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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
62/201

お母さん、あけて―!

僕は、合わない相手とは積極的に距離を置くようにしてるけど、


『友達なんか作ったら人間強度が下がる』


なんて考えてる訳じゃない。むしろ、


『僕みたいな弱っちいポンコツが一人でなんて生きていける訳ないじゃん』


とさえ思ってる。


それでも十代とかの頃には一人で生きていけると思ってた。一人で生きていけるのが強いことだと思ってた。でも今は違う。僕が他人と慣れ合わずに済んでるのは、そこまで追い詰められてないからだ。経済的にも、人間関係的にも。


仕事は順調だから、贅沢さえしなければ美智果を大学に通わせるくらいまでならまあ何とかなりそうだった。人間関係的には、美智果と僕の母親さえいれば他には特に必要なかった。それ以外の誰かの力を借りなきゃいけないような状況でもないから。


それは、単に運がいいからだけでしかないのも分かってる。妻が亡くなったのはとんでもなく不運なことだったけど、それを嘆いたってどうにもならないことが分かってるから、そんなことではめげたりしない。


これがもし、美智果も喪ってしまったりしたら、僕は自分が生きてる意味も見失ってしまう可能性は高いと思う。でも少なくとも今は美智果がいてくれてるから大丈夫だ。


以前、海に行った時に見かけた、僕と同じように奥さんを亡くして男手一つで娘さんと息子さんを育ててる人と、親戚の娘さんを預かって育ててる人とがどうやら親しくしてるらしいのについても、あの人達にとってはそうしないといけない何かの事情があるんだろうなって思うから、『慣れ合ってんじゃねーよ』みたいなことを考えたりもしない。


僕は今ではそうやって、いちいち他人と諍いを起こすことはしないようにしてる。


お隣さんに対してもそうだ。


実は何ヶ月か前、お隣さんのお子さんが、自宅のドアを何度も叩きながら、


「お母さん、あけて―!」


と泣き叫んでたことがある。奥さんが外出してる間にお子さんが学校から帰ってきてしまったみたいだった。


僕もさすがに気になって外に出てみたんだけど、その時には既に同じ階の人達が何事かと集まってきてた。そのうちの一人が、


「こんな小さな子を締め出すとか、私、あそこの奥さんは前からちょっとおかしいと思ってたのよ」


みたいなことを小声で言ってきたけど、僕はそれには苦笑いで応えただけだった。事情も分からないうちからそういう陰口を言いたくなかったからだ。


しばらくしてお隣の奥さんが慌てて帰ってきてお子さんに、


「今日はちょっと遅くなるからって言ってたでしょ! 恥ずかしい…!」


とか小言を言ってたのを見ても、悪口を言う気にはなれなかったんだ。



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