敬して遠ざける
子供がワガママなのは、当たり前だと思う。だって未熟なんだから。自分の感情とか気持ちとか欲求とかとどう折り合いを付ければいいのか理解できてないから、それをそのまま表に出してしまうんだって美智果から教わった。
だから僕は考えた。ワガママに対して感情的になるのは悪手なのではないか?って。美智果は今、自分のそういう感情とか気持ちとか欲求とかを相手に対してどういう風に表現すればいいのかを学習しようとしてるんじゃないか?って考えたんだ。
そう考えてみると、子供がワガママを言うのは、これは感情とか気持ちとか欲求とかを相手にどう伝えるかという方法を学習する機会なんじゃないかって。この辺りは、育成ゲームでの考え方かもしれない。そう考えたから僕は冷静でいられたんだと思う。
僕は、美智果にワガママな子に育ってほしくなかった。相手の言葉に耳も傾けずに自分の感情とか気持ちとか欲求とか意見とかばかりを押し付けようとする子になってほしくなかった。そうなるとここはもう、
『親である自分の感情とか気持ちとか欲求とか意見とかを一方的に押し付けようとするやり方を学ばせるのはマズい』
って結論しかなくて、だから僕はとにかく美智果の言葉に耳を傾けることにしたんだ。すると、言いたいことをとにかく一通り言ったら、一瞬、ふっと冷静になる瞬間があることに僕は気付いた。その瞬間に、美智果の要求が聞き入れられる内容なら『分かった』と言い、聞き入れるのが無理な内容なら『ごめんね』と言うようにしたんだ。
相手の言うことに耳を傾けて検討した上で、聞き入れられるものなら聞き入れて、無理なものならきちんと無理って言う姿勢を見せるように心掛けてきた。美智果はそれを真似してくれてるんだと思う。
意地悪なことを言ってくる子は<ワガママな小さな子>と捉えて、感情的に対応しないっていうのをやってくれてるんだろうな。だけど、僕は美智果の親だから距離を置く訳にはいかなくても、相手が赤の他人ならワガママにしっかり対応しなきゃいけない理由もないし、見本にならなきゃいけない理由もないしということで<敬して遠ざける>っていう風に僕もしてるから、それも真似してくれてるんじゃないかな。
まあ、スルースキルってやつかもね。
ここから先、スルーするべき相手とスルーできない相手を見極めていかなきゃいけないから、普段の人間関係の中でそういうのを学んでいってもらうことになると思ってる。
だけど美智果は、他人を傷付けてでも我を押し通そうっていうのがないし、そういう意味では心配が少なくて済んでるんだよね。




