。嫌なことがあっても、友達と揉めることがあっても、感情が昂るようなことがあっても、この子はそれを言い訳にして誰かを傷付けるようとはしない。ついきついことを言ってしまったりしたらそれを後悔できるような強さを持った子なんだ。


僕は、他人を傷付けようとする人間は弱い人間だと思ってる。汚い言葉で気に入らない相手を罵って精神的に優位に立とうとするのは、結局は弱いからだとしか思わない。弱いからそういう形でしか優位に立てないんだと思う。でも、美智果はそんなことをする必要がないんだ。この子は強いから。


しかもその強さは、虚勢を張らなきゃ維持できないような強さとも違う。困難を前にしてもあれこれ文句を言いながらでも何だかんだと乗り越えていくタフさだと思うんだ。母親を亡くすっていうとんでもない不幸を前にしても、いっぱい泣いてすっきりすればまた笑うことができる芯の強さだと思うんだ。


だから僕は、もう、そんなに心配してない。これからもいろいろ辛いことはあると思うし大きな不幸が訪れることもあると思う。でも、この子は、気の済むまで泣いてそれを受け留めてくれるパートナーと一緒なら困難に立ち向かっていける子だと思ってる。そのパートナーが見付かればいいけど、見付かるまでは僕が代わりをすればいい。


僕は、一人ででも生きていけるなんて言う人間は信じない。そんなのはただの虚勢だから。


もしかしたら本当に一人ででも生きていける人間もいるかもしれなくても、そういうのはごくごく稀な例外的な存在でしかないと思う。その手の例外的なのは、普通の人間には何の参考にもならない。


普通の人間が、無理なく、やり方さえ理解できれば誰でもできるものでなければ意味がないと思ってる。英雄とか偉人とかの生き方ややり方なんて、真似できるものじゃないよ。誰でもそれが真似できるのなら、英雄や偉人もただの普通の人になってしまうから。普通はできないことをしたから英雄とか偉人とか言われるんだからさ。


だけど、英雄や偉人になれなくても人は生きていくんだ。この世の殆どの人はそういう普通の人達なんだ。普通の人が幸せに生きられなきゃ、それはいい世の中じゃないと僕は思う。


英雄や偉人になれなくても、美智果は<普通>のままで強く生きていくことができる。


その為に必要なものを、僕はこの子に示していきたいんだ。



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