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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
82/201

やりたい仕事をした方が楽しそうだけどなあ

「本当にやりたい仕事に就ける人なんて、滅多にいないよ。プロ野球選手を目指して野球をしてる人だって、実際にプロになれる人なんてほんの一握りなんだから」


「それはそうかもだけど、でも、やりたい仕事をした方が楽しそうだけどなあ」


「でも、なれるとは限らない。やりたい仕事ができなかったら、仕事しないの? それじゃニートってことにならないかな?


それとも嫌々仕事するの? それはそれで辛すぎるだろ。何十年も続けることになるんだよ? だったら、好きじゃなくても無理せず続けられる仕事を選んだ方がずっと賢いと思う。


お父さんも、今の仕事が楽しくてやってる訳じゃないよ。一日、美智果以外の誰とも顔を合わさずにずっとパソコンの前に座ってるだけ。しかも、ご近所さんからは何をやってるのか分からない怪しい人と思われたりもする。全然楽しくない。でも、こうやって美智果の傍で無理なく続けられるからやってるんだ」


「う~ん…分かるような、分からないような……」


首をひねって美智果は戸惑ってた。でも、僕は続ける。


「それでいいよ。今はまだそれでいい。もし、やりたい仕事が見付かって努力したくなったらそうすればいい。だけどやりたい仕事に就けなかったり、やりたい仕事が見つからなかったりした時には、無理なく続けられる仕事を探せばいい。


給料が安くたっていいよ。お父さんも仕事は続けるから、苦しかったら力になるよ。


昔の人はみんな、十分な稼ぎのある仕事をしてたと思う? 実際にはそんな人、一握りしかいなかったんじゃないかな。それでも生活してられたのは、みんなで助け合ってたからだよ。他の人はどうか知らないけど、僕は美智果と助け合って生きるつもりだ。人生が終わる最後のその時までね。


美智果、愛してる。お父さんとお母さんのところに来てくれてありがとう。僕は美智果に山ほどの恩があるんだ。僕なんかのところに来てくれたこと、僕みたいな頼りないお父さんを好きでいてくれること、元気に育っていってくれてること。それらすべてがお父さんにとっては恩なんだ。それを返させてほしい。


そして、もし、美智果に子供ができたら、美智果がその子を大切に思えたら、お父さんがしたことを参考にしてほしい。そうすれば、今の美智果とお父さんみたいになれると思うから」


仕事をするということは、生きるということにほぼ同義だと僕は思ってる。やりたいように生きられたらそれに越したことはないかも知れない。でも、例えそうじゃなくても、生きることは楽しめると思う。その為には、わざわざ無理な仕事を、生き方を選ぶ必要もないと僕は思うよ。



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