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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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壊れてしまった赤いランドセル

まさか、ランドセルが壊れるなんて僕は想像もしてなかった。自分があれだけ無茶苦茶な使い方をしてても壊れたなかったくらいなんだから、ランドセルが壊れるっていう認識がなかった。


だけど、この時の僕は慌てるよりもついドヤ顔をしてしまってた気がする。ドヤ顔しながら声を上げてたと思う。


「良かった! もう一個のランドセルの出番があった! さすが僕!」


と言いながら、棚から殆ど使ってない綺麗な水色のランドセルを出してきた。


「はっは~! このまま使わずじまいになるかと思ってたけど、いやいや、まさに僥倖!」


さっそく、中身を水色のランドセルに移し替える美智果の姿を見ながら僕はうんうんと頷いてた。というのも実は、美智果が小学校に上がる前に、僕は水色のランドセルを買ってたんだ。でもそれは、二年落ちの型遅れのそれだった。共働きだった妻が亡くなって経済的に苦しくなることを予測して、無理をしないようにしたんだ。


だけど丁度その時、僕の母も美智果の為っていうことで赤いランドセルを買ってくれてた。


結果としてダブってしまったけど、まあ、気分によって使い分けたりしたらいいかと思ってそのままにしてた。それに、僕が買った方は、型遅れで定価から七割引きの処分品という代わりに返品不可だったし。


しかも、僕は美智果が水色が好きっていうのを知ってたから水色にしたのに、美智果が実際に学校に持っていくのを選んだのは、僕の母が買ってくれた、ごく普通の何の変哲もない赤いランドセルだった。


美智果が水色を好きなのは確かだ。実際、服も基本的には水色のが多いし、筆箱も水色のを選んだ。でもランドセルだけは赤が良かったらしい。女の子のランドセルと言えば赤っていうのがこの子のなかにもあったみたいだ。


その時、僕は、親だからって子供のことを百パーセント理解できてる訳じゃないってことを思い知った。何でもかんでも分かった気になるっていうのは思い上がりだっていうのも実感させられてた。


一方の美智果の方も、一年生の時にはそういう拘りもあったものの、今ではそこまで拘ってなかったらしい。僕が出してきた水色のランドセルにも嫌がるような素振りはなかった。


「卒業まで、その水色のでいいかな?」


僕がそう尋ねても、


「いいよ~、私、水色好きだし」


とあっさりしたものだった。あとで訊くと、小学校に上がる時に『赤いランドセルがいい』って言ったこと自体を覚えてなかった。


拘りだって、時間の経過と共に変わる場合もあるんだと、壊れてしまった赤いランドセルを見ながら僕はしみじみ思ったのだった。



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