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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
71/201

自分の存在を認めてもらえないことの苦しさ

まとめサイトで他の利用者と言い合いをしてるという人のことを『害虫』と罵る好美よしみちゃんに対して、僕は少し悲しい気分になってた。他人を害虫呼ばわりするその時の好美ちゃんの顔はきっと、普段の可愛さが失われてるんだろうなって思う。


そういう醜い姿を晒しながら他人を罵るのを、僕は決して幸せだとは思わないし、そういうことをしてる時間はそれだけせっかくの幸せを味わう時間を損なってるって思うんだ。


でも、その時間を無駄にしてでも今の自分を受けとめてほしいっていう欲求も感じる。


そんな好美ちゃんを、美智果は「うんうん」って言いながら受けとめてあげてた。美智果にとってはそんな風にしてあげたい友達なんだなっていうのが分かる。だから僕も、好美ちゃんが美智果のところに愚痴をこぼしに来ることを拒まない。好美ちゃんのことを受けとめたいって思ってる美智果を僕は受けとめたいからだ。


自分の存在を認めてもらえないことの苦しさは、父に存在を無視されてたことや、母に話を聞いてもらえなかったことを思い浮かべれば想像できる気がする。だから、アニメに対する批判を、他の利用者と揉めてでもコメントし続ける<誰か>の気持ちも想像できないこともない。


だけど僕は、その<誰か>の親でもないし家族でもないし友達でもない。その<誰か>の承認欲求を受けとめることに割けるリソースもない。僕が備えてるリソースは、美智果を受けとめることに全振りしてるんだ。僕の身勝手でこの大変な世界に送り出してしまったあの子の為に。


本来はその<誰か>も、自分をこの大変な世界に送り出した人間に受けとめてもらえるのが一番なんだと思う。本当はそうしてあげてほしいと、我が子をこの世界に送り出してしまった張本人である親として願う。好美ちゃんのことも、理想としては好美ちゃんのご両親が受けとめてあげて欲しかった。


でも人間は常に完璧ではいられない。親だって逃げたくなることもあるし甘えたくなることもある。子供の相手をしきれない時もある。そういう時に、今の時点ではちょっとだけ余裕がある僕が好美ちゃんが愚痴をこぼしにうちに来ることを認めて受けとめるようにしようと思ってる。


そうやって、自分の身近で自分が受けとめてもいいと思える相手のことを少しだけ受けとめるようにしてお互いをフォローし合うっていうのが<支え合い>っていうものだと僕は解釈してる。


その余裕を作り出す為にも、僕は、見ればイライラすることが分かってるもの、自分の余裕を損なう可能性があるものは見ないようにしてるんだ。


僕は<美智果オタク>だから、あの子のことさえ見てられたら満たされるからね。



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