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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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誰もいない筈の隣の部屋から人の気配がしてきた

夏休みが終わって美智果が家にいない時間。自宅に一人残って仕事をしている僕は、その間もいろんなものを見て聞いて感じてる。


僕の机には妻の遺影とかは置いてない。それは必要ないからだ。僕にとって必要なのは妻の姿ではなく、存在感だから。どんなことを話し合って、どんなことをして、どんな時にどんなことを妻が言うのかを覚えている限り、写真は別に必要ない。


僕がこうして一人で仕事をしていると、妻は自分の仕事が休みの時はコーヒーを淹れてくれた。僕が疲れを感じて休めば、頭をマッサージしてくれたりもした。それを思い出すだけで妻の気配を感じられる。


その時、誰もいない筈の隣の部屋から人の気配がしてきた。テーブルにコップを並べるような物音もしてくる。


オカルトを信じてる人はこういう時、霊の存在を感じ取るのかもしれない。でも僕はそうじゃない。


『お隣さん、今日はお客さんが来るんだな…』


そんな風に僕が思ってからしばらくして、お隣さんの玄関前に何人かの人の気配がした。ママ友か何かの集まりだと思う。


お隣さんのお子さんは確か小学三年生だったかな。もちろん、美智果と同じ学校に通う子供だ。


普通ならお互いの子供が同じ小学校に通ってるということでご近所付き合いを積極的にするところだと思う。でも僕は、お隣さんとはあまり関わらない。顔を合わせば挨拶くらいはするけど、それだけだ。


お子さんが小学校に上がる時に、


『うちも子供が娘さんと同じ学校に通うことになります。よろしくお願いします』


と話しかけられて、それからしばらくいろいろと話をしたんだけど、僕は社交辞令をフル活用して上辺だけの会話で乗り切っただけだった。何となく話が合わなくて、気持ちが乗らなかったんだ。たぶん、言葉の端々に僕に対してマウンティングしようとしてたのを感じたからだと思う。


奥さんは僕がどうしていつも家にいるのかを根掘り葉掘り聞き出そうとしてた。僕の仕事の内容とかを訊き出そうとしてた。その上で自分の旦那さんが外で真面目に働いていつも残業で帰りが遅いことを、愚痴っぽく『仕事仕事で家のこと何もしてくれないんですよ~』と言ったりもしてた。


僕はそういう言葉の端々から自分の方が恵まれてるっていうのを伝えたいんだなっていうのを感じ取ってた。だから話が合わない。


妻がまだ生きてた時に言ってたことがある。


『お隣さんの努力してるアピールが強くて、私、どうも苦手』


僕が感じ取ったことを妻も感じてたんだなって実感する。


そのお隣さんは、ママ友会みたいなこともよくやってた。その為の用意の気配が、僕の家の部屋から伝わってくる。どうやらそういうのが伝わりやすい位置があるみたいなんだよね。



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