永久に決着がつかないと思うよ
ネット上のやり合いは、勝ち負けなんかじゃない。ただの意地の張り合いで、我慢比べだ。論破だとか何とか言ってても、実際には本当に論破できてることなんてそんなにない。自分が論破した気になってるだけだ。特に物証が提示できない水掛け論の場合は、そもそも論破のしようがない。
ネット上で<やられたらやり返す>なんて言ってたら、たぶん、永久に決着がつかないと思うよ。どっちかが根負けして手を引かない限りは。
だからもう、<やられたらやり返す>はしない。時間の無駄だから。自分の意見を一通り提示したら後は相手にも言わせておくだけだ。それが一番確実だと思う。
あと、僕は、相手の考え方とか意見とかを変えてしまうつもりはない。昔はそんなことを思ってた時期もあったけど、それは無意味だし不可能なことだしするべきじゃないと思い知ったんだ。だって相手は、自分とは違う人間だから。自分のコピーじゃないから。
妻や美智果を見ててそれを実感したんだ。妻も美智果も僕とは違うから好きなんだ。大切なんだ。ただの僕のコピーだったら、一緒にいる意味もない。僕は一人でいい。
自分以外の人は<自分じゃない>っていうことそれ自体に意味がある。だったら、他人を自分と同じように変えてしまおうとするのは意味がないってことなんじゃないかな。
何が好きでどんな趣味を持っててどんな生き方をしてるかなんてことに干渉するとか、不毛すぎる。他人のそういうのにケチをつけるってことは、自分が誰かからそういうことにケチをつけられても仕方ないってことになると思う。自分がそんな事されたくないと思うなら、他人に対してやっちゃいけないよ。
僕は、美智果に対していつもそう言ってるんだ。
「自分の考え方とか好きなものにケチつけられたからって自分も他の人にそういうことすると、結局また同じことをされるだけだからね。やられたらやり返すってしてたら、いつまでも同じことの繰り返しになる。もし、誰かにそんな風に言われて嫌だと感じたら、お父さんに愚痴ってくれたらいい。お父さんが聞いてあげるから。嫌なことがあって泣きたくなったら泣いていいから……」
だけど、こうもつけ足しておく。
「ただし、自分の考え方や感じ方をきちんと表明しておくのも大事だよ。でないと、他の人には美智果が何を考えてて何をどう感じてるかって分からないから。好美ちゃんや真理恵ちゃんにはそれをちゃんと伝えられてるもんな。だから友達でいられるんだもんな」
「うん、分かってる。パパ」
そうだ。お互いに考え方や感じ方をちゃんと伝え合った上で折り合いがつけられるから付き合っていられる。僕と妻もそうだったからね。




