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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
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ほんとにいい子だね、美智果ちゃんは

「ほんとにいい子だね、美智果ちゃんは」


「えへへ」


お祖母ちゃんに褒められて美智果は嬉しそうに笑ってた。こういうところが可愛いんだな。しかもこの子はそれを演技でやってない。一歩間違えればあざといととられかねない可愛さが素なのがすごいところだ。


「あんたには迷惑かけてしまったけど、そのあんたが羽瑠果はるかさんを亡くしてもこうやって美智果ちゃんを立派に育てられてるのを見て本当に安心したよ」


母がそう言ってくれるのが、実は地味に自慢だったりする。母は僕を真っ直ぐな人間に育てられなかった。僕は、本質的にはまともな人間じゃない。本当はたぶんすごく薄情なタイプの人間なんだと思う。でも、美智果は違う。あの子はちゃんとした情を持った子なんだ。母が育てた僕はこんななのに、僕が育てた美智果は僕とは違う人間に育ってることが、母に対する意趣返しになってる感じかな。


こんなことを考える時点で僕がまともじゃないっていうのが分かる分かると思うよ。世間一般なら、ここは母に感謝してお涙頂戴な話の一つでもするのが正しいんだろうけど、僕にはそんなことはできないな。僕は、わだかまりがまだ残ってると言うように、本心では母のことを今でも許してない。世間は『いいお母さんじゃないか』って言うのがほぼ百パーセントだろうけど、僕はそうは思わない。<愚かで世間知らずで浅墓な馬鹿女>というのが、嘘偽りない僕の母に対する評価だった。


だけど同時に、人間なんてそんなものだって思うと、恨みの気持ちも我慢できない程のものじゃなくなるのも事実なんだ。僕が人間に期待しすぎないようにしてるのは、母に対する恨みを肥大化させないようにする為でもあった。完璧な人間なんていないんだから、僕の母が愚かで世間知らずで浅墓な馬鹿女だったことも、別にあの人に限ったことじゃない。


自分にそう言い聞かせることができるようになって、僕はすごく楽になった。そしてそれが、美智果に対する心の余裕にもなった。美智果に対して完璧な人間である必要がないって思えたら、イライラせずに済んだんだ。これは本当に大きいって気がしてる。


それとはまた別に、夜も美智果と一緒に寝る。夜更かしせずに早めに寝る習慣を身につかせる為に、夜の十時前には一緒に寝るようにしてた。


その一方で、あの子は、お祖母ちゃんのところではさすがに部屋着を着てたりもする。お祖母ちゃんのことは好きだけど、その辺りの距離感は僕に対するものとは違う。そういうことなんだな。それがまた、僕の方がなんだかんだ言っても美智果との距離が近いっていう証拠にもなって、気持ち良かったんだよな。



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