やりたい仕事より続く仕事
「じゃあ、ニートになっちゃったらどうしたらいいの?」
「あ~、それはお父さんには何とも言えないなあ。だって、ニートになってしまった当人のことを何も知らないで言えることじゃないと思うから」
「? …?」
「ニートになってしまう原因って、人それぞれだと思うんだ。しかも、その人の適性とか考え方とか価値観とかそういった諸々をきちんと把握した上でないと有効な対策は打てないと思う。
さっきは美智果もニートになってしまう可能性はあると言ったけど、本当はその可能性は決して高くないと僕は思ってる」
「え? そうなの?」
「そうだよ。だって僕は、美智果がそこまで追い詰められるまで放っておかないし。美智果が何か辛いと感じてることがあったら一緒にそれを解決していこうと思うし。どうやったらそれが解決できるのか、美智果と一緒に考えていこうと思ってるし」
「…パパ……」
振り返って僕を見詰める美智果の頭を撫でながら僕は微笑みかけた。
「この大変な世の中に美智果を送り出してしまったのは僕なんだから、そこで苦しんでる美智果を放っておける訳ないだろ。
問題があったらお父さんも一緒に考える。そうして問題の解決方法を美智果にも学んでもらう。そういうのを繰り返して経験を積んで、いつか美智果が自分で解決できるようになってくれたらそれでいいんだよ。
そうだな。三十歳くらいにはそうなってもらえたらいいかな」
「三十歳? でも二十歳で大人じゃないの?」
「いやいや、僕自身の二十歳の頃を思い返してみたらぜんぜん子供だったよ。お母さんと結婚して美智果が生まれても自分が<大人>だなんてぜんぜん思えなかった。まあ正直、今でも自信を持って大人だなんて言えないけど、三十くらいだったかなあ、何となく自分で何とかできるって思えるようになってきたのは。
僕自身がそうだったから、美智果もそんなものでいいよ。僕にできないことを美智果にやらせるつもりもない」
「でも、お仕事できる自信ない……」
「そりゃそうさ。やったことのないのをすぐに自信持ってできる人なんて滅多にいない。不安なのが普通だよ。
だけどさ。美智果は学校に行くのは好きだろ?」
「うん。好き」
「未熟な子供の集団の中で決められたことをやらなきゃいけない学校生活を楽しんで続けられるなら、よっぽど変な職場でもない限り仕事だって同じだよ。自分のやらなきゃいけないことをちゃんとやる。それでいいんだ。
あと、お父さんからのアドバイス。
<やりたい仕事より続く仕事>を選ぶのがコツかな。お父さんが今やってる仕事だって、別にやりたかった仕事じゃないし」
「…へ……?」
美智果の呆気にとられたような顔も可愛いと、僕は思ってしまったのだった。




