表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
8/201

おしりかじってぇ~ん

美智果は、世間の男性からはきっと相手にもしてもらえないだろうけど、僕にとっては本当にかわいい娘だし優しい子だった。僕が調子よくない時なんかには「大丈夫?」って声を掛けたりもしてくれる。


でもまあ、だからって家事とか代わりにやってくれたりはしないけどさ。でも、それは別にいい。今はまだ甘えたいんだろう。いずれは僕が先にいなくなるし、それはもっと早まるかもしれない。一人になって自分でやるしかなくなったらちゃんとできるのは確認済みだから、今は甘えててくれたらいいよ。


満足するまで甘えたら自然と収まっていくのは確認してきた。イヤイヤ期は『ふんふん、そうなんだ、イヤなんだ』と話を聞くようにしてたらしばらくして言わなくなった。抱っこは本人が『おろして』って言ってくるまで抱っこしてたら、五歳になる頃には『抱っこ』って言わなくなった。


ああでも、妻の病気が分かって入院してからは『おひざ』って言い出したな。それは今でも続いてる。


でも、お風呂上りに『おしりかじってぇ~ん』と言ってお尻を突き出してくるのは、去年までで終わったかな。


元々それは、妻が美智果と一緒にお風呂に入っててやってたことだった。この子の真ん丸でプリンみたいにふるんふるんしたお尻があんまりにも可愛くて妻がお風呂上りに唇で『はぷっ』とかじりつく真似をするときゃあきゃあ喜んだのをきっかけに始まった恒例のスキンシップだった。


妻が入院してから僕が一緒にお風呂に入って、お風呂上りにお尻をつきだして『かじってぇ~ん』としてくるから妻がやってた通りにやってあげたらすごく喜んでた。それからずっとお尻をかじってたけど、五年生に上がる前後くらいから言わなくなった。もう十分に満たされたんだと思った。


ふるふるのお尻の感触を味わえなくなったのは残念でも、それはこの子が望んでたからOKだっただけで、僕の方からやるのはNGだと思ってる。この子がどういう形でスキンシップを望んでるかを僕は見極めるだけなんだ。僕の方からやり方を押し付けることはしない。僕の膝に座るのも、小学生のうちだけかなと予測してる。だって以前は、僕の仕事中にも膝に座ってたことがあったのに、最近はもう、仕事が終わるのを待ってから『おひざ』って言ってくるから。


この子はこの子なりにいろいろ考えてるんだって分かる。僕のことも気遣ってくれてる。無理なことは要求してこない。できることとできないことは分かってくれてる。


だから言わないんだ。


『お母さんに会いたい』


って。


だから僕は、できることはやってあげたいんだ。この子はちゃんと分かってくれてるから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ