表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
18/201

学校でイライラしてませんか?

今日は、美智果の学校の個人懇談だった。話すことはだいたい決まってる。


『学校でイライラしてる様子はないですか?』


『友達に八つ当たりとかしてないですか?』


『ふさぎ込んでる様子はないですか?』


とまあ、こんなところだ。それは妻が亡くなった以降、ずっと担任の先生に訊いてきたことだった。成績がいいのは分かってる。そんなことは心配してない。あの子は学校が好きだし勉強も好きだし成績を気にしなきゃいけない理由がない。十分すぎるくらいに十分だ。だけどその分、苦しいことを抱えてないかっていうのが気になるんだ。


もちろん、母親を亡くしてるんだから苦しいことを抱えてるのも当然なんだけど、それがどの程度のものなのか、他人の目から見たそれを知りたかった。


僕は美智果のことを見てる。だからあの子が辛そうにしてたらすぐ分かる。でも僕に見えてるそれが他人から見てもそう見えるのかっていうのを確認しておきたいんだ。同時に、家では楽しそうにしてるけど、学校でもそう見えてるのかっていうのもね。


学校に行って、教室に入って、担任の先生と向き合う。僕と同世代くらいの女の先生だ。


「美智果は、学校でイライラしてませんか?」


「はい、私達も注意して見させてもらってますが、見てる限りでは大丈夫だと思います」


「友達に八つ当たりとかしてないですか?」


「いえいえ全然、すごく優しいお子さんだと思います」


「ふさぎ込んでるみたいに見えることはないですか?」


「私が気付いた限りでは大丈夫なように思います」


今年もそんな感じでこれまで通りの返答が返ってきて、僕は心の中で胸を撫で下ろしてた。そしたら今度は先生が訊いてくる。


「ご自宅での様子はどうですか?」


「特に変わったところはないと思います。学校に行くのも楽しいみたいですし」


「それは良かった」


「僕は、無理に学校に行かせようとは思ってないんです。もし行きたくないんなら行かなくていいって思ってます。でもあの子は学校が好きなんですよ。だから楽しいんでしょうね」


「そう言っていただけると、私達も励みになります」


こうして、今回の個人懇談も滞りなく終わった。滞りなく終わらせるのが目的じゃなくて、もし何か気付いたことがあればちゃんと伝え合うのが目的なんだけど、別に個人懇談の時だけ改まってしてる訳じゃないから、結果として問題ないのを確認するだけになってるんだよな。


辛いことが全くないわけじゃない。ウマの合わない子だってクラスにはいる。だけどそういうのはいつでもどこでもあることの筈なんだ。大事なのは、そういうのといかに上手に折り合っていくか。


相手が自分に合わせてくれることを期待するのは無駄だって知ってれば大丈夫だ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ