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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
19/201

分かってるんだけどね~、止まんないのよ~

美智果は六年生になった今もおねしょが続いてる。学校に上がる以前に一度は収まりかけてたのに、妻の病気が分かった頃からぶり返した。それ以来、治る気配がない。


でも僕は、それを心配してはいなかった。実はどうやら同じような子が他にもいるらしいから。


以前、スーパーの子供用おむつ売り場で、<ビッグより大きいサイズ>というおむつを買っている男性を見かけたことがあった。その頃は美智果はまだ一年生で<ビッグ>というサイズを使ってた。そして今は、この子も<ビッグより大きいサイズ>を使ってる。つまり、今の美智果と同じくらいの子がおむつを使ってたということだ。


しかもその男性は、僕と同じように奥さんを亡くして男手一つで子供達を育ててるっていう、美智果より一学年下の息子さんがいる人だった。そしてその人には、今は高校に通ってる娘さんがいた筈だ。だから娘さんがおねしょをしていたんだと思う。美智果と同じように、お母さんを亡くしたショックでおねしょをするようになったんじゃないかなって推測してる。


それだけじゃない。最近でも、別の男の人が<ビッグより大きいサイズ>のおむつを買ってるところを見かけた。その人は、親戚の娘さんを預かって育ててるっていう人だった。その娘さんも確か五年生だった筈。


その人たちとは特に交流がある訳じゃない。ママ友ならぬパパ友っていう訳でもない。学校の行事で顔を合わせれば軽く会釈を交わす程度だ。会話したこともたぶん数えるほどしかない。だけど、同じような形で子供を育ててるっていうことと、どうやらみんな子供が大きくなってもおねしょをしてるらしいってことで何となく親近感みたいなものは感じてた。僕だけじゃない、うちだけじゃないんだっていうのを感じて何となくホッとしてる。


体が成長してきたリ精神的に成長してきたりすることでいつかは治るって気楽に構えられるんだ。


あと、変に馴れ馴れしくしてこられないっていうのもありがたかった。似たような境遇だってなるとやけに馴れ馴れしくしてくる人もいるけど、僕は正直言ってそういうのは苦手だ。だからそういうのがないってことで余計にいいんだよね。


「パパ~、おむつもうなくなりそ~」


お風呂の後でいつもおむつを入れてある引き出しを見た美智果がそう言ってきた。


「分かった~。また買ってこなきゃな~。でも早くおねしょ治してな~」


「分かってるんだけどね~、止まんないのよ~」


軽い感じでそうやり取りする。おねしょを治したいのは美智果も同じ筈なんだ。あんまり煩く言ったって治るものじゃないって分かってる。精神的なものならなおさらね。


いつかママを亡くした心の傷が癒えた頃、自然と治るんじゃないかなって思ってるんだ。



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