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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
6/201

こんなのパパにしかしないよ~

「ん~、美智果~、重くなったな~」


朝。いつものように先に起きた美智果が、僕を起こそうと腹の上に乗ってきた。うっすらと目を開けると、ニヤニヤと悪戯っぽい笑顔で僕を見下ろしてるのが見えた。パンツ一丁で。


「朝ですよ~、パパ~。起きないとドスンドスンするぞ~」


「あ~、それはマジで勘弁してくれ~。美智果も大きくなってきたからお父さん、死んでしまふ~」


ドスンドスンというのは、文字通り僕の腹の上でドスンドスンすることだ。単純だけどダメージは大きい。体が大きくなってきたからそろそろ本気でやめてもらわないと、内臓破裂とか万が一ってこともあるからね。


僕と美智果のコミュニケーションは、いつも漫画やアニメのノリだった。注意をする時もお説教も小言も、基本はそんな感じ。ただ、本当にすぐに止めてもらわないと困ることを告げる時だけは、そういうノリは一切使わない。真っ直ぐに目を見て真面目な顔で、『それは駄目だよ』って端的に伝える。するといつもは笑いながら僕の話を聞いてるこの子も、背筋を伸ばして真剣に聞いてくれる。


今すぐ直さなくてもいいけど頭に入れておいてほしいことは漫画やアニメのノリで、ガチでマズいことはシリアスモードでと、メリハリを付けるようにしてるんだ。だから美智果も、僕が真面目な顔になった時は自分がマズいことをしたと分かってくれる。でもそれは乱発はしない。ここぞという時にそうするからこそ効果があるんだ。


ドスンドスンも、今のこの子の大きさなら僕も十分に耐えられる。でも遠からず止めてもらわないと危険だからさっきみたいな言い方で伝える。こうすると数か月もすれば止めてくれるんだ。


アニメとかの演出で寝転がった人間の腹の上に人が飛び乗ったりする演出があるけど、あれを実際に真似するととても危険だ。だからその危険性は頭に入れてもらわないといけない。ふざけて他人にしないように。


「美智果~、ドスンドスンは他の人にやっちゃダメだぞ~、お父さんだけな~、でないとマジで死ぬから~」


「分かってるよ~、こんなのパパにしかしないよ~」


美智果がこの言い方をする時はホントだった。この子が嘘を吐く時は、はっきりと言わずに口ごもったり言い淀む。スムーズに言葉が出てくる時は大丈夫だ。


これも、いつもこうやってやり取りしてるから分かることだった。普段顔を合わせない、ロクに言葉も交わさない相手のそういうのを見抜けるほど僕は有能じゃない。だからこうやって普段からコミュニケーションをとることで微妙な差異を見付け出すようにしてるのだった。



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