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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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良いことも悪いことも含めて<人生>なんだ

母とたくさんのことを話して、僕は少しだけすっきりした気分になってた。本当はこういうことを子供のうちにやっておけば良かったんだと思う。でもあの頃の母には、それだけの余裕がなかった。男に騙されて借金を背負ったりして、生きていくだけで精一杯だったんだろうな。


母のその失敗が、僕にとってはある意味では手本だった。反面教師という意味で。生きるのに必死で僕のことを見ていなかった母の失敗を、僕は繰り返さないようにしてるんだ。それを、母も望んでる。


「私が失敗したことを、あんたがきちんと活かしてくれてるなら、私のしてたことも無駄じゃなかったってことになるかな」


そうだ。母がいるから、僕がいる。母がいたから、美智果もいる。男に騙されて振り回されてきた母の人生は、決して無駄でも無意味でもない。それらすべてが、美智果に繋がってるんだ。


お祖母ちゃんの前で屈託なく笑う美智果が、母の過ちのすべてを許してくれてる気がする。


「私も、生きてて良かったんだよね…?」


美智果が寝た後で交わした会話の中で、母が呟くように言った言葉。


「もちろんだよ。母さんがいなかったら、美智果もいないんだから……」


僕のわだかまりとは別に、それは紛れもない事実。許せるか許せないかなんて関係ない。僕の感情とは関係ない、明確な答え。美智果の存在は、母のことも全肯定してくれてるんだ。


「あんたを生んで、本当に良かった……」


そう。美智果のおかげで、僕の存在も許されてる。命が繋がったことを実感する。母がこの世に生まれてきたことも、僕がこの世に生まれてきたことも、美智果が許してくれた。もうそれだけで十分だ。


母のことを許せない僕の気持ちも、もうどうでもいいことなんだ。忘れることも捨てることもできなくたっていい。その気持ちそのものが既に意味を失ってる。単なる僕の一部分でしかなく、決して僕の全てにはなりえない、消し去ることのできない僕の過去。これもまた、僕を作ってくれた僕の一部。


良いことも悪いことも含めて<人生>なんだ。綺麗なところも汚いところも、何もかも。


善人なだけの人間はいない。そして、悪人なだけの人間もいない。人間は善でもあり悪でもある。その両方を認めることができない限り、自分という人間は見えてこない。


それもまた、僕が美智果から教わったことだ。だから僕は、母のことを許せないという現実を受け止める。綺麗事じゃない、人間としての母と僕を。


これでまた、僕は自分が生きていることを許せるようになるんだよな。



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