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美智果とお父さん  作者: 京衛武百十
17/201

ほんわかぐにゃぐにゃ

「ぐはっ! 花丸もやるじゃん! これはあれか? 活劇と見比べろってことか!?」


塾から帰ってきてやっぱりいつも通りにパンツ一丁でノートPCを見てた美智果が、突然そんな風に声を上げた。


僕にもすぐにピンときた。動画サイトで、美智果が好きな刀剣の付喪神のキャラクター達が活躍するゲームを基にしたアニメの配信が始まったということだった。


「はえ~、花丸も出だしは、どシリアスっぽく始まったんだったな。そうだったそうだった」


さっそくノートPCで花丸を見ながらそんなことを呟いてた。楽しそうで何より。


「活劇はカッコいいけど、花丸のほんわかぐにゃぐにゃな感じも好きなんだよな~。何だかうちみたいで」


しみじみとそう言った美智果に、僕も、


「せやな」


と応えた。思わず頬が緩んでた。『ほんわかぐにゃぐにゃ』という表現が面白いと思った。確かにそうかもしれない。


僕は、ほんわかして温かい家庭が作りたかった。辛うじて記憶に残ってる、小さな頃の僕の両親はいつもどこかイライラしててぜんぜん仲が良さそうに見えなくて子供心に居心地が悪かった気がする。だからその主な原因だった父親のことが嫌いだったんだ。


父親は今でも生きてるらしい。年齢はもう七十になるかどうかって感じか。顔も合わせたいとは思わないし死んだって葬式にも行かないだろう。僕にとってはそういう存在だった。


ドラマやアニメではよくそういう時に<実はこうだった>とか<本当は子供のことを大切に思ってた>とかお涙頂戴な演出が入るんだろうけど、残念ながら僕の周りではそんな上等な話なんて見たことなかった。


歳を取って体が弱って気が弱ってから『あの時はこうだったんだ。許して』なんて言われても、『ふざけるな』としか思わない。だから僕は、歳を取ってから『あの時は本当はこうだったんだ』って言いたくないんだ。美智果のことを大切に思う気持ちを、今、この子にちゃんと伝えたい。それを伝える努力を怠っておいて、『大人になったら分かる』とか『親になったら分かる』とか、そんな陳腐な言い訳をしたくない。


伝えたいことはちゃんと伝わるように努力する。『言わなくたって察してほしい』なんて、ただの甘えだと僕は思ってる。伝えるのが面倒だったら、分かってもらえなくても仕方ないと割り切る。そうやって割り切ってしまえる関係とか相手にいちいち執着しない。


それと同時に、ちゃんと伝えた結果、ダメだったらその結果も受け入れなくちゃね。フラれた相手につきまとうとか、カッコ悪い。そういうの、ぜんぜん『ほんわかぐにゃぐにゃ』じゃない。


「美智果、大好きだよ」


「私もパパのこと大好き」


こうして今日もほんわかぐにゃぐにゃになる僕たちなのだった。



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