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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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友達に会えるのが嬉しいんだろうな

僕が子供の頃に通ってた小学校は、八月いっぱい夏休みだった。なのに、美智果の通ってる小学校は夏休みが少し短かった。


美智果はそれで不満を言ったことはない。学校に行くのが楽しいからだと思う。好美よしみちゃんや真理恵まりえちゃんを始めとした友達に会えるのが嬉しいんだろうな。


結局、好美ちゃんはうちで美智果や真理恵ちゃんと一緒に宿題を終わらしてた。


「すっげ! 夏休みが終わるまでにちゃんと宿題終わらせられたの初めてだ!」


好美ちゃんがそんな風に言って驚いてた。好美ちゃんと友達になったのは早かったみたいだけど、うちに遊びに来るようになったのは、僕の記憶にある限りだと四年生頃だったと思う。でも四年生と五年生の時の夏休みにはうちで宿題とかしてなかったらしい。なんとなく思いつかなかったのかな。


朝、いそいそと学校に行く用意をしてる美智果を見て、僕は幸せを噛み締めていた。この子が今の自分を楽しめてること自体が僕にとっての幸せだった。


僕はこの子を、この苦労の多い世の中に送り出してしまった。なのにそんな状況をこの子は楽しめてる。それがどれほどすごいことか、分かる人には分かるんじゃないかな。だから僕は嬉しいんだ。


「宿題、ちゃんと持ったか~?」


「だいじょ~ぶ」


念の為に問い掛ける僕に、美智果は明るく応えてくれた。『大丈夫』とか言いながら実は大丈夫じゃないことも少なくないうっかり屋でもあるこの子だけど、その程度のことは時間をかけて直していけばいい。うっかり屋なのは僕や妻に似てしまったんだろうから。


夏休み中、たまに遊びに行く以外はずっと部屋にこもりっぱなしで、当然、その間はパンツ一丁だった美智果がちゃんと服を着てランドセルを背負ってる。


でもその時、


「あっ!」


と急に声を上げたのに僕も視線を向けていた。何事かと思って見たら、何だか違和感が。ランドセルがおかしい。


って、ベルトだ。肩に掛ける為のベルトが片方、垂れ下がってしまってる。


手に取ってみると、本体とベルトを繋ぐ部品が壊れてしまってた。おいおい、六年生が終わるまでまだもう少しあるんだよ? どうして今壊れるんだよ。


その部品は、プラスチックでできてた。本来なら六年間もつ筈が、こんなところで壊れるなんて……


美智果も不安そうに僕を見上げてた。自分が壊してしまって叱られるんじゃないかと思ったのかも知れない。だけど僕は、叱ったりしなかった。だって、美智果がそんな無茶苦茶な使い方してなかったことを僕はちゃんと見てきた。もちろん馬鹿丁寧な使い方してた訳じゃないことも知ってる。でも、僕が小学校の時にランドセルをどれだけ無茶苦茶に使ってたか覚えてる。それでも僕のは壊れなかったんだから、美智果が悪い訳じゃないって思ったんだよな。



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